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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第9章 女神の聖地復活編
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第268話 不可解な魔物の群れ


 ソーマ達は真っ白な神殿の真ん中に転移した。

 周囲は白い円柱状の柱に囲まれており、天井も床も白かった。壁はないので外からの風が吹き込んでくるも、どこかその臭いは焦げ臭い。

 時刻は昼過ぎ、ソーマ達は臭いの原因を辿る為に走って神殿の外まで行くと、眼下には至る所で火の手を上げるミスタリレの街があった。

 どうやら女神の神殿はミスタリレ王宮の背にそびえ立つ崖の中腹に復活したようだ。


「あ? 戦争か!?」

「……いえ、襲ってるのは魔物みたいですけど……スタンピードにしては数が多すぎですわね。街にもかなり入り込んでますけど、街壁の外にも埋め尽くすほどいますよ。もしかしてディーノさんが使役してるんでしょうか」

「ううむ……探知しておるのじゃが、魔族の類は一人もおらんようじゃ」

「すぐに助けてぇのはやまやまだけどよ、まずはソーマの方が先だろ」


 リュージの言葉にマキナ達がソーマを見ると、ソーマは身震いをしながら既に碧竜刀に手を掛けている。


「おい、お前大丈夫かよ」

「……エーヴィリーゼは神殿を出るなって言ってたよね。神殿なんて出なくてもここからあいつらを一瞬で屠るなんて訳ないよ」


 ソーマの言葉に四人は「こりゃダメだ」と頭を抱え、すぐに何とかする方に話を進めた。


「でもあたしの剣がヒントっつーのはどういうこった?」

「あの時に剣と一緒にあった壺じゃないですか? ココネさん出してくれます?」


 フィオナの言葉に丸眼鏡が壺を出すと、壺はくるくると回りながら勝手に浮き上がった。

 そして口をソーマに向けて止まると、次の瞬間から物凄い勢いでソーマから様々な色の光を吸い取っていった。

 あまりの勢いに皆驚くが、その光は綺麗なわりには美しいという感情は湧かず、むしろ気味の悪さすら覚える。光を吸い尽くした壺は淡い光を帯びながら丸眼鏡の手に戻った。


「な、なんじゃったのじゃ今のは……」

「大丈夫ですか、ソーマさん」


 皆が心配そうにソーマを見るも、ソーマは不思議そうに自身の手のひらを目の前に浮かべて手を握ったり開いたりしている。


「おい、大丈夫なのか?!」

「……うん、ありがとう。おかげでいつもの感じに戻れたよ。って言うか、おかしくなってることに全然気付かなかったけど天使化の影響ってかなりマズイね」


 バツの悪そうな笑顔を向けたソーマがいつもの様子と変わらなかったので、ようやく四人は安堵の表情を浮かべた。


「はー、やっぱその壺が天使化の害を抑えるものだったっつーことか。にしてもなんでジュリアがこんな壺持ってたんだろうな」

「ううむ、そればかりは謎じゃの。とにかく天使化による弊害を抑えることが出来て何よりじゃ」

「そうですね、ちょっとあのソーマさんは気持ち悪いですから。大丈夫そうなら人間国を助けに行きますか?」

「うん、もう大丈夫だよ。また変な感情が湧いてきたらすぐに報告する」


 ソーマの言葉に四人もすぐに武器を構え、フィオナはミスタリレ全体に響き渡るようなバフの歌を紡いでいった。

 そしてどうすれば良いのか、皆がソーマの指示を待つ。


「えっと、リュージは丸眼鏡背負って、二人で空中のワイバーンを殲滅してくれ。 マキナは街壁の外に群がる魔物を全部殲滅、俺とフィオナは探知を使いながら城下町に入り込んだ魔物を倒しつつ、傷ついた民を回復していこう」

「りょーかい、いつもの調子に戻ったようだな! そんじゃあ外は任せろ! リュージ、街の外まであたしも連れてけ!」

「おう、二人とも乗んな!」


 丸眼鏡はリュージの背中に飛び乗り、その後ろからマキナが覆い被さるように飛び乗る。

 二人を乗せたリュージは軍神の覇闘気を纏うと、もう一度ソーマの様子を確認してから一直線に街壁の外を目指して飛んで行った。

 途中ではマキナが炎獄嵐を、丸眼鏡がダイヤモンドダストを放ちながらみるみるうちに空を覆い尽くすほどのワイバーンを殲滅してゆく。


「ふふ、やっぱりソーマさんはこうじゃないといけませんね。さて、私達も急ぎましょう」

「心配掛けてごめんね、もう大丈夫。俺は王宮前の門から降ってく。フィオナは街の広場から頼む!」


 二人は軍神の覇闘気を纏うと、神殿から飛び降りるように跳躍した。

 ソーマは小天使スキルを用いて翼を開くと、王宮の門の前に降り立つ。

 騎士団は門の内側で待機しており、城壁の上からは魔術師団が上空のワイバーンに向かって魔法を放っていた。

 皆の視線は突如空中から現れた二対の白銀の翼を持つソーマに釘付けとなる。


「上空のワイバーンはうちのパーティが片付けます! 街壁の外の魔物もすぐに殲滅出来るはずです! 俺はこれから街の中に入り込んだ魔物を適宜殲滅していくので、皆さんは民の安全を優先してください!」


 ソーマはそういうと、すぐに門を出て街を縦横無尽に走り、時に飛び回りながらオークや狼、虎の類の魔物を殲滅して回った。

 さらに時折エリアヒールや重症の者にはハイヒールを掛けてゆく。

 幸い王宮の方まではさほど魔物が入り込んでいなかったので、ソーマは探知を使いながら魔物が多い地区を優先的に回っていった。



 一方フィオナは局所突風を用いて風に乗りながら広場に降り立った。広場には民が集まり、騎士団員が民を囲むように守りを固めている。

 フィオナはすぐにエリアハイヒールで周囲の騎士団を一気に回復させると、混戦気味の街門からの大きな通りに向かって駆ける。

 街門からはなだれ込むように魔物が入ってきており、多くの騎士団と魔術師団が陣形を保ちつつも必死に魔物を抑え込んでいたが、魔物の数が尋常ではないので前線が崩壊するのは時間の問題だろう。


 フィオナは一旦大きく跳躍すると街門付近に群がる魔物に向かって永久凍土を放ち足止めすると、大通りに群がる魔物達を大量のホーリーアロウで一気に殲滅し、傷ついた騎士団員を癒すと大きな声を張り上げて指示を出して回った。


「ここは私に任せて皆さんは街の中に入り込んだ魔物の殲滅をお願いします!」


 あっという間に大通りから攻め入る魔物の群れを駆逐したフィオナは、マキナが街門の外の魔物を殲滅するまで一匹たりとも街に魔物を入れないと決めて街門付近で一人魔物の足止めを引き受けた。



 リュージから飛び降りたマキナは上空から街門外に群がる魔物に向かって炎獄嵐をぶち込んだ。

 賢王を取得したマキナの超範囲に及ぶ灼熱の炎渦はあっという間に数百匹の魔物を一瞬にして屠る。

 焦げた大地に着地したマキナは不敵の笑みを浮かべ、魔物を挑発した。


「さて、何千匹いるのかしらねぇがおめえらの相手はあたし一人だ、かかってきな!」


 魔物の群れは雄叫びを上げるとマキナに向かって360度全方位から突進してくる。

 マキナはそれを十分に引き付けると、再度地面と水平に広がるように炎獄嵐を放った。まるで草原を埋め尽くすような炎の渦は突進してきた魔物達を瞬時に焼き尽くし、一瞬にしてまた数百匹を葬った。


「おらおらどうした?! たった一人の双剣士をやれねぇってか!?」


 あまりの威力の魔法に後ずさる魔物を見たマキナはニヤリと笑みを浮かべると、未だ魔物が埋め尽くす場所の中心に向かって縮地で一気に入り込み、再度炎獄嵐を放った。

 一度に焼かれる魔物の数が尋常じゃないせいか、炎獄嵐を放つたびに尋常じゃない煙が上がる。

 こうして街門の外を埋め尽くすような魔物の群れはあっという間にマキナによって殲滅されていった。



 上空では丸眼鏡がリュージの背に乗りながら空を埋め尽くすほどのワイバーンを猛烈な突風と竜巻を用いてミスタリレ上空から草原の方へと追いやっていた。

 丸眼鏡はマグマライト結晶も用いて巨大な暴風を作り上げ、そのワイバーンの群れを草原の方へと押しやると、ダイヤモンドダストで一気に凍り付かせる。

 賢王を取得した丸眼鏡の魔法にワイバーンは為すすべなく凍て付き、そのまま事切れると次々と墜落していった。


「なるほどな、この数のワイバーンが街に墜落するとそれだけでも被害になるっつーわけか。ソーマが空にオレとココネちゃんを配置したのはこういうことも考えてのことかい」

「おそらくそうじゃの。街の方も落ち着いて来てるようじゃし、広場で待つことにするかのう」


 丸眼鏡がそういうと、リュージもゆっくりとミスタリレの広場に降り立ち、皆が戻ってくるのを待った。



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