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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第8章 最強防具と火山ダンジョン編
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第241話 予想外の報酬


 厳しい目付きのファイストスは五人を一瞥した。

 今までの神とは違いまるでフランクな様子の無いファイストスに、ソーマ達は一気に緊張が走る。


 なんだかんだと言っても相手は神である。

 ソーマ達の生殺与奪をおそらく完全に握っている上、例え殺したとしても神に厳罰が下るとは思えない。

 アデンはソーマ達に良くしてくれているが、ファイストスが間違って殺してしまったとしても、こちらの世界に例えるならば大切にしていた虫が殺されてちょっとがっかり程度で終わる可能性だってあるのだ。


「ふむ……しかし私の作品がこうも集まるとは気分が良いな。二対の神剣に小刀、それに杖とメイスか。どうだソーマ、それにマキナとココネか。私の打った剣の使い心地は」

「おーこれおっさんが作ったのか!? 最高だぜ、カッコいい上にめちゃくちゃ強え。武器としてこれ以上があるかって感じだぜ! マジで一生大切にすっからよ!」


 先ほど言葉遣いを注意されたばかりだが、マキナはこういう話し方しか出来ないために丸眼鏡とソーマが慌ててフォローを入れる。


「わ、わたくしは戦闘では使わぬのじゃが、色と気品、情緒のあるデザインが最高ですのじゃ。まるで芸術品のようなものを実用的に使えるのは本当に素晴らしく最高ですのじゃ!」

「私も大変気に入っております。こんなにも素晴らしい刀はこの世界じゃ絶対に手に入りません。ココネも言っておりますが、最高のこうげきりょくに手に馴染む重心、宝玉による性能上昇と実用性で申し分ない剣であるのに加え、デザインが芸術品の域を超える一品。短い人間の生涯でこのような素晴らしい刀を持たせて頂いていること自体が恐縮でありますが、私達は一生涯の宝として大切に扱わせて頂きたいと思っております」


 眼光鋭く話を聞いていたファイストスは、三人の感想を聞いてふっと表情を綻ばせた。

 一方四人はソーマの聞いたことのない話しぶりに、内心「こういうことも出来るのか」と驚いていた。


「悪くない感想だ、気に入ったぞ。ソーマの言うようにお前達の生涯など我々に比べれば一瞬の出来事に過ぎないが、その短い生涯の宝として扱うが良い」


 どうやら自身の作品の感想を聞いて気を良くしたファイストスを見て、ソーマ達はマキナの言葉遣いを咎められなかったことに心底安堵した。 


「さて、我がダンジョンの攻略見事であった。いや少々ぬる過ぎたかと思ったのだが他の神から色々と口出しされたからな、見事というほどでもないかもしれんな。それとココネ、私の力の一部を返せ」


 ファイストスの言葉に一体どういうことだと四人が振り返るも、丸眼鏡も全く意味が分からないと言った様子であたふたしている。


「わ、わわっ、わたくしにはファイストス様のお力を借りておったという自覚がないのですじゃが……っ!」

「……もう良い、勝手に取らせてもらうぞ」


 あたふたする丸眼鏡の眼の前に、第九層で得た黄金の玉が現れると、それはファイストスの身体へと吸収されていった。

 あれがファイストスの力の一部などと一体誰が分かるのかと文句を言いたくなった五人だが、ここで文句を言って機嫌を損ねてしまうと何が起こるか分からないので、ソーマ達はただただひたすらに早く消えて行ってくれと願うばかりだった。


「これも本来であれば私はやりたくなかったのだがな、他の神に勧められて仕方なく作ったギミックだ。聖地復活の際にはこれを見つけた褒美も授けておく。褒美は私が勝手に選んでおいたからな。では、こちらも忙しいゆえ……火と鍛治を愛する者に加護を」


 ファイストスはそう言うと、光の渦に包まれて消えていった。

 ソーマ達は胸が詰まるほどの緊張感から解放され、それぞれそのまま地面にへたり込んで息を整えた。


「はー……ダンジョンについて文句でも言おうと思ってたけど、全ッ然そんなこと言える雰囲気じゃなかったね……」

「私も今回ばかりは文句言おうと思ってたんですが、あまりの威圧に息苦しかったくらいです」

「わ、わ、わたっくしも、力を返せと言われた時は死ぬかと思ったのじゃ!」

「丸眼鏡ッち、めちゃくちゃビビり過ぎて言葉遣いおかしくなってたもんな」


 マキナが茶化すも、四人は引きつった笑いを浮かべるのが精いっぱいであった。

 直後、ダンジョン復活の為か地震が起き始める。


「おいおい、話はあとの方が良いんじゃねぇの? どうすりゃいいんだァ!?」


 リュージは聖地復活が初めてなので、四人は大丈夫だと言いながら一か所に集まる。


「だいたいいつもはなんとかなるから待ってれば良いんじゃないかな」


 ソーマの言葉にリュージも一旦安堵の表情を浮かべるも、次の瞬間大量のマグマが大広間に流れ込んできた。

 さらに直後、五人の足元に大穴が空き、下に見えるのは地下水流である。


(は? これまさか水蒸気爆発を誘発させて噴火を起こして火山を復活させんのか!? さすがに横暴過ぎだろ!!)


「おいソーマ! どうすんだよ!」


 マキナもさすがにヤバいぞと指示を仰ぐも、ソーマも思考を張り巡らせながら策を考える。

 その間リュージは羽ばたき、とりあえず全員が地下水脈に落ちることを防いだ。


(どうする!? 結界を多重展開しまくって噴火と一緒に地上を目指すか?! でも耐えきれなかったら終わりだぞ!?)


「ソーマ殿! 地下水脈の先の一部がダンジョン入り口の泉まで繋がっておる! ここは地下水脈に乗って外を目指す方が良さそうじゃ!」

「うおおおお! さすが過ぎますハワーヌ=ルイ先生!! 道案内頼みます!!」


 ソーマは球状に結界を作り上げるとリュージに羽ばたくのをやめさせ、地下水脈へと落ちていく。

 激流の中グルグルと周る球状結界を丸眼鏡は三層まで増やし、内側の球状結界まで回らないよう空気の層をコントロールしながら流れに乗った。ソーマは灯篭で視界を確保して援護する。

 いくつもの分岐を五人を乗せた球状結界は水流と風のコントロールで進んでいく。


「っひゃーこりゃおもしれぇな! 目が回りそうだぜ!」

「スリル満点ですね!」

「こんな激流が地下に通ってるなんて驚きだね。なんでこんなに速度が出るんだろ」


 楽しむマキナと冷静なソーマの隣で丸眼鏡は探知をしながら巧みに魔法をコントロールして正解ルートを辿っていく。

 そしてついに行き止まりの壁が近付いてくると、丸眼鏡は穿通礫錐を放って穴を開けた。


 激流に押されるようにソーマ達が入っている球状結界は泉の中から飛び出し、空高く投げ出される。眼前には一気に青空が広がった。

 ソーマは結界を解くと地属性の足場を作り上げ、四人はそこに着地をすると跳躍して噴出する水柱から離れて草原に降り立った。

 みるみるうちに水は溜まっていき、目の前には浅い泉が作られていく。

 どうやらこの辺りは少しくぼんでいるらしく、気付けば小さな湖が出来そうなほどであった。


――――――――――

ティロリロリン♪


地竜王オリハラーヴァを倒しました。

ソーマのレベルが77に上がりました。

詳細はステータスプレートをご覧下さい。


スキルに『火竜王の加護』『マグマの魂』が追加されました。

極位魔法『溶岩流』を取得しました。

――――――――――


「お、無事スキル付与がされたね。さすがにあの強さのボスだけあって経験値が高かったかな、レベルが一気に3も上がっちゃったよ」

「お? オレは不退転の魂っつースキルを得たな。これが挑戦スキルっつーやつか」

「あっ! えっ!? 私は限界突破スキルが貰えました!」


 フィオナの言葉に四人も驚きを見せる。


「なるほどね、一旦シャワー入ってから着替えて、飯でも食べながら全員のステータスとスキル、魔法を確認しようか」

「んだな、賛成だぜ! あと今夜は宴会だ! ようやく火山ダンジョン制覇だかんな、あたしは飲むぜ!」

「うむ、では早速シャワーを浴びようかの。とりあえず無事攻略出来て気分が良いのじゃ」


 五人は安堵と達成感で笑顔を綻ばせ、シャワーに入って着替えを済ませた。


 清々しい青空の下、ソーマ達は簡単な料理を囲んで今回の収穫について話し合っていた。

 まずは聖地復活関係のスキルの確認だ。


S:火竜王の加護…火属性の魔法・スキルを取得しやすくなる。火属性の魔法・スキルの効果が上がり、習熟度が上昇しやすくなる。火属性の魔法・スキルのMP消費を抑える。火属性攻撃耐性。(全効果大)

SS:マグマの魂…???


 こちらはいつも通りの効果で、パーティ内ではソーマとマキナの恩恵が大きい。

 特にパーティ内最大火力を誇るマキナの魔法の威力が上がるのが非常に強力だ。


 次にソーマが取得した極位魔法『溶岩流』

 こちらは大津波のマグマバージョンといった具合で今のところ使い勝手は何とも言えない。


 リュージは初の挑戦系スキルである『不退転の魂』だ。

 これはAランクスキルで全てのステータスが上昇、効果は大。


 そしてフィオナがまさかの『限界突破』の取得である。

 ファイストスの言っていた褒美と言うのがこれのことだろう。

 おそらくファイストスが「本当はやりたくなかったが他の神に勧められて作ったギミック」と言っていたのがあの隠し転移レリーフと黄金の玉のことであり、それを見つけた者には褒美として何か授けるという流れだったのだろう。

 もしかすると、アデンがフィオナに限界突破を授ける為に口を利いてくれたのかもしれない。


 今までフィオナのみが限界突破を持っていなかったので、この先の戦いは厳しくなっていくことが予想された。

 ここでこのスキルを取得出来たのは、非常に大きな意味を持つ。


 さらにお約束の聖地復活に関するステータスアップが丸眼鏡に付く。

 ドワーフの血を引く丸眼鏡が無事ステータスを全て10%アップした。


「はー、まーた丸眼鏡ッちが強くなったな。フィオナも限界突破を得たから疾風が上がるようになったし、ますます皆強くなんな」

「本当にありがたいです。でも挑戦系スキルを持ってなかったリュージさんが得たとなると、次からまたリュージさんも強くなりますね」

「これが使えんのは人間国ダンジョンの最下層か? どんなもんか気になるゼ」

「にしても、もしかすると修業期間でわたくし達は相当強くなったのかもしれんの。まさかHP100万をあそこまで短時間で削れるとは思えなかったのじゃ」


 丸眼鏡の言葉にはソーマも深く頷いた。


「本当にそう思うよ。ヘルド戦辺りと比べてもめちゃくちゃ強くなってると思う。まだまだ各自強くなる余地は多々あるし、慢心せずにもっと上を目指して魔族とダークエルフに絶対に負けない力を付けよう」

「へっ、当然だぜ。例え世界最強パーティになったとしてもあたしの目標は世界最強だ。丸眼鏡ッちやおめえに勝てねえうちはまだまだっつーこった」

「私も忘れないで下さいね! マキナさんに負けたくないのは変わってませんから!」

「おいおい、今回一番の活躍を見せたっつーのにオレのことは相変わらず無視かよ」


 リュージが話に割って入るも、マキナとフィオナは口を揃えて「対人は弱すぎ」とツッコミを入れ、リュージはいつも通り反論するのであった。

 その後しばらく談笑した五人は、ローガンの元に報告へ向かうことにした。



いつもお読み頂きありがとうございます。

評価、ブクマもありがとうございます、励みになります!

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