表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第1章 人間国編
10/346

第10話 エアブレイドと魔法の歴史


 ワイルドディアが背に受けた水球に驚き振り返った直後、全速力で駆け出すソーマ。


『突風!』


 さらに突風がソーマを後押しし、速度を上げる。


(うおおお、近くで見るとめちゃくちゃデカいな!! キリンまではないけど鹿って大きさじゃないぞ!!)


 ソーマはそんなことを思いながらワイルドディアの後ろ脚の蹴り上げに気を付け斜め後ろから近づく。


『風の精霊よ 我の剣に鋭利なる刃を与え(たま)え エアブレイド!』


 ソーマが魔法を唱えると鋼の剣は鮮やかな(みどり)色を帯びた。ワイルドディアまであと5メートル弱といったところ、ソーマはそこから跳躍してバックラーを正面に突き出し剣を上段に振りかぶる。

 ワイルドディアもソーマに気付いたのか振り返ると、咆哮を上げた。


『突風!』


 瞬間、ワイルドディア目掛けて跳躍したソーマは先ほどより遥かに強い突風によりさらに加速する。バックラーで風を受けることによって突風の影響を底上げしているのだろう。

 おおよそ人とは思えぬ速度で瞬く間に5メートルの距離を詰めたソーマは、右足を地面に下ろした瞬間、全速度と腕の振りを乗せて風の刃を(まと)った鋼の剣をワイルドディアの首めがけて振り抜いた。


 勢いのまま、ワイルドディアを通り越してゴロゴロと転がるソーマはすぐに態勢を立て直して振り返る。

 そこには首を落としたことに気付いてないのか直立するワイルドディアの身体があった。

 数秒後、ドサりと倒れたワイルドディアの先に、ダンとエルの姿が見える。


(……使えそうだなと思って練習してたけど想像以上にイケるなこれ)


――――――――――

ティロリロリン♪


ボス・ワイルドディアを倒しました。

エアブレイドの習熟度が8になりました。

――――――――――


(おお、あいつボスだったのか。たしかにデカいもんな……あんなのが標準サイズであって欲しくない)


 ソーマは血の付いた剣を水球で洗い流すと数度振って風魔法で乾かして鞘に仕舞い、ダンとエルの下に戻ると、呆気(あっけ)にとられたような顔をしたダンとエルが口を開いた。


「おいおい……あんな戦い方見たことねぇぞ……どこで習った?」

「そもそも私も……エアブレイド? だっけ、そんな魔法見たことないわよ」


 二人が驚いているなか、得意げなソーマ。


「一人の時間で色々練習してたんです、せっかく魔法と剣が使えるならなんかシナジーを生めないかなと思って」

「いやにしてもよ、魔法ってそんなに簡単に作れるもんなのか?」


 ダンがエルに説明を求める。


「えっと……王国でも魔法研究機関で魔法開発みたいなものはしてるし、実際に新たな魔法を開発するのってそこまで難しいわけじゃないんだけど……そもそも魔法開発自体、昔からされていることだし多少アレンジすることはあっても新しく作った魔法が既存の魔法より使えるってことが少ないから……」

「じゃあ魔法を作るのはそんなに難しいことじゃないんだな」

「まあ、専門家にとっては」


 エルがそう付け加える。

 ソーマはそれを聞いて、ワクワクした。


(なるほど、やっぱり魔法はイメージを具現化出来るかなり柔軟性の高いものなんだな。ゲームと違って固定の魔法を覚えていくわけではないと。こりゃあ使いようによっては可能性が無限大だぞ)


「でも……たしかに魔法剣士って数自体が少ない職業だし、ほとんどの場合、魔法は魔術師以下の適正しかないから、簡単な低位魔法を補助的に使いながら戦う剣士って印象で、魔法剣士専用の魔法って聞いたことないわね」

「なるほど、剣も魔法もずば抜けてるソーマだから出来る技ってわけか」


 二人は何やら先ほどのソーマの戦闘について考察しているようだった。


――ギュルルルルル

 ソーマのお腹がなる。


「あのー……とりあえずウサギ食べそびれちゃったんで、まず腹ごしらえしませんか?」

「お、おう、そうだな」

「それもそうね」


 三人はもう一度、焚火を囲んで昼食にした。

 ウサギ肉は淡白で柔らかい鶏肉のような味で、若干の獣臭さと塩加減がクセになるような独特な味だった。


(これ結構イケるな……酒のつまみなんかには最高なんじゃないか)


「ウサギ食うと酒が飲みたくなるよな」

「分かるー」


(あ、やっぱりそうなのね)


 ソーマはそんなことを思いながら、エルに魔法について尋ねる。


「エルさん、魔法における詠唱ってどんな役割があるんですか?」

「ん? そもそも魔法ってMP使うでしょ、MPって精霊から授かっている力って言われていて、それを効果的に使うためのものが詠唱よ」


(ああ、だからきちんと詠唱すると効果が上がるんだな。逆に省略したり無詠唱でも使えるってことは、精霊の力を使うのに詠唱が必須というわけではない。となると、もしかしたら精霊の力さえ常に引き出せるなら詠唱は不要ってことかもしれないな)


「じゃあイメージが魔法の源で、詠唱はそれを効率的に現象化させる補助的なもの、ということですか?」

「そうね、厳密にはMPを用いてイメージ・意志を具現化させるものって言うのが、最近の魔法研究家界隈ではその説が有力かしら。昔は魔法そのものも精霊から賜ったものって思われていたんだけど、新たに魔法が開発されていくと、魔法そのものは使い手の想像に()るものって認識に変わって来たわ」


(なるほど、MPを用いてイメージ・意志を具現化させるか。にしてもなんだか魔法の近代化って感じだな)


「ちなみにそれってどれくらい前からその説が有力になってきたんですか?」

「うーん、魔法研究家の間ではここ50年くらいかしらね、一般的に広く浸透し始めてからは30年も経ってないから、まだまだ魔法も精霊からの賜りものと思ってる人は少なくないと思う」

「じゃあここ50年ほどで新たな魔法はかなり生まれたんですか?」

「そうねー、局所的に使い勝手が良い魔法や生活魔法が生まれたっていう面では結構革命的だったかも。でも元々色んな魔法が世の中にはあったし、そもそも使いこなせる人って多くないから、恩恵を受けている人は一部だと思うわよ」


(たしかに、属性一つ持ってるだけで3割、二つで100人に1人だもんな。さらにそこから魔術師適性が高くある程度魔法を使いこなせて、魔法を作るイメージ力に長けた人、となるとかなり限られてくる気がする)


「そうなんですね、ありがとうございます。今度出来るだけ沢山の魔法を教えて欲しいです。使えるかどうかは分かりませんけど、どんな魔法があるか知るだけでも今後に役立ちそうですし」

「……まあ、私で良ければ」


 エルは若干めんどくさそうな顔をしたが、ダンに即座に「命の恩人にそりゃないだろ」と言われると「うぐぐ……」と言いながら「いつでも聞いてね」と言ってくれた。



当分の間は毎日1、2話更新していきます!

誤字報告ありがとうございました!


※二度目の誤字報告ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ