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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第7章 竜人族と光の神編
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第184話 続・話し合い


 ソーマは亡くなった竜人達を蘇生させた後、長老に、獣人国王が是非竜人国に伺いたいが、日程調整に家臣の説得などを要し、その際に竜人国の外交官等がいてくれると非常に助かると言っていたことを告げた。

 長老はその旨を了承し、人選に掛かった。

 さらに獣人国からは解読班を二人連れてきており、助手に使って欲しいと伝えると、長老は喜んでいた。

 礼を言って家を出ると、多くの竜人達が復興に奔走する姿が見える。


「さて……まずはクルーザーの研究者さん達を連れてきて、それからどうする? ヒルコさんの所でも行こうか?」

「あー賛成だぜ、話付けて向こうのダンジョン潜らせてもらえると良いよな。最近稽古と模擬戦ばっかでつまんねぇし」

「うむ、ではリュージ殿を探そうかのぅ」


 丸眼鏡はすぐにリュージを探し当てて呼んでいる間、ソーマは研究者二人を長老の所に案内し、五人はリュージの案内でタタガーナダに出向くことになった。


 基本的に竜人は、遠い場所へは飛んでいくことが多く、タタガーナダとゲイブレアを繋ぐ街道のようなものはない。

 ソーマ達は海岸を走って島を半周するようにグルっと回っていくことにした。

 よく見ると、他の大陸と植生が違うのか、松や竹のような植物が生えており、やはりどこか日本を思わせる竜人族の島に、ソーマは不思議な感覚を抱いていた。


 約一時間ほどでタタガーナダに到着する。

 ゲイブレアと同じく街門が無いので、向こうもソーマ達にはすぐに気付き、数人の白装束の竜人がやってきた。


「何しに来た」

「ヒルコさんと話そうと思ってね。許可がいるなら聞いてきてもらえます?」


 白装束の竜人は少し悩んだようだが、先ほどのヒルコとソーマのやり取りを聞いていたようで、一人が街に戻っていった。

 二人の残った竜人は、ソーマ達を神妙な面持ちで眺めている。

 ソーマはその二人に、話しかけた。


「あの、ヒルコさんと長老のウズメさんってもしかして親子?」

「ん? ああそうだが」

「なるほどね。タケルさんとリュージとヒルコさんは幼馴染とか?」

「ああ、そうだ」


 やっぱりね、と納得するソーマの横で、マキナはよく気付いたなと感心しながら、リュージを見る。


「しっかしあたしは信仰ってのが良く分からねぇな。全員仲良くってのも無理はあるがよ、別に嫌いなヤツとは付き合わなきゃ良い話だろ。平和を望むなら戦わねぇが基本なのに、なんで戦うんだろうな」

「オレ見ながら言うんじゃねぇよ。オレだって別にアマテラには興味ねぇしゲイブロスだって崇拝してるわけじゃねぇ」

「まあ信仰心の無い俺たちに、信仰のメリットは分からないだろうね。かと言って神を信仰している人たちのどれほどが信仰の真髄を得ているのかは疑問だけど」


 そんなことを話しているうちに、先ほど街に戻った竜人がコテツを連れて戻ってきた。


「ヒルコ様に会いたいと言うのは貴様らか。まずは私が用件を聞こう」


 竜人には珍しく金髪のコテツが、愛刀の太刀を携えてソーマ達の前に立つ。


「情報提供と話し合いが用件かな。俺たちは別にゲイブロス派に協力してるわけじゃない。ただ、ちょっと世界の仕組みや神に詳しいからね、ゲイブロス派が勘違いしてる部分に関しては指摘もしたよ。誰だって争いは好まないでしょ?」

「争いは好まん。しかしアマテラ様の御意志に背くのはもっと好まんぞ」

「うん、そのアマテラの意志ってやつも確認したくてね。アマテラには会ったことないけど、海龍神も女神も魔神も神の世界ではテーブル囲んでお茶する仲だよ? この世界の神は各種族の管理を担当する同僚みたいなものってこと」


 そこまで言うと、コテツは黙ってしまった。

 にわかに信じ難い話だが、何故かソーマの言葉には嘘偽りなく言っているというような説得力があった。


「まあそんなに気構えないで、話だけでも聞いてみてよ。話を聞いて、どう考えてどう答えを出すのかはそっちの自由だからさ」

「……そうだな。ではヒルコ様に確認を取ってくるから、そこで待ってろ」


 そう言うとコテツは、また街へと戻っていった。


「そうだ、せっかくならタケルも呼んできてもらおうかな」


 ソーマはリュージの方を見ながら言う。


「……そりゃオレに呼んで来いっつーことか?」

「だってこの島、移動するのに空飛んだ方が圧倒的に早いでしょ」


 リュージは、人遣いが荒いねぇなどと文句を言いながらも、タケルもいた方が良いと思っているのかすぐに身体強化を施し飛んでいった。

 その姿を見てフィオナは小さな声で疾風の歌を、掛けてやった。


 しばらくしてコテツが戻ってきたので、ソーマ達は街へと案内された。

 ヒルコの住まいは街の中心部の、聖地跡地の近くとのことだ。

 聖地跡地の前には朱色の門があり、ソーマはそれを見て懐かしさを覚えた。


(はー、鳥居か。さすがは天照、こういう所も同じなのね)


 鳥居は人が住む世界と神の世界を分ける結界、というのが本来の役割である。

 神社が読んで字の如く『神の社』であるので、神社の前の鳥居を通ると言う行為は、神域に入るという儀式だ。

 ならば、聖地跡地の前に鳥居があってもなんら不思議ではない。


「ソーマ様、どうか致しました?」

「いや、俺が前にいた世界もアマテラを信仰する国でね。そこにもあの朱色の門……俺たちは鳥居って呼んでたけど、それがあったもんだから懐かしいなと思って」

「はー、おまえの前の世界もアマテラがいたのかよ。結構色んな世界を管理してるんだな神も。ご苦労なこった」


 そうこうしている間にヒルコの屋敷に着いた。

 木造の平屋で、他の家屋より幾分装飾的な造りになっている。

 コテツは扉をノックして開けると、ソーマ達を促した。

 中では純白の着物を着たヒルコが、ソーマ達を待っていた。


「先ほどはありがとうございました。全員回復込みで解放して頂けて、戦に行った者の家族も喜んでおりました」

「いえいえ、俺たちは別にゲイブロス派の味方ってわけじゃありませんし、喜ぶ人が多いってのは良いことですから」


 ヒルコはソーマの言葉に、物憂げな表情を浮かべた。


「それで……情報提供と話し合いがしたいとのことでしたね」

「ええ、俺たちは世界中を旅していく過程で、ちょっと世界の仕組みや神について詳しくなってきたので、その辺りの情報提供をさせてもらって、その情報を元にもう一度色々と考えてもらえればと思ってます」

「そう……ですね。考える材料が多いのは悪いことではありませんから。聞かせてください」


 ヒルコの言葉に、ソーマはタケルとリュージも来るのでそれからでお願いしますと告げる。

 二人の名前を聞いたヒルコは、また少し表情を暗くした。


(まあ肉親と幼馴染と仲違いしてまでアマテラを信仰してる上にこっち側のリーダーっぽいからな。年齢もリュージと同じくらいってことは丸眼鏡とフィオナの間くらいだし、色々思うことはあるだろうな)


 ソーマは、まだ若いリーダーのヒルコを見て、そんなことを考えていた。

 10分程経ってにリュージとタケルがやってきた。

 相変わらず目も合わせない二人だが、タケルはどこか嬉しそうだ。


「やあ。なんだかこうして三人がゆっくり顔を合わせるのは久しぶりだね。お誘い感謝する」

「では、始めましょうか。ゲイブロスの教えを守る竜人、アマテラを信仰する竜人、どちらにとっても有益かと思いますので」


 そうして、ソーマは丸眼鏡にムフフの本を出してもらい、時代を神話の時代に遡ったところから説明を始める。



いつもお読み頂きありがとうございます。

すみません、体調不良と多忙で12時更新に間に合いませんでした。

19時更新は予約投稿致します。

お昼休みなどに楽しみにして下さってる方々、すみませんでした。

楽しんで頂けたら嬉しいです。


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