第7話「長」
政宗は真っ直ぐ道をただひたすら進むと樹齢何百年もの木々に囲まれた村に着いた
村の中心にはこの村の守り神の様に立っている大木があった
「なんと立派な」
そう言って政宗はその立派な大木を腕を組ながら見ていた
「珍しいのぉ、客人か」
そこには老人が立っていた、そして話を続けた
「ここはよそ者は滅多に入れないノームの国なのじゃがな、客人、ただ者ではないな」
老人の目がギロリと光った
「試してみるか?」
政宗は刀に手を置いた
「いやいや、やめとくのぉ、客人の様な手練れと戦ってはこの老体、一瞬で朽ちてしまいます」
老人は大木を見ながら言った
確かに老人からは殺気は感じられなかった
政宗は抜こうとした刀から手を放した
「して、客人、ただの観光でも森に迷うた迷い人でもあるまい、いかような目的があってここへ参られた?」
「我が国、三日月とこのノーム国との同盟を結ぼうと参った、ここの族長にお目通り願いたい」
「ほぉ、その話はわしの家で話そうか」
「そうか、やはりお主が族長であったか」
「政宗、気づいてたの?」
「あぁ人の長ともあろう者はそれ相応の風格がにじみ出るものだからな」
「そうなんだ」
ジャンヌがきょとんとした顔で見ていた
「やはり客人、ただ者ではなかったみたいじゃのぉ、そうじゃわしがこのノーム国の族長ノームじゃ」
そう言ってノームの館に案内された
「何か懐かしさを感じるの」
ノームの館を見てそう呟いた
「前世の政宗の家に似ているの?」
聞こえていたのかジャンヌが訪ねてきた
「いや、似ては無いがこの木造の佇まいはこの世界ではないのかと思ってなぁ、どこか久しいものを感じたのだ」
「そうなんだ、良かったね!」
そんな話をしていると広間にて待たせていたノームが現れた
「すまんのぉ、客人を待たせてしまった」
「いや、よい、良い佇まいを見せて貰った」
「それは良かった、して同盟の話とはどういった内容なのじゃ?」
「魔族との戦いに備えた同盟を結びたく参った」
それを聞くとノームは少し哀しそうな表情で言った
「すまんが同盟は無理じゃ」
「え?どうして?」
「エルフ族は戦いを望まない一族なのじゃ」
「どうするの?政宗?」
「よい、この国は諦めよう」
「いいの?」
「あぁ、戦いたくない者達を無理強いしても戦に死体の山を築くだけ、ならいっそ、同盟などせぬ方がよいのだよ」
「政宗…」
「このノームこの様な素晴らしい方を知らんかった、できればそなたに手を貸したかったが本当にすまんかった」
「気にするでない、長たるもの民を守ら無くてはならぬ、そのためには自分を意思を殺し決断をせなければならぬものさ、俺も王として心えてる事」
「ありがとう、またこの国へ来てくだされ」
「あぁ、今度来るときは土産でも持って来よう」
ノームと政宗は互いに敬意を評し分かりあえた気がした
政宗の話をしてノームは時折涙を浮かべ笑っていたのであった
「同盟出来なくて残念だったね政宗」
帰り道ジャンヌがそう言った
「そうでもないさ、ノームと話せて俺は良かったと思っている」
「本当に政宗は心が広いのね」
「さぁ、それはどうかな」
そう言って政宗は遠くの景色を眺めた
「歌?」
どこからともなく歌が聞こえてきた
「今まで聞いた事の無い美しい歌声だな」
「ちょっと行ってみよう!」
ジャンヌはそう言うと歌が聞こえる方へ走って行った
政宗もついて行った
そこには湖があった
とても澄んでいて水が無いかと思うぐらい透明であった
そして湖の中心には一人のエルフの女性が立っていた
「あなたを待っていました」
突然歌をやめて政宗を見てエルフはそう言った
「俺を?」
「はい、私の父ノームとあそこまで分かりあえた人は見たことありませんでした、それにこの国にきたエルフ以外の人達も初めてでとても興味が沸いたので待っていたのです」
「そうか、俺もお主の父とは楽しく話せて良かったぜ、それにお主の歌も素晴らしいものだな」
「ありがとうございます、私の名前はディーヴァです、政宗様」
ディーヴァは満面の笑みでこちらを見た
長い髪に緑色の大きな瞳、耳は特徴的で少し上に尖っていた
「仲が良くて何よりですね!」
そう言ってジャンヌは少しふてくされていた
「どうしたのだ、ジャンヌ」
「政宗なんて知らない!」
「ふふふ、面白い人達ね」
そんなやり取りをしているとノームの国があった方の森が燃えていた
「そ、そんな…」
ディーヴァが青ざめた表情で見ていた
政宗はすぐに走ってノームの国へ向かった
「待って政宗!」
その後をジャンヌとディーヴァがついて行った
一体ノームの村で何があったのだ?
政宗は足早にノームの村に引き返したのであった