第16話「愛する国民」
「お前達また戻って来たのか?」
ゴーレムの国の門番達がまた政宗達を見るなり警戒していた
「いやいや、今回は先とは状況がうって変わって招かれたのだよそこのミルと呼ばれる娘に」
政宗は堂々とした姿で答えた
そして門番達はミルを見て言った
「ミルさん、兵隊長でもあろうあなたがどうしてこのような余所者を招き入れるのですか?」
「私達には時間が無いんだ!それに今こうしている間もサバ様が危ないんだ、早く門を開けて付いてきてくれ!」
ミルの鬼気迫る真剣な表情に門番達は非常事態を察したのかミルに従った
急いでミルの城に向かう道中
「どうしてこんなところに余所者がいるんだ」
ゴーレムの国に入った政宗達を見る度に国民達は口々にそう言っていた
「すまない、政宗、気にしないでくれ」
ミルは政宗に申し訳なさそうに言った
「この国の人達の他種族への恐怖や不信感は拭えないところまできているんだ、そして今回の件、ミノタウロス達の裏切りや秘薬の略奪の計画を知ると更にその思いは根強いものとなるだろう」
「ミ、ミノタウロス達が裏切ったのですか?」
付いてきた門番達は驚いた表情をしていた
「そうなんだ、王国は最早ミノタウロス達に占領されているはずだ、私はサバ様に助けられこの政宗達に救われて帰って来たのだ」
「そ、そんな…」
明らか門番達は同様していた
ミルの顔も王を心配するあまり曇っていた
(士気が下がってきているな、仕方ないここは俺がどうにかしてやるか)
政宗はこの状況を打開するため立ち止まった
「政宗様、どうされたのです?」
最初にディーヴァが気付き立ち止まった
ミル達もその後に気付き政宗を見ながら止まった
「おい、ミルと門番達、この俺がいるんだそんな絶望的な顔をするじゃねぇよ」
「あなたに何が分かるんだ!王が一刻も早くお助けせねば命をとられるやもしれないのだぞ?」
「じゃあ、その王を助けたらお前達のその曇りきった顔も晴れるのか?」
「そんな、簡単げに言うな!ミノタウロスは戦闘に優れた種族なんだぞ?行ったところで王を助けるどころか勝てるかも分からない相手なんだぞ!」
「俺なら勝てるさ、なぁディーヴァ」
政宗は余裕の表情を見せディーヴァに尋ねた
「はい!政宗様はとてもお強いので大丈夫です!」
ミル達は二人の落ち着いた表情を見て困惑していた
「まあ、ゆっくり来いよ、俺がその王様を救ってやるから」
「え、どういう意味だ」
そう言葉を返した時には政宗の姿はそこには無かった
「あれ、政宗は?」
「おぉ、どこへ行ったのだ?」
「政宗様は王様を救いに行かれましたよ」
「あんな一瞬で?本当に?」
「はい、政宗様は嘘をおっしゃいませんから」
サバの城にて
「ぐぅもぉぉぉぉう!秘薬は誰が持っているのかもぉう!早く言えもぉう!」
「言えぬな、この命を変えてもこのサバ同胞は売らぬ」
「強情なやつもぉう!」
そう言ってミノタウロスは縛りつけたサバを殴り続けた
サバの肉体は石で出来ていた、しかしその体には明らかに傷をおい、そして砕けていた
「いくらやっても無駄だ、たとえこの身が砕けようとも王は民を売らぬ、貴様らに息子サブが殺された以上もうこのサバに未練などない、殺すのなら殺せ!」
ミノタウロス達は顔を見渡せた
「どうするもぉう?」
「仕方ない、望み通り殺してやるかもぉう、そして秘薬を持ってるかどうか一人ずつゴーレム達を殺していくしかないもぉう」
「よせ!民には手を出すな!殺すならワシを殺せ!」
「お前かアタリなら殺すのはお前だけにしてやるぐぅもよ!」
そう言って大きな木槌をミノタウロスは振りかぶった
サバは叫んだ
「国民を殺したらワシはお前らを許さん!」
「許さなくてもいいぐぅもよ、お前は今から死ぬからぐぅもぉぉぉぉう!」
そうしてミノタウロスは木槌を振り落としたのであった
(頼む、誰でもいい、ワシの愛する国民を救ってくれ…)
サバがそう願った瞬間、王座の扉が壊され飛び散ったとの同時に木槌も粉々になりぶっ飛んだ
そしてサバの前に一人の鎧を全身に纏った男が立っていた
「お前はだれぐぅもか!?いつの間に現れたぐぅもぉぉぉぉう!?」
「俺か?俺は独眼竜伊達政宗だ!この国を救いに来た!」
「お前の様なひょろひょろの人間に何ができるぐぅもぉう?笑わせるなぐぅもぉぉぉぉう!」
そう言ってミノタウロスは政宗に殴りかかった
しかし政宗の右の眼は光輝き、そして殴りかかったミノタウロスの腕は一瞬で飛ばされ灰となった
政宗の体はビリビリという音が聞こえていた
「ぐぅもぉぉぉぉう!」
ミノタウロスは無くなった腕を抑え悲痛の叫びを上げた
「我、独眼竜伊達政宗、いざ参る!」
政宗そう叫びながら王の間にいた迫りくるミノタウロス達に向かっていった