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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第2章 元魔族大陸編
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第44話 魔族と丸眼鏡の協力


「な……なぜキサマがここにっ! あの時キサマさえいなければ……!」


 目の前のマキナ風の魔族はわなわなと震えている。

 近付いてみるとマキナのように左右で瞳の色が違い、ますますマキナ風だなとソーマは感じた。


「いや、なぜここにってのは俺のセリフだぞ、てっきりおまえダークエルフだと思ってたからな」

「ち、違うぞ! お、俺は魔族だ! 魔族が魔族領にいるのは当然だろ!!」


 いきなり狼狽(うろた)え始める魔族の男。


「いや、だとしたら世界樹が復活した直後に、世界樹から一番近い街を襲うのは変だろ。……あ、もしかしてお前も魔族とダークエルフの――」

「ヤツを殺せ! 生かして帰すな!!」


 ソーマの話の途中、マキナ風の魔族の声と共に周りの魔族達が一斉に戦闘態勢に入る。

 瞬時にソーマは竜巻のような突風を巻き起こして弓や魔法の照準を逸らし、直後に人数分の礫弾を頭にぶち当てて気絶させた。


「話の途中だろ、お前も魔族とダークエルフのハーフだな? だからリルムも襲ったしここでも何かコソコソやってるんだろ。襲ったってことは図星だな?」

「……ストライカー!」

「はっ!!」


 直後、長身黒髪の魔族がレイピアに手を掛けた。その瞬間にソーマは高速の礫弾を放ち、ストライカーは抜刀することすら叶わず十数メートルほど吹っ飛ばされて気を失った。


「いやだから話の途中だって……おまえも話が出来ないタイプかよ……」

「ええいうるさいっ!!」


 マキナ風の魔族はそう言うと認識阻害の魔法を使ったのか姿を消した。


「解っ!」


 そして丸眼鏡の魔法によってすぐに姿を現した。


「……くっ……好きにしろ……我一人ではお前らに勝てぬ」


 諦めたのか絶望の色を浮かべるマキナ風男。


「いや、だからずっと言ってるんだけど、会話してくれるか?」


 なんのことだ、と本当に意味が分かってないマキナ風男に呆れながらも、ソーマはとりあえずまずマキナの解放を持ち掛けた。




 マキナは解放され、その代わりにソーマは魔族全員に回復を掛けた。

 今は集落の建物の中で、ソーマとマキナ、丸眼鏡、そしてマキナ風とストライカーが円状に座っている。


「で、マキナを捕まえてどうするつもりだったわけ?」

「だからあたしはちょっと油断しただけだし逃げようと思ってたから捕まってねぇって!」

「話が進まないからおまえはちょっと黙っててくれ……」


 どうどう、と収めるソーマとマキナの様子をみて、ムフフと頬を赤らめる丸眼鏡。


「キサマらが昨日から、とある場所を的確に探っているからな――」

「ディーノ様、よろしいのですか!?」


 どうやらマキナ風の男がディーノというらしい。

 ディーノは「構わん」と落ち着いた返事をしていた。


「へー、じゃあそのとある場所を的確に探ってた俺たちを捕まえてどうする気だったわけ?」

「……どこまで掴んでるか聞き出すつもりだ」

「ああ、なるほどね。ちょっとめんどくさいからさ、その辺の情報まとめて話してくれる?」


 ディーノはぐぬぬ……と歯ぎしりするも、観念したのか経緯を話し始めた。

 (いわ)く、世界樹の復活を知った魔族は以前より調査を進めていた魔神神殿の復活のヒントになると世界樹の周辺を探索し、その結果ダンジョンが鍵なのではとの情報を掴んだ。


 その後、魔神神殿跡地の周辺をくまなく探索し続けた結果、どうやら何か意味のあるらしい箇所を見つけたものの、肝心のダンジョンの入り口が見つからずに調査は停滞していた。


 そんな中でソーマとマキナの二人が、あっという間に魔族が見つけた“意味のあるらしい箇所”を調査し始めたので、何か知ってるのではないかと聞き出そうとしたとのことだ。


「え、じゃあおまえダークエルフの血は入ってないの?」

「……ああ、入ってない。純血だ」

「じゃあなんで耳長いの?」

「……知らん、たまたまだ」


 ディーノとストライカーはじっと(うつむ)いたまま答える。

 ソーマは突っ込めるところを突っ込まずにはいられないのか、矛先をストライカーに向けた。


「ストライカーさんに聞くけど、なんでマキナを見て“忌々しいハーフ”ってすぐ断定出来たわけ?」

「……なっ!! そ、それはだな……」

「角と耳と髪の色と肌の色でしょ? じゃあ全く同じディーノってやつもハーフじゃん」


 そこまで言うと二人は狼狽え、焦燥しきってしまった。


「……その件はこれ以上聞かれても話さぬぞ。例え命に代えてもな」

「あ、いや別に良いんだけどさ、ハーフじゃないって言うから気になっただけだし。俺たちからしてみれば魔族とダークエルフが繋がっていようが関係ないしな」


 ディーノは一瞬「そうなのか?」という顔をしたが、下手に突っ込むわけにも行かないのか黙っていた。


「で、本題なんだけど俺たちも魔神神殿のダンジョンに行きたいんだよね」

「……それは許されぬぞ……我らの聖地に他種族が足を踏み入れるなど」

「あっそ、じゃあ勝手に俺たちでやらせてもらうよ。神殿復活って目的が一致してるから協力出来るかと思ったけど残念だ」


 そう言うとディーノとストライカーは目を見開いて驚く。


「キ、キサマ今なんと言った!? 他種族が魔神様の神殿を復活させるだと!? ん……そういえばキサマの黒髪……さては魔族か?!」

「いや、親は分からんけど人間だと思う。それよりどうすんの?」


 ディーノは真剣な面持ちで俯き、「復活するなら……いやしかし……」などと考え込んでいる。


「言っとくけどあんたらが拒否してもこっちは勝手にダンジョンの入り口見つけて神殿を復活させるつもりだからな。あんたらが選択出来るのは協力するか、俺たちより先にダンジョンを攻略するかのどっちかしかない」

「……随分と勝手なことを……ダンジョンの入り口の見当は付いてるのか?」


――はぁ。

 ソーマは心底疲れたと言った感じの溜め息を吐いた。


「あのさぁ……協力するかどうかも分からない奴らにそんなこと言うわけないだろ。それに随分勝手って言うけど連合国領で連合国民と獣人国の正式な調査団が調査してるのは、どーーーーーー考えても正当だし、勝手なのはあんたらだからな。いい加減にしないとマキナ誘拐の件と俺たちの殺人未遂で連合国に差し出すぞ」


 ソーマはこういう自分たちの立場も弁えずに道理も理屈も通さないくせに自分たちが正しく相手が間違っていると信じて疑わず、人の話すらまともに聞かないような奴らが心底嫌いだった。

 そのせいか随分と強い語気になり、目の前の魔族の二人は委縮して俯いている。


「……ひ、一つ条件がある」


 ディーノは意を決したように顔を上げた。

 それを見てソーマが続きを促す。


「魔神神殿の復活には協力しよう、その代わり……神殿を復活させたのは我ら魔族ということにして欲しい」

「いいよ、じゃあ早速昨日回った箇所以外のところに案内してくれ」


 余りにもあっさり了承したソーマにさらに驚くディーノとストライカー。


「ま、待て、何故そこまで魔神様の神殿の復活を望む? 何が狙いだ?!」


 ディーノの問いに「そんなの教えるわけないだろ」と言うソーマに、何度も「何故だ?!」と聞くディーノだったが、ソーマが「しつこい」と凄むとそれ以上は聞かずに俯き、神殿が復活するのであれば良いかと納得したようだった。




「それにしてもダークエルフと魔族のハーフなんてあたし以外見たことなかったけど、いるとこにはいるもんだな」


 4人は“例の地点”を目指して森の中を疾走していた。


 初めはストライカーも一緒だったが早々にスピードに付いてこれず、諦めたようだ。

 ディーノは魔物を使役(しえき)するスキルを持っているのか、狼の魔物の背に乗って疾風を使うことでようやく丸眼鏡についていけるといった具合だった。


 マキナとソーマは先頭を走りながら、時折現れる魔物を適当に除去している。小さなことだが積み重ねがレベル上げに効いてくる。


 数十分走り、マキナが捕まったとされる地図上では五芒星の頂点の場所に着いた。

 そこは昨夜最後に行った円状の広場だったが、唯一違うのは中心部も土が露出しておらず、ただ草原が広がっている。


「なるほど、そういう違いか」


 ソーマは地に手を着き、地振動探知をする。


「やっぱり地下水脈が通ってるな……えっとー……丸眼鏡さん?」

「んぬふっ! 変なあだ名をつけるでない! ハワーヌ=ルイじゃ!

「ああ、ハワーヌフさん、その名前以外になんか変わった点とか妙な点ある?」

「んぬふぅっ!! そのあだ名はマズいでござるっ!! 拡散力抜群でござるっ!!」


(なんで拡散なんて言い回し知ってるんだ……この人やっぱおかしいよ……)


「あ? そういえばなんであいつがいるんだ?」

「んぬふっ! マキナ殿! 今頃気付くでござるかっ! ハッ! まさか助けに来たソーマ殿しか目に入らずんぬふっ! わたくしとしたことが野暮なツッコミを――」


 ぜんっぜん話が進まん……とソーマは大きなため息をつき、丸眼鏡に探査を勧め、マキナに経緯を伝える。


「……わたくしとしては冒険の主人公とヒロインヌフッ……はお二人なのであまり口出ししたくないのじゃが……まあソーマ殿の推察通りじゃと思うのぅ……」


 どうやら緊急時以外は基本的にモブの立ち位置に徹したいらしい丸眼鏡はあまり突っ込んだ考察はせずにソーマの推理を後押しした。


「よし、じゃあ次はここだな」


 ソーマは地図を開き、五芒星の右下に位置する場所を指して走り出した。




 数十分後、背の高い大きな一本の針葉樹が立つその場で、ソーマは地振動探知を進める。

 周囲が広葉樹ばかりなので、その木は特に目立っていた。


「ここで間違いないな。よし、じゃあ明日から早速試してみよう。ディーノさんは魔力の高い魔族を10人以上連れて明日10時にここに来てね」

「……分かった。他になにか準備するものはあるか?」

「いや、ないよ。よろしくね」


 ディーノは了承したと言い、狼に乗って去っていった。


「で、なにが分かったんだ?」

「ん、ちょっと待ってね」


 ソーマはそう言うと木に手を当てて、風属性の魔力を地中に向かって流し始めた。

 魔力は木の根を伝って水脈に辿り着き、水脈に乗ってドンドン進んでいく。それはやがてソーマの探知限界距離を越えてしまった。


「丸眼鏡さん――」


 ソーマが丸眼鏡を見ると、丸眼鏡もまた木に手を当ててアメジストの瞳を揺らめかせている。


「ううむ……さすがにちと広いのう……」


 さらに瞳が微かに発光をはじめ、大きく揺れ動く。

 ソーマはそこから発される想像を絶する魔力と、あまりの美しさにゾクゾクと震えた。

 横で見ていたマキナも今まで想像もしなかった丸眼鏡の魔力の放出に驚いている。


「うむ、ソーマ殿の地図通り水脈は五芒星に走っておるの、そしてその一か所が五芒星の中央に伸びておる」

「……なるほど、ちなみに俺の魔力ってどのあたりまで進んでるか分かる?」

「全体の5分の1程度かの」


 うーん、と(うな)るソーマ。


「で、結局どういうことなんだ?」


 マキナがいい加減種明かしをしろと急かす。


「えっと、全部の地点が地下水脈で繋がっててその一本が中心に伸びてるらしいね。おそらく各地点で各属性を地下水脈に流して、それが全部混ざるかある程度混ざるか……どの程度かは分からないけど、全属性がその中心まで届いた段階でダンジョンの入り口が開くって思ってるんだけど……」

「……おいおい、この広さの地下水脈をたった今、全部そいつが探知したってのか?」


 先ほどまでの丸眼鏡の魔力と瞳を見ていたマキナは信じられないと言った顔で丸眼鏡を見つめる。

 丸眼鏡曰く、細かい補助など専門で戦闘は二人に遠く及ばない、とのことだ。


「まあとにかく、明日やってみれば答えが出る。魔力を流すのは魔族に手伝ってもらおう。丸眼鏡さんも来れるのかな?」

「わたくしが派遣された理由もそれだからの、当然じゃ。調査団にも話はつけてあるのじゃ」

「よし、じゃあ丸眼鏡さんは明日9時半に門の下で。マキナ、ダンジョン潜るかもしれないから買い出し行くぞ」


 おうよ、とマキナが応え、三人は街へと戻った。



いつもお読み頂きありがとうございます!

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しばらくの間、12時と19時の二話更新でお送り致します(^^)


※誤字報告ありがとうございます!

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