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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第1章 人間国編
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第13話 ダンジョン探索


 ソーマはダンジョンの入り口で、およそ一時間ほど、風探知を使い続けていた。

 時間に関しては使用中の魔法の消費MPと自動回復のタイミングで大体把握出来るようにしてある。

 探知が進むにつれ、石で地面に書き記した地図が大きくなっていく。


(まさしく迷宮だな……。歩けば数十分掛かる道がことごとく行き止まりになってる。こりゃ徒歩で探索してたら大変だぞ)


 地図を作る途中で何体か魔物も探知した。

 雰囲気的にはかなり大きい虫と狼? 犬? のような形と言ったところか。

 さらにおおよそ30分ほど探知を進めると、一本だけかなり奥に進んで行き止まる道を見つける。


「探知漏れがなければこの道が正解かな。ちょっと休んだら行くか」


 MPの回復を待った後、ソーマは追い風を使った駆け足で最深部へと進んだ。

 最深部と思われる場所には大体10分ほどで着いた。


 体感なので分からないが時速5kmで走って10分であれば約800メートル強である。

 分かれ道と行き止まりの多さを考えれば、しらみつぶしに歩くと運が悪ければ10km以上は探索する必要があるだろう。


 行き止まりには木箱と石壁があった。


「このエリアの報酬と見るべきか、罠と見るべきか……」


 一応慎重に色々な魔法を使って中身の探知を試みるも、なにやら魔法結界? のようなものが掛けられているのか魔法の類を受け付けなかった。


「くーっ……こういう時に状態異常無効とか結界系の魔法が欲しくなるな……でも好奇心がっ!」


 ええい、ままよ! と緊張のままに木箱を開けたソーマだが、中身は期待に反して空だった。


「そういうオチかよっ!」


 ソーマはダンジョンの中で一人ノリ突っ込みをしながら、石壁に手を触れ次のエリアに転移した。



『風探知』


 暗闇の中、即座に周囲の状況の確認に移る。

 先ほどのエリアと同じような空間だが……ソーマに気付いたのか真っ先に狼のような魔物が向かってきた。


『灯篭!』


 すぐに明かりを灯し、魔物の迎撃に入る。

 姿を現した真っ白な狼は5メートルほど先で止まり、こちらの様子を伺っている。

 ソーマの背には先ほどの石壁があり、白狼とソーマの間には随分前に白骨化した人間のものであろう骨が数人分見える。


(ようやくそれっぽくなってきたな。にしても何故骨があそこに固まってる? 普通あいつにヤられるなら転移したてのここだろう。……もしかして白狼は罠か?)


 警戒や威嚇(いかく)というより様子を見ているような白狼にも妙な違和感が湧く。


「よし……ものは試しだ。礫弾!」


 直径60cmほどの大きな石つぶてをそれなりの速度で白狼に放つ。

 すると白骨の上を通り過ぎた辺りで左右の壁から、なにやら液体が飛び出した。


(あれ絶対浴びたらダメなやつだ……)


 ソーマが察した瞬間、白狼が待ってましたとばかりに飛びかかる。

 姿勢を低くして抜刀の構えを見せたソーマはタイミングを計り、一気に踏み込んだ。


『居合・エアブレイド!』


 飛びかかる白狼は風を(まと)った鋼の剣線を受け、着地と同時に上下を分かち、青色の光の粒子となって霧散(むさん)した。


「うーん、やっぱり居合斬りなら日本刀が欲しいな。これじゃただの抜刀からの水平斬りだ。にしてもダンジョンの魔物は消えるんだな」


 ソーマはぼやきながら風探知を再発動する。


(パッと探知した感じだとさっきのエリアと変わらないけど、多分罠があるんだろうな。魔物はさほど強くないけど罠とのからめ手があるなら厄介だ。まあとりあえずは道を探ろう)


 先ほどと同じく探知の風を走らせながら、ソーマは目の前にある罠の発動条件や罠のある位置の見分け方などを探っていった。



 おおよそ一時間強でエリア内の地図は出来上がる。

 罠に関しては、少なくとも入り口付近の毒液が出る場所に関しては壁に小さな穴が開いているのみだったが、それでも貴重な情報である。


 充分にMPが回復するのを待ち、ソーマは今度はゆっくりと、進む先の壁や床、天井を風探知でじっくり探ったり礫弾を放ってみながら歩みを進めた。

 そうして約40分後、幾度もの毒や酸の噴射といった罠をかいくぐり、先ほどと同じような木箱と石壁の行き止まりに着いた。


 木箱の前にはご丁寧にも、人らしき白骨が横たわっている。

 おそらく辿り着いた喜びに安堵して最後の罠に掛かってしまったのだろう。いたたまれない気持ちになりながら、ソーマは罠を礫弾で発動させ、木箱を開けた。


「やっぱり空かよ……」


 元々空だったのか、誰かが先に持って行ったのかは分からないが、もしここで白骨化した人が元々空だと知ったらと思うと尚いたたまれないな、などと思いながら、ソーマは石壁に手を触れた。


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