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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第1章 人間国編
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第5話 四属性と初の異世界冒険


「ソ、ソーマくん……火属性以外も使えるわけ……?」


 若干焦燥(しょうそう)の色が見えるエルだが、好奇心を抑えられないソーマは実演した方が早いと思い、早速使ってみた。


『水の精霊よ 我に力を与え(たま)え 水球!』

『風の精霊よ 我に力を与え給え 突風!』

『地の精霊よ 我に力を与え給え 礫弾(れきだん)!』


――――――――――

ティロリロリン♪

水球の習熟度が1になりました。

突風の習熟度が1になりました。

礫弾の習熟度が1になりました。

――――――――――


 攻撃魔法と呼ぶにはあまりにも弱々しい効果だが、一応全て発現はしたようだ。

 全ての魔法を発現させ、それも四属性を実演したソーマはドヤ顔をエルに向けたが、エルは先ほどとは違い深刻な表情でソーマを見つめている。


(あれ……さすがにまずかったかな……たしか女神も四属性持ってるだけでなんとかって言ってた気はするけど……)


 エルは思い出したかのように辺りを見回し、小さな声で「一旦家に入りましょう」と促した。



 食卓テーブルを三人で囲んでいる。

 先ほどからエルは(うつむ)いたまま何か考え込んでいるようで、ダンもそんなエルの様子が尋常じゃないのを察してか居心地が悪そうに見守っている。

 しばらくの沈黙を破ったのはダンの方だった。


「やっぱりヤバいよな、四属性使いってのは」


 エルは観念したように顔を上げる。


「そう……ね、歴史に残る実在したであろう四属性の使い手というのは王国の書物の中でも5人よ。その5人全てが賢者と呼ばれていて、多くの戦争や危険度の高いスタンピードなどに駆り出され、常に暗殺の的になっていた。四属性持ちの賢者って言うのは、一人で戦況を大きく変えるほどの力があるからね」


 二人は息を呑んで続きを待っている。


「王国内で三属性・四属性持ちが発見されれば直ちに王国へ報告することになっているわ。そして特別養成所で訓練を受けたのち、厳重な管理の下で戦いに派遣される。その代わり、王宮内では破格の待遇を受けることが出来るのだけど、私からしたらあんなものは監獄の中の戦争兵器みたいなものよ……」


 ダンも、そいつは……と言葉を詰まらせた。


「ソーマくん、キミがどういう人生を生きたいのか聞いておきたいんだけど……もし王国への忠誠心や正義感があって、国の為に戦争兵器となってでも戦うことを望むなら、私は王国へキミのことを報告する。でも、もし自由に冒険者として生きていきたいなら……今日のは見なかったことにするし、今後の身の振り方について出来る限りのアドバイスをするわ」

「自由に冒険者として生きたいです!」


 ソーマは即答だった。

 いくら待遇が良いとは言え異世界に来てまで企業……もとい、王国の駒として使われるのは真っ平御免である。社畜が国畜にランクアップしたところでなんの喜びもない。


「そう、それなら、今後人前では魔法は二属性しか使わない方が良いわね。それなら多少強くても本人の意思が尊重されるはずよ。私が火と地の二属性持ちだから、練習するなら同じ属性、連携するなら水と風が良いかもね」

「分かりました。じゃあなにかと便利そうですし、水と風にします」

「良いかもしれないわね、火と地は攻撃的な組み合わせで水と風は補助的な組み合わせだから、パーティーとしての相性は最高かも。それにソーマくんは魔法剣士だから、攻撃は剣で出来そうだし」


 であれば尚更、火と地を選ぶ理由が無い。

 ダンとエルは剣士と魔術師の火力特化パーティと思われるので、そこに攻撃もこなせる補助・回復が入れば隙がなくなる。


「それにしてもエルさんって二属性持ちだったんですね」


 女神の話では全体の三割が属性持ちらしいので、単純計算だと三割の中の三割、つまり10人に1人程度いるのだろうかとソーマは予想する。


「まあ一応、ね。二属性持ちの魔術師も30人の中に1人くらいはいるけど、王国なんかに行けば多少は人数いるからね。三属性持ちとなると極端に少なくなるし……一説によると1000人に1人もいないと言われるわね。30人に1人とか1000人に1人って、全人口じゃなくて魔術師の中の話よ?」


(ん? ということは属性が増えるごとに発現確率が変わるのか。単属性で33%、二属性で0.1%、三属性で0.000001%以下。えーと……三属性持ちですら100万分の1か。そうなるとエルさんがここまで深刻になる理由も分かるな)


「よし、とりあえず朝から色々ソーマには驚かされたが、状況的にはしばらくの間俺とエルの戦力の隙間を埋めるような冒険者の卵がパーティに加入するってこった。やることは何も変わらねぇし、早速ギルドに依頼でも見に行こうぜ」


 ダンの呼びかけにエルもそれもそうねと同意し、身支度を始めた。



 ギルドに行く前に装備屋でダンが簡単な革製の鎧と靴、それに片手剣とバックラーを見繕ってくれた。

 なんでも出世払いで良いらしいので、きちんと稼いで返します、とソーマは好意を受け取ることにした。


 装備を身に着けると、状況が少し特殊なことを除いてソーマはまるで自分がRPGの主人公になったような気分でこれから始まる冒険に想いを馳せていた。


「うーん、めぼしい依頼も無いし今日のところは常時依頼の魔物討伐でもして、まずはソーマの実戦経験とレベル上げでもするか」


 ギルドの依頼募集掲示板をサッと眺めてダンは(きびす)を返し、三人は街の外へと歩みを進めた。



 三人は昨日ソーマが跳竜に襲われた小川付近の草原に来ていた。

 街並みも異世界感があって良いが、地球では見たことも無い大自然の景色もソーマは気に入っていた。


「さて、テキトーに薬草類でも集めながら魔物狩りでもしようぜ」


 ダンは気持ちよさそうに伸びをしながら、街道を外れた小川の上流の山の方へと進んでいる。

 薬草採取は専らエルの仕事なのか、目につけばダンを止め、採取しては背負っている麻製のリュックサックのようなものに入れていた。

 そんな二人の姿はまさしく“異世界のスローライフ”であった。


 街道を外れて15分ほど歩いていると、遠目に2頭の跳竜らしきものが目に入る。


「お、いたな。そう言えばソーマ、おまえレベルは?」

「5です」

「よし、じゃあ最初は見てろ。跳竜(ちょうりゅう)の倒し方を教えてやる」


 ダンはそう言うと剣を抜き、小走りで跳竜に向かっていく。エルもその後を追ったのを見て、ソーマもあわてて追走した。


 跳竜もこちらに気付いたのか飛び跳ねながら向かってきた。かなり距離があるように見えたがお互い走っているのであっという間に距離が縮まる。


 間合いに入った跳竜はひと際大きな跳躍をして、先頭のダンに襲い掛かる。ダンは落ち着いてそれを避け、着地した跳竜の頭に思い切りバックラーを叩きつけた。脳震盪を起こしたのか跳竜はその場で倒れる。

 そこに二頭目の跳竜が飛びかかる。ダンはそれをバックステップで横に(かわ)し、跳竜が着地した瞬間に、今度はリンゴ大の火の玉が猛スピードで頭にゴツンと当たり、絶命した。


――――――――――

ティロリロリン♪


ソーマのレベルが9になりました。

詳細はステータスプレートをご覧下さい。

――――――――――


(何にもしてないけどレベルが上がったな……。まあゲームでもパーティ全員に経験値が配分されるしそういうものか。それにしても……)


「エルさん、今の魔法って……」

「ああ、今のは火礫弾(かれきだん)っていって、礫弾に火を(まと)わせて飛ばす二属性複合魔法ね」


 道理で火球なのに当たった時の音が鈍器のそれだったわけだ、とソーマは納得する。

 エルは得意げに微笑んでいた。それがなんとも可愛らしく、ダンが惚れる理由も分かる気がした。


「おい、なに人の女に見惚(みと)れてんだ。ほれ、次はお前の番だぞ」


 ダンはそう言って鶏のトサカのようなものを二つ寄越した。


「べ、べつに見惚れてませんから……! で、これは?」

「討伐部位ってやつだ、ギルドに出せばこれが跳竜を倒した証明になる。帰り際に狩った魔物は交代で背負って持って帰るからな」


 たしかに狩った魔物をこんな時間から背負っていたら体力も時間もロスか、とソーマは納得する。


「じゃあ次は僕の番ですね」


 こうして三人の狩りは続く。



今日から毎日更新していきます。宜しくお願いします。

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