1章 鹿と馬 5
厳さんに勝利した俺、というより馬柳は、すでにリング状態に戻っていた。どうやら、覚醒というのは、動武自体の力をかなり使うようで、疲れたそうだ。
「鹿、よければ、ステータスをみせてくれねぇか?俺のも見せてやるからよ。」
「あ、いいですよ。どうすればいいですか?」
「神機の横にスイッチがあるだろ?そこ押してみろ。」
俺は言われた通りにスイッチを押す。すると、ステータスの書かれた映像が浮かびあがる。
辰野 鹿 L05
従者 馬柳 槍 Ⅳ
攻撃 16【+35】
防御 14【+29】
速度 20【+56】
魔法 5【+34】
スキル
馬術
風魔法
周辺察知
「なんか能力が上がってる・・・。」
「適正者と戦ったり、魔物を倒したりするとレベルがあがるんだよ。普通は適正者じゃないとレベルは上がらないんだ。あと、適正者同士が戦ってレベルが上がるのは、低レベルの間だけだがな。そのために新人係の俺みたいのがいるんだ。本来は俺がちょこっと底上げした後に、迷宮に潜ってもらうんだが、ランクⅣなら大丈夫かと思って始めはやり合うつもりはなかったんだが、せっかくだしと思ってやっちまったな。」
厳さんは笑いながら話す。たいした実力もなくて野垂れ死んじまったらどうするつもりだったんだ・・・。
「おっと、俺のステータスも見せないと失礼だな。」
山野 厳五郎 L27
従者 熱狼 斧 Ⅱ
攻撃 35【+19】
防御 27【+09】
速度 12【+17】
魔法 10【+14】
スキル
斧撃
火魔法
俺の能力と比較しても、かなり素の能力は厳さんの方が高かった。動武の補正能力がかなり違うため、俺は厳さんに勝てただけだ。
「やっぱ動武のランクでかなり補正が違うんだな。」
「厳、俺じゃ満足できなくなったか?」
「そういうわけじゃねぇよ熱狼。俺はお前が相方でよかったと思ってるよ。とりあえず、あいさつしとけ。」
厳さんの動武が喋っているようだ。すると、真っ赤な巨大な狼が現れる。
「熱狼だ。よろしく頼む。」
「鹿っていいます。こちらこそよろしく。」
「馬柳だ。」
「馬柳、すばらしい能力だった。ぜひまた戦おう。」
「熱狼よ。あなたも最後の火球は素晴らしい攻撃だった。鍛錬すればあなたたちもかなりの実力者となるだろう。また頼む。」
「鹿、これからどうする?」
「僕たちは迷宮に入ってみたいと思っています。」
「そうか。よかったら、俺達も同行させてくれないか?俺も熱狼も、まだまだ強くなれそうだ。」
「新人のほうはいいんですか?」
「今日は休んでいるが、本当は新人受付嬢がいるんだ。そいつが休んでいるときの代理兼教育係だからな。最近は新しい適正者もあんまりこないし、手が空いているときは同行させてもらいたい。いつもというわけじゃなくて構わないがな。」
「大丈夫ですよ。よろしくお願いします。」
「今日からもう入るのか?」
「いえ、今日はとりあえず家に帰りたいと思います。」
「じゃあ神機に登録しておこう。連絡をとろう。」
俺は厳さんと連絡先を交換し、家に帰った。今日はつかれちゃったなぁ・・・。