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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第2章 元魔族大陸編
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第38話 双剣乱舞のマキナ様


 ソーマは広い洋上の船内で、マキナが買い込んだ海の幸豊富な朝食を頬張りながら、延々とマキナの愚痴と文句を聞かされていた。

 内容はもちろん再会まで待たされたことによるもので、自覚のあったソーマも目をつぶってサンドバックになっている。


「そういやどうして次は元魔族の大陸なんだ?」


 ようやく落ち着いたマキナは今後についての疑問を投げかける。

 愚痴から解放されたソーマは安堵の表情だ。


「そもそもリルムの一件からダークエルフも魔族も連合国から警戒されてるだろうし、今となっては俺も王国のお尋ね者だからな、人間、エルフ、ドワーフの国は無しかなと思って」

「ってなると普通は獣人族の国じゃねぇか? 元魔族の大陸って実質連合国の領土だし大した街はないだろうしよ」


 マキナの言う通り、元魔族の大陸は100年ほど前に連合国が滅ぼしてからは実質連合国領と言った形で支配しており、住民は元々住んでいた魔族が多いものの連合国からの移民も少なくない。

 また敗戦国であり、連合国側からすれば進んで再興もして欲しくはないので、街の発展も他国に比べてかなり遅れている。


「それが王国研究所で魔族に関するちょっと面白い本を見つけてね、船に乗る前にも言った通り俺としてはもうマキナと離ればなれになるのはイヤだから、それを防止する観点でもまずは魔族の大陸に行きたいんだ」


 マキナはそれを聞いて、ソーマに抱き締められ耳元で甘酸っぱいセリフを囁かれたことを思い出して耳を赤くする。


「そ、その面白いことってなんだよ」

「それは着いてからのお楽しみかな、ちょっとここだと人が多いし……さっきから変な視線を感じるし」


 ソーマの言葉にハッとしたマキナは周囲を見渡すと、マキナの後ろの背の小さな獣人の女がそそくさと席を立った。

 腰まではあろう長い群青の髪を後ろに結い、髪の色と同色の犬のような耳と尻尾を持つ大きな丸眼鏡が特徴の女だが、ソーマはその瞳の色彩に見覚えがあった。


 王国の鑑定士はいずれも非常に淡く薄いアクアマリンやライムグリーンを持っていたが、目の前の犬娘も淡く薄いアメジストのような紫色の瞳を持っている。


「なんだあいつ……追っ手ってわけでもなさそうだけどよ……」

「もしかするとどこかの国の機関の鑑定術師かもな、魔族の動きの調査も兼ねてるのかも」


 ふーん、と興味なさそうに返事するマキナにソーマが話を振る。


「船旅も長そうだし、俺が考えてる今後の方針についても説明するよ。当分は二人でダンジョンに潜ったりもするだろうからスキルとか魔法に関しても共有したいし」


 そう言うとソーマはまず、二人のステータスプレートに書かれてある内容を全て共有し合い、今後伸ばしていくべき部分や補い合う部分、その方法などについて話し合った。

 難しいことやめんどくさいことはマキナは苦手そうだなと勝手に思っていたソーマだが、いざ話してみるとマキナも戦いや勝負、強くなることが好きなのか結構食いついてきては熱心に議論を重ねた。


 マキナにとっても希少なSランクスキルに三属性使いという部分を全てオープンに話せて尚、対等に接することの出来る相手の存在が嬉しかったのだろう。

 ただ、ソーマが光属性を発現し五属性にSランクスキル4つ持ちというのにはさすがに「チートだろ」と文句を言わざるを得なかった。



 一通り今後について話し合った後、二人は船内で昔マキナが潜ったダンジョンの話などをしていたが、急に船内が慌ただしくなり話を中断する。


「なんだ? 随分外が慌ただしいな」

「海賊でも来たんじゃねぇか? ちょっと上行ってみようぜ」


 二人がデッキに上がると、弓を構えた船員が多数おり、その矢の先には3隻の如何にも海賊船! といった雰囲気の船が近寄ってきていた。

 お客様は船内で待機くださいという船員をたしなめ、二人は様子を見る。


 どうやら海賊側は女子供金品食料根こそぎ寄越せと主張し、船側は船員の物資のみなら抵抗はしないというような主張をしているようだ。

 話は平行線を辿っているようで、海賊側は今にも痺れを切らし兼ねないと言った切迫した状況である。

 ソーマとマキナは焦燥し切っている船長に近付く。


「あの、乗客の冒険者なんですけど、アイツらって蹴散らしてもなんか問題あります?」


 ソーマの言葉に船長は目を丸くして驚き、マキナはそうこなくっちゃなと面白そうに意気込む。


「は、はぁ……しかし返り討ちにあってしまえばお客様全員にご迷惑が……」

「その辺は問題ありません」


 そこまで言っても責任を取る立場の船長は「しかし……」と及び腰なので、ソーマは勝てば問題ないだろと判断した。


「おいソーマ、向こうのお宝も頂くから燃やして船沈めるなよ!」

「俺は船と船員守るからマキナがやってくれ」


 任せろ! との声を合図にマキナは20メートルほど先の3隻の海賊船に向かって一度に数本ずつの矢を放つ。

 その矢全てが別々の敵に命中し、10回ほど射ってから助走して大きく跳躍し、海賊船の一隻に飛び移った。

 その間に向こうから放たれる矢や魔法は全てソーマが覚えたての結界魔法で防いでいる。


「へっ! ずっと呑んだくれてて身体が鈍ってっからな、準備運動にゃ丁度いいぜ!」


 マキナは身を低く屈めたのち、腰の両脇から二本のカットラスを抜刀した。紅竜刀(こうりゅうとう)を入手する前から使っていた愛刀で、海賊如きに紅竜刀を抜くまでもないということだろう。


 双剣で踊るように乱舞しながら次々と海賊を切っては隣の船に乗り移りを繰り返し、マキナはあっという間に3隻の海賊船を掃討した。


「おーいソーマ! 大したもん積んでねぇが金になっからよ、こっちの積荷移すの手伝え!」


 そう言うとマキナは金目の物をいそいそとデッキに運び出している。

 ソーマもちょっとだけ待っててくださいと船長に告げ、各船に何か面白い戦利品がないかを物色しに行き、船長室と思しき部屋の壁に世界地図が貼ってあったのと、木製の重厚な机の引き出しに革表紙のノートとペン、それに懐中時計があったので、それらを頂くことにした。




「かーーっかっか! 双剣乱舞のマキナ様に喧嘩を売るったぁ運が無かったなぁ!」


 乗客、船員共にソーマとマキナの戦果を称え、感謝されて気を良くしたマキナは奪った大樽の酒を無償でみんなに振る舞い、酔っ払ってからはずっとこの調子だった。

 その後もずっと過去の英雄譚を乗客と船員を前に悠々と語り始め、皆も実際にマキナの縦横無尽の活躍にダークエルフと魔族という珍しいハーフ、しかも可愛い美少女とあって話に酔いしれていた。


 酒が入るとめんどくさいヤツだなと悟ったソーマは一人デッキに出て、ちびちびと葡萄酒を煽りながら奪った品の中にあった干し肉をつまみ、大海原を進む様子を眺めている。

 ちなみに海賊船から奪った金品は自分たちで売りさばくのが面倒なので、船長に一括で買い取ってもらった。


 真っ青な空にぽっかりと浮かぶ白い雲。

 船は深い藍色の海を静かに波音を立てながら進んでゆく。優しい潮風と陽の暖かさが心地良く、葡萄酒の美味さも相まって、目の前にある全てがまるで自由の象徴のように、ソーマには思えた。


 中世のような船の上で、剣を携えてこんな旅をするなんてなぁと感慨に(ふけ)りながら、空も海しか見えなきゃ地球とさほど変わらない景色かもな、等とノスタルジックな気分に浸っていると、後ろから声が掛かる。


「あ……あの、ちょっとおきっ……お聞きしたいことがあるのじゃが……!」


 振り向くとそこには先ほどの大きな丸眼鏡を掛けた犬耳鑑定術師がいた。

 さては五属性使いがどうとか、先ほどの戦闘は云々とか言われるんだろうなと思っていたソーマは丸眼鏡の次の言葉に目が点になってしまった。


「あ、あのダーエルと魔族のハーフさんとは! い、いったいどういったご、ごかっご関係で!?」


 まためんどくさそうなヤツが来たぞ……とソーマは遠い目で海を見つめるのであった。



いつもお読み頂きありがとうございます。

本日から試験的に18時と21時の二話更新にしようと思っています。

17時以降からのアクセス数が多いので、仕事が終わってから寝るまでの間に読んで頂けていると思うのですが、12時は昼休み等で読めたらと思って更新してました。

何時に投稿するのが良いのか分からない部分が多いので、もしリクエストがあれば参考に致します。

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