第45話 ダンジョンの入り口現る
大きな針葉樹のある広場に10時きっかりで集まったソーマ達と魔族達。
魔族達は異種族に協力することと魔神神殿の復活の件で、各々神妙な面持ちだ。
「じゃあディーノさん、魔族達を各属性ごとに分けてもらえますか? 二属性以上使える場合は属性ごとに均等になるようにお願いします」
ディーノは了承し、魔族達を二人一組の5組に分けている。
一応ソーマは協力してくれるというのと、部下の魔族の手前ということでディーノに対しては面目を潰さぬよう敬語を使っていた。
「終わったぞ」
「ありがとうございます、じゃあ風属性の方、木のところまで来てください」
ソーマがそういうと二人の男女の若い魔族が木の前まで来た。
「こうやって木に手を当てて、下の方に魔力を流してください。かなり下の方に地下水脈が通ってますから、そこまで届いたら魔力は地下水脈を通りますので、ずっと流し続けてください」
二人の魔族は分かりました、と木に手を当てて、魔力を流し始めた。
「丸眼鏡さん、魔力どれくらい流れてるか分かる?」
「全く人使いが荒いのぉ……うむむ、流れてるには流れてるが全然足りんの、二人合わせてもソーマ殿の1割程度しか流れておらん」
ソーマは参ったな、と頭に手を当てて考える。
「……ディーノさんもやってみてもらえます?」
「構わん、そもそもキサマらや我のように魔法のコントロールに長けた者などそうそうおらんからな」
そう言うとディーノも木に手を当て、魔力を放った。
「おお! さすがだの、ソーマ殿の8割ほどは流れておるな!」
丸眼鏡の言葉に、その場にいる魔族全員がディーノよりソーマが優れていることに驚いている。
ディーノも魔力には自信があったのか驚きを隠せない様子だ。
「キサマ、まさか大魔術師か賢者の類か?!」
「いや、普通の魔法剣士だよ。……さて、困ったな。魔族さん達は極力一つか二つの属性で集まってもらって、魔力の高い俺たちが一人一人流すか――」
ディーノは、魔法剣士という立場でありながらディーノを魔力で凌ぎ、それを全く意に介していないソーマに対して信じられないと言った表情である。
「あれ、丸眼鏡さんって属性は?」
「水、風、地じゃの」
ソーマが「お、さすが三属性持ちか」と感心している横で、ディーノは「三属性だと?!」と驚く。
「ディーノさんは?」
「……光、火、風だ」
「おお、光持ちはありがたいですね。じゃあすみません、もう一回魔族さん達を最も多い属性ごとに分けてください」
そうしてディーノが人員を割り振ると、最も多いのは火と地であった。
ソーマは地図を開いて人員の割り振りを考え、記載していく。
そして全員が見えるように地図の周りに人を集め、担当地点に記述を加えていった。
結果、光の広場にはディーノ、火の広場に魔族4人、水の泉にソーマ、風の大樹にマキナ、地の大岩に魔族3人となる。
丸眼鏡は五芒星の中心で魔力の流れを見てもらい、都度足りないところにソーマとディーノが回ることになった。
光と火、水と地はそれぞれ最も近い場所にあるので、魔族のところには援護に行きやすい形となる。
もう一度手順を確認して全員で散会し、1時間後の11時に全員同時で魔力を流すことで合意した。
そして11時、各所で全員が魔力を地下水脈に流し始める。
ソーマとマキナは10分ほど魔力を流し込んだ後、ソーマは地の岩へ、マキナは丸眼鏡の元へ移動する。
「丸眼鏡! どんな具合だ!?」
「うむ、ソーマ殿とマキナ殿は十分に流れ込んでおるの、あと3分もすればディーノ殿も十分な量に達するかの」
「了解だぜ、にしてもおまえ意外とすげぇ能力持ってんだな!」
丸眼鏡はほんのり頬を赤くしながら「ぬふっ……至高のカップリング取材の為に磨いた腕でござる……んぬふふ」と気味の悪い独り言を呟いていた。
アメジストの瞳はほんのりと光り、大きく揺らめいている。
ふと思い立ったのかマキナが丸眼鏡に話し掛けた。
「そういやその眼って使い過ぎて痛くなったりしねぇのか?」
「しませぬの、所詮は鑑定術にしか使えませぬゆえ。マキナ殿の魔眼は使い処に気を付けた方が良いのう、下手すると失明し兼ねないのじゃ」
「あ? なんで知ってるんだ?」
「そういう職業ゆえ……」
そういうもんか、とマキナは納得し、時を待つことにした。
3分を過ぎた辺りで丸眼鏡が光属性の魔力が十分に満ちた旨をマキナに伝える。
マキナは合図の矢をディーノの広場に向かって放った。
「うむ、ディーノ殿も火の広場に向かったようじゃ。ソーマ殿もあと5分ほどで大岩の場所に着きそうだの」
探知魔法を使えぬマキナだが、地下水脈の五属性魔力探知をしながら誰がどのくらいの速度でどこに向かっているかまで探知する丸眼鏡の底知れぬ実力に、薄気味悪さすら感じていた。
5分後、ソーマが大岩に到着して魔力を流し、土の魔力が満ちるとマキナはソーマの広場に向かって矢を放った。
「うむ、ソーマ殿もこちらに向かっておる。今のところ最初に流したソーマ殿とマキナ殿の水と風も十分じゃし、上手くいきそうじゃの」
丸眼鏡はそう言うと一旦瞳の光を収め、魔力回復薬を飲んで近くの岩に腰を下ろした。
「結構魔力食うのか?」
「そうじゃのう、探知魔法は広範囲になればなるほどMPを使うから休まぬと厳しいの」
「へー、ちなみに丸眼鏡は最大MPどれくらいなんだ?」
丸眼鏡は、モブゆえ目立ちたくありませぬ、などと訳の分からないことを言うが、マキナは気が済まないのか凄んで聞き出す。
「んーどうだったかの、600は越えてたと思うが……」
「はぁっ!? 600ってあたしより上だぜ……世界は広いぜ、まだまだ強くならねぇとな」
「お若い二人ゆえまだまだこれから……んぬふっ! 強さも、あ、愛も……ヒ、ヒメゴトもッ……ぬぉおおお!!! わたくしとしたことがプラトニックラブリーの伝道師が……のぉぉおおお!!!」
急に丸眼鏡がいつもの調子を取り戻したので、マキナは卑しいモノでも見るような目つきでそっと距離をおくことにした。
そこからさらに10分後、ソーマが中心部に到着し、三人は火属性が満ちるのを待っていた。
「あとはディーノ殿のところの火属性じゃの」
「おっせぇな、最初からあたしが手伝いに行った方が早かったんじゃねぇか?」
「いや、それだとダンジョンが出現したタイミングでマキナと俺がここに居れなかったからね。魔族と一緒にダンジョンに入る気はないよ」
なるほどな、とマキナは納得し、二人きりでの密室ダンジョン攻略作戦ッッと丸眼鏡が興奮する。
そしてさらに10分ほど経った時、丸眼鏡が異変を察知した。
「ふむ、合図無しにディーノ殿がこちらに向かってるのう」
「……なるほど、残りは魔族に任せてこっちが出し抜くのを見込んで向かってきたかな。めんどくさいなぁ……」
「ちとずるいかもしれんが、他の四属性は魔力が届いておるし、水脈に直接火属性を流してみてはどうじゃ?」
その手があったか、とソーマは地下水脈の位置を探知し、中心部側から火属性を流し込む。
丸眼鏡は、悪い反応ではないというので、マキナも一緒になって魔力を放った。
二人の魔力があっという間に火属性を満たしたと同時、広場の中心部に淡く紫色に輝く五芒星の魔法陣が浮き上がった。
魔法陣は地下水脈からの魔力を吸収しているのか、どんどんと輝きを増し……突如襲われる浮遊感と共に、三人は地上から姿を消した。
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