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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第11章 最終決戦編
332/346

第332話 予定調和


「ど、どういうことだ?」

「あれっ? あれれ? 魂は束縛してるのにぃ?! ど、どういうことですかぁ!?」


 動揺するソーマとアミーに対し、マキナの身体を借りたエーヴィリーゼは満足そうな表情を浮かべながら演説を始めた。


『ふっふっふ、天才エーヴィリーゼちゃんが一体どんな手を使ったのか、説明しよう!』


 エーヴィリーゼは腰に両手を当てて胸を張ると、得意げに語り始める。

 口調そのものはエーヴィリーゼだが、どこかマキナのような雰囲気に、ソーマとフィオナは何故か少し安堵した。


『神滅竜砲の利き具合から、サリーナ葉巻を用いた場合のダメージ量を算出すると、ほぼ瀕死の状態まで持っていけることは明白ね。となると当たれば、必ずアミーちゃんが出現する。アミーちゃんは慎重な性格だから、タダで出てくるわけがない。じゃあどうするか、人質を取るのが手っ取り早いわね?』


 エーヴィリーゼはアミーに視線を向けると、屈託のない顔でにこやかに微笑みながらウィンクを贈る。


『人質として最も有効な相手は、マキナちゃんかフィオナちゃん。ソーマくんはステータスが高く用心深いから、手を出しにくい。どちらを選ぶかはアミーちゃん次第だけど、性格的にソーマくんの恋人のマキナちゃんを狙う方が確率が高いと思ったの。さらに邪魔くさいのは、私の存在、となると私とマキナちゃんが一緒に行動すれば……』

「う、うるさい! そんな話を聞きたいのではなく、何故魂を束縛されているそいつにお前が乗り移ってるですか!」


 アミーは自身が策にハメられたのがよほど悔しいのか、厳しい剣幕でエーヴィリーゼに問う。


『アミーちゃんが倒したと思ってる私、あれ精巧な人形なの。さっきも一回見せてると思うけど? 一緒に行動しているように見せ掛けて、先に私がマキナちゃんに入っておいたのよ。元々私と思ってる姿かたちも竜人族の女の子から借りたものだし? こんなの訳ないわよ?』

『アミー! 良いからさっさと回復しろ!』


 ゴルムは焦るようにアミーに怒声を上げる。

 ハッとしたアミーはすぐに回復をしようとするも、かざした手からは何も出てこなかった。


『ふふ、アミーちゃんがマキナちゃんを束縛しているように、私も二人を束縛しているの、分からなかったかな?』


 その言葉を聞いたゴルムは、エーヴィリーゼに対し鬼のような形相で睨む。


『くそ……また貴様に負けたのか……?』

「え? ええっ? まだ負けと決まってませんよねぇ??」


 動揺するアミーを他所に、エーヴィリーゼはニヤリと口角を上げて答える。


『ゴルちゃんは察しが良いわね。付き合いが長いから一つ言っておくけど、アミーちゃんがいなければもっと高い確率であなたを倒せてたわよ。この子……というか光闇結界を持った回復要因の存在がここまで手こずる原因になったわけ』

「だぁかぁらぁ!! まだ負けてませんよねぇぇええ??」


 マキナの姿をしたエーヴィリーゼの胸ぐらを掴み、狂気の表情で睨むアミーに対し、エーヴィリーゼはアミーの顎を強引に掴み、無理矢理空を見上げさせた。


『ソーマくん、フィオナちゃん。今日上空に放ったスキルと魔法、覚えてるかしら?』

「えっと……リュージさんの紫結晶込みの神滅竜砲が一発と、サリーナ葉巻と紫結晶を使った神滅竜砲が一発ですか?」

「あと、さっきのフィオナの聖竜砲もじゃないか?」


 二人はそう答えながらも、つられて上空を見上げた。


『正解ね。その三発は全て同じところを通るように放たれた。その場所に何があると思う? はい、アミーちゃん』

「な、分かるわけないですぅ! 何があるって言うんですかぁ!?」

『増幅反射の陣だろう。その三発のエネルギーを吸収して何倍にも増幅させて反射させる魔法だ』


 ゴルムは虚無感に包まれた表情で、大地に横たわったまま空を見つめていた。


『ゴルちゃん正解! ついでに言うと数日前から世界中の魔力を少しずつずーっと蓄えてるから威力は数倍なんてもんじゃないわよ? さらにー? ソーマくん達がゴルムを誘導したこの場所だけ、何故か整地されたように平らよね? 上空の空気は薄く感じなかった? なぜかな?』

「……そうか、空気が薄くなれば魔法やスキルの速度が落ちにくい。少しでも早く上空の魔法陣に魔法とスキルを吸収させ、さらに反射した魔法を少しでも早く地上に到達させるためか。ここだけ平らなのは反射された魔法が着弾する場所に誘導しなければ意味がない、そのためにエーヴィが整地した。そうだろ?」


(事前の作戦と違うけど、その場その場で最適な作戦に書き換えてきたってわけね)


『ソーマくん正解っ! さあ、そろそろよ? 自らの過ちを来世で悔い改めなさい?』


 そう言ってエーヴィリーゼが指差した上空に、きらりとまばゆい白銀の光が見えた。


「エーヴィ、光闇結界を展開するからこっちへ来い!」

『私とマキナちゃんは大丈夫だから、フィオナちゃんを守ってあげてねんっ』


 エーヴィリーゼの言葉にソーマは早めに光闇結界を展開する。

 残された三人は、上空から迫る白銀の矢の着弾を待つのみと思われた。


「……はぁ、残念です、女神と言えど許せませんがここは戦況優先。アミー、一旦魂を切りますわね。そちらの身体で大人しくしてなさい」


 アミーは別人のような口調でそう言うと、エーヴィリーゼの支配下から脱したようで、光闇結界を展開した。

 その結界は、エーヴィリーゼとアミー、ゴルムを包み込む。


「神への勝利と世界の終焉のためとは言え、もう一度私達を分離させた代償は高くつきますよ」

『ふふ、アミーちゃんの双子姉妹、エミリアね。私を一瞬でも死の恐怖に陥れた代償、払ったのはそっちよ?』

「……どういうことです?」


 エミリアは不機嫌そうにエーヴィリーゼを睨む。


『神である私に向かって一瞬でも死の恐怖を与えた代償、何が良いか考えたのよ。あなた達が何を一番嫌がるか考えたの。で、殺す前にあなた達を分離させられないかなって。案の定分離してくれたわね~、ホント手の平の上で転がし甲斐のある子』

「……強がりも甚だしいですわね。貴方、こと戦闘においては弱いんでしょう? この光闇結界を解かずにゴルムを回復させたらどうなるか分かりますよね?」


 にじり寄るエミリアに、エーヴィリーゼが不敵な笑みを浮かべる。


『ソーマくん達に逃げてと言わずに光闇結界を張らせたの、作戦よ? 光闇結界なら無事だと思っちゃったんでしょ? そんなの私が対策しないわけないわよね? 光闇結界の原理知ってる? 魂拘束の原理と対策知ってる? 世界の作り方、原理、その課題と研究と成果、知ってるかしら? あのね、私、全部知ってるの。神の世界の常識。基礎中の基礎。あなた達が使ってる禁術も、ぜーんぶ知ってる。あなたが知ってて私が知らないことなんて、知識の上では何一つないの。 天才? 神童? 長寿のエルフ? ふふ、可愛い赤子みたい。私は、何万年も生きていて、神々の世界で天才と言われている女神なの。それが、あなたがケンカを売った相手。ぜーんぶ予定調和。ここまでぜーんぶ、私の計算通り。その微生物みたいな小さい脳で、この格の違い、分かるかな? ちょっと難しいかな?』


 勝ち誇ったエーヴィリーゼはエミリアの顎をまたクイと掴む。


『私たちは世界樹の神気で生き返り、あなたは一人で死に、ゴルムもここで死ぬの。生きるために離れたくないアミーちゃんと分離までしたんだろうけど、まさか離れ離れの状態で死んじゃうなんてねー。可哀想だから、この身体で良ければ最期にアミーちゃんとお話しさせてあげよっか?』


 エミリアは震えながら、しばらくして小さく頷いた。

 死を悟ったのだろう。


『バーカ、あんたが分離した時点でアミーは死んでるわよ。アミーを殺したのは、あ・な・た。はい、ジエンド』


 直後、ルーゲイア全土を揺るがすほどの巨大な白銀の矢が地上に堕ちた。



いつもお読み頂きありがとうございます。

完結まで宜しくお願い致します。

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