第50話 マキナのお楽しみと後悔
マキナが骸骨剣士に向かって疾走する。
骸骨剣士もマキナに気付いたのか眼窩に不気味な光を灯し、剣を持つ手とは逆の手をマキナに向けた。
直後、骸骨剣士は見た目によらず掌より火球を放った。
マキナはそれを剣ひと振りで消し飛ばし、さらに間合いを詰める。
すると今度はマキナの足元から地壁がせり上がってきた。
軽々とその地壁を跳び越えたマキナは、そのまま骸骨剣士に水平斬りを見舞った。
骸骨剣士は瞬時速度を上げて後退し、それを避ける。どうやら疾風を纏ったらしい。
「あ!? こいつ見た目によらず結構多彩だな、魔法も剣もそこそこ出来るぜ」
間合いを取った後も骸骨剣士は火球、礫弾と遠距離から次々と魔法を放ち、マキナは腰に帯刀している二本のカットラスのうちの一本も抜刀し、紅竜刀とカットラスで襲い来る魔法を剣で捌いていく。
「ふむ、なんだか楽しそうじゃのぅ」
「あいつ避けれるのもわざと剣で捌いてるな。久々にちょっと強そうな敵が来て楽しんでるんだろ」
ソーマと丸眼鏡は危なげないマキナの戦闘の観戦を楽しむ余裕まであるようだ。
事実、次々と放たれる魔法を双剣で踊るようにいなしていくマキナの戦闘スタイルは見ているものを魅了するものがあった。
さらにマキナは骸骨剣士が放つ魔法の間を突いて自身も焔玉や風刃を放ち始める。
数々の魔法の応酬に、骸骨剣士はマキナの魔法を捌き切れずに被弾が増えてきた。
「へっ、どうしたよ、そろそろ限界かぁ? あたしも良いストレス解消になったし……決めるぜっ!」
直後、マキナは今までとは比べ物にならない大きさの焔玉を放った。
さすがに骸骨剣士も被弾はマズいと思ったのか魔法を放つのをやめて疾風で避けるも、すでに全速力で回り込んでいたマキナに背後から紅竜刀の水平斬りを受け、その太い脊髄は瞬時に分断され、骸骨剣士はその場に崩れ落ちた。
青い粒子が立ち上り消えたと同時に、ソーマと丸眼鏡の前の結界も解けたようで、二人はマキナの元に歩み寄る。
「良い顔してるな」
「久々に楽しめたぜ、もっと強くても良いけどよ」
「わたくしの番のことを考えるとあんまり強くなられるのは困るのう……」
各々マキナを労い、次の層へのレリーフへと進む。
「5層はソーマの番だったな。あたしがボスを倒したってのによお」
愚痴るマキナに、最近レアアイテムが出ずモチベーションが下がっているソーマは順番を譲ることにした。
「開けてもいいぞ、その代わり持つだけで呪われそうな魔人の剣とか頼むぞ」
「おまえがそう言うと本当に出そうだからやめろよ……」
よほど魔人の鎧のことを根に持ってるのか、順番を譲られても全く嬉しくなさそうなマキナ。
「やっぱ開けて良いぜ、最強防具が出る気しねぇし」
「じゃあ丸眼鏡開けてみたら? 俺は次のフロア開けるから」
「むむぅ……まあ別に構わぬが……」
それほどお宝や装備に頓着がないのか、順番もさほど気にならない丸眼鏡は5層の宝箱を開けた。
そこには非常にシンプルな純白の杖が入っていた。
マキナは装備が出たことで「うぉおおおいいい!! やっぱあたしが開ければ良かったぁぁああ!!!」と人生最大の後悔といった具合で取り乱してるが、丸眼鏡は冷静にそれを取り出し鑑定を始める。
よく見ると純白の中にも微細な煌めきを放っており、非常に品が良い。
次第に丸眼鏡の淡いアメジストの眼が揺らぎ光を帯びていく様を見て、ソーマは結構なレアアイテムなのかなと見当を付けた。
「どう? 結構良い杖だった?」
「うむ……お二人の剣と同等じゃの、材質も同じくオリハルコンかと思われるの。こうげきりょくは500程度じゃが、魔法効果を100%上昇させるとんでもない効果があるようじゃ。杖にしては珍しく上下が無く、両端には魔石が3個ずつ、計6つ嵌め込めるみたいじゃの。六属性使いなどおらんと思うが、三属性使いなら二個ずつ、二属性使いなら三個ずつ装着すれば自身の属性を強化出来て便利じゃ。術士には最高の杖じゃのう」
「そうか、俺たちに比べるとちょっと武器は物足りなかったし、これで丸眼鏡も終の神杖を手に入れたわけだね。おめでとう」
ソーマがそう言うと、丸眼鏡はミスリルの杖をムフフの袋に仕舞い、オリハルコンの杖を装備する。
尻尾を静かに振りながらうつむき加減で少し頬を赤らめ、にんまりしている様子を見るに、かなり嬉しかったらしい。
(あれ、普通に嬉しい時はこういう反応をするのか……暴走しなければ結構可愛いとこあるんだなぁ……)
ソーマは丸眼鏡の様子を見てそんなことを思っていた。
ちなみにその横では相変わらずぎゃーぎゃーとマキナが騒いでいる。
6~9階層も基本的には大量の魔物との戦闘で、罠の類は一切なかった。
多少魔物の強さは上がっているようだが、そもそも三人の中位範囲魔法では初めからオーバーキルなので、殲滅速度に差はない。
三人にとっては余裕を持て余すほど容易なダンジョンであるが、基本的にダンジョンに入れるのは5人構成であり、うちせいぜい範囲魔法を使えるのは二人いれば良い方で、さらに魔力消費軽減や魔力の自動回復効果を高めるスキルなどを持っていることは稀である。
そうなると前衛もかなりの敵を相手にせねばならず、前衛が応戦すれば範囲魔法も使いづらくなりさらに殲滅速度は落ち……などと時間を掛けて攻略せねばならず、そうなると食料や水を持ち込む量が嵩むので、一般的なパーティからすると非常に攻略しにくいダンジョンとなっている。
なお、世界樹のダンジョンも腕の立つ探知術士がいなければ大量の罠が張り巡らされた真っ暗闇の迷宮を長時間彷徨うことになるので、灯篭持ち、高位の探知術士は必須となる。
そんなこんなで三人はあっという間に9層まで到達し、転移レリーフの前で魔力の回復を待ちながら6層でマキナが開けた宝箱から出た果物を食べている。
その他の宝箱も今のところ回復薬や毒消しなどのハズレ枠である。
「多分次もボスだよね、同じ人が出て良いなら俺とマキナで交代で出ていけば良いけど、多分そんなに甘くないよな。階を追うごとに強くなるなら早めに丸眼鏡が出た方が良いと思うんだけど」
「うむ、では次層でボスが出たら試しにマキナ殿に行ってもらって、ダメそうならわたくしが出るかのぅ」
マキナはどうせなら全部自分で行きたいと主張するので、全部行けそうなら行って良いよと譲るソーマ。
ソーマも戦闘は好きな方だが、それは自分の現在の実力を測るといった意味合いが強く、勝てると分かっている格下相手にはさほど食指は動かなかった。
「さて、MPも回復したし腹ごしらえも済んだし、そろそろ行くか」
三人は壁のレリーフに触れ、第10層へと転移した。
やはり第10層も第5層と同様に大きなホールになっており、真ん中には骸骨の剣士が立っていた。
ソーマは灯篭を放ち、相手と周囲を観察する。
「お? 今回の剣士は双剣か、腰に二振りの剣があるな」
「おもしれぇ、あたしが行くぜ!」
マキナが出ようとした直後、マキナの前に無色透明な結界が現れ顔面からぶつかる。
「うげっ! あんだよこれ……」
「やっぱ一人で全部は無理っぽいな、丸眼鏡に行ってもらおう」
「うむ、あまり一人で強敵と戦うことがないゆえ不安じゃが……行ってくるかのぅ」
言葉とは裏腹に落ち着いた様子の丸眼鏡は、紫の瞳をほんのりと揺らめかせて結界の先へと足を踏み入れた。
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