第49話 骨のありそうなヤツ
三人がかりでようやく宝箱から取り出したかなり大きな禍々しい魔神の鎧(仮)を眺める三人。
「てめぇが変なこというから本当に出ちまったじゃねぇか!!」
「まさかマキナ、おまえが魔神だったなんてな……宝箱は開けた人に合わせた装備が出るって言うし間違い無いよな……」
「いやどう見てもサイズ感違いすぎるだろうがよ!!」
哀愁漂う目でマキナを見つめるソーマに、盛大なツッコミを入れるマキナである。
「まあ冗談はさておき……」
「冗談じゃねぇよ!! あたしのアイテムを返せ!!」
「いや……話が進まないから」
「てめぇが先に振ったんだろうが!!」
「んぬふぅ!! ケンカするほど仲が良いとはまさにこのことじゃのぉお!!」
先ほどから全然話が進まない三人なのであった。
「まあでも、とりあえず普通じゃないアイテムっぽいしマキナサイズでもないことを考えると、多分魔神神殿復活に関するキーアイテムってことで間違い無いだろうね」
「いきなり引き当てたのは良いけどよ、これちっとデカすぎるぜ、3メートルくらいはあるヤツが着るサイズだろ。これを最下層まで運ぶのが一番の難関だぜ」
先ほど三人がかりで出した苦労を思い浮かべると今後の展開が憂鬱になるソーマとマキナ。
「ふむ、わたくしの秘儀の一つである“ムフフの袋”を使うしかあるまい」
丸眼鏡がそう言うと突如目の前から魔神の鎧が消えた。
「……丸眼鏡おまえ、ムフフの袋って収納魔法だったのか」
便利だなおまえ! とテンションが上がるマキナを見て、探知に収納に有能過ぎる丸眼鏡の存在が逆に少し怖くなるソーマであった。
(もっと探知に習熟して早いとこ収納使えるようにならないと丸眼鏡無しじゃ生きていけなくなる身体にさせられるぞこれ……)
一方丸眼鏡は「ぬふふ……わたくしが運命の異種族ハーフのプラトニックカップルに出会った時の為に磨いた技の数々を今こそ見せつける時なのじゃ……」と二人に聞こえないような小声で不穏なセリフを発していたのだった。
かくして三人は無事一層目を難なくクリアした挙句、早速キーアイテムらしきものを手に入れ順調に滑り出したのである。
2、3、4層目も基本的には大量の魔物が主体の構成だったが、中位の範囲魔法を覚えている三人に加えてソーマとマキナは近接もこなせるので、全く危なげなくクリアした。
宝箱からは回復薬や魔力回復薬など、あっても困らないが特別当たりでもない無難なものを引き当てる。
元々レアアイテムは非常に低確率でしか出ないので、いくらソーマの幸運値が常識外な数値でも毎回引き当てられるほど設定は甘くなかった。
尚、ここまで大量の魔物を倒しているのでソーマのレベルが3、マキナと丸眼鏡はそれぞれレベルを1上げた。
王国では習熟度ばかり上げていたソーマにとってレベルを上げるまたとない機会である。
「次は5層だね」
「おう、まあこの調子でどんどん行こうぜ」
三人は転移前のスペースで一旦魔力の回復を待ちながら、給水や軽い食事を取っている。
「そういえば丸眼鏡の防具ってダンジョン産なの? 俺も早く王国支給のミスリル装備から卒業したいなー」
「これはドワーフの国に行った時に買い付けたものじゃ。ショーケースに飾られてた緑のローブに赤いブーツという組み合わせに一目惚れしてのぅ」
「ソーマ、おまえの装備ホントだっせぇよなぁ」
マキナは宝箱を開ける時に散々ソーマにいじられているので、これでもかと言わんばかりに勝ち誇った顔で暴言を吐いている。
ソーマはそんなマキナにジト目をくれてやり、さらに丸眼鏡に問う。
「ちなみになんでそんなにレベル高いの?」
「一応13の時から獣人王国に鑑定術士として仕えてるからの。ダンジョンのアイテムなどは収納が無いと全部持ち帰るのも大変じゃから、持ち帰るアイテムを厳選するために鑑定術師は連れ回されるのじゃ。わたくしが収納を覚えたのが5年前じゃから、それからは尚ダンジョンに付きっきりになってのう」
「おっ! じゃああたしらの剣も鑑定出来るのか!? 見てもらおうぜ!」
マキナはそう言うと紅竜刀を丸眼鏡に渡した。
丸眼鏡は「んぬふっ! あのお揃いの剣でござるなっ!」と目を輝かせて手に取り、鑑定を始める。
「ふむ、材質はおそらく伝説の金属オリハルコンじゃの、ナックルガードと柄の芯も同じじゃな。柄の革もちょっと分からぬが、ドラゴン系の革かの、魔力伝道率が高いから剣そのものを杖としても使えるようで魔法効果を50%も高める効果があるようじゃ。鞘の木は世界樹のようじゃな。鍔やナックルガードに空いてる穴は魔石の類を入れると属性付与が出来るんじゃないかのう」
マキナはやっぱ凄え剣だったんだな、とはしゃいでいる。
「魔石か、どっかの宝箱で光の魔石が出たらこのダンジョン攻略が楽になりそうだな。ちなみに丸眼鏡はこれくらいの剣って今まで見たことある?」
「あるわけなかろう! まごう事なき唯一無二の神剣じゃ! まさに最強のスキルと属性を持つお、おふっ!お二人におおおにっお似合いんぬふぅっっ!!!」
こうして丸眼鏡はひと仕事終えると丸眼鏡の世界に帰っていった。
充分にMPが回復したのち、三人は5層へ転移する。
「ここまで雑魚ばっかりだからなー、たまには骨のあるヤツと戦いたいぜ」
マキナの小言を余所にソーマが頭上に灯篭を放つと、そこは大きなホールのような場所だった。
よく見るとそのホールの中央に3メートルほども身長がある骸骨の剣士が待ち構えている。
「お、ほらマキナ、言ってるそばから骨のありそうなヤツが出てきたぞ」
「いやおまえ……ありそうってか、ありゃ骨そのものだな。まあ良いんだけどよ」
そうしてマキナが紅竜刀の柄に手を添えて前へと進む。
(ん? なんか進めないぞ?)
突如、ソーマと丸眼鏡の眼前に無色透明の結界のようなものが現れ、マキナと分断された。
丸眼鏡が解除を試みるも魔法そのものを受け付けない仕組みになっているのか全く魔力が通らない。
「マキナ、どうやら俺たちはそっちに行けないみたいだ」
「へっ、なるほどな。5層ずつにボスがいてパーティから一人ずつ戦えってか! 面白くなってきたぜ、おまえらはそこで大人しく見てなっ!」
マキナは笑みを浮かべると紅竜刀を抜刀し、疾風を纏って骸骨剣士に突進していった。
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