ハーレムでぐうたら 井戸編
とある街にいた。
とある街で。ひと気のない狭い裏路地の、陰に隠れ、壁に背をつけながら。
ぐうたらしながら。
俺は。
こんなことを考えていた。
もしも俺が、魅力∞をほんの少しだけ解放したら。
100未満に抑えていた魅力∞をほんの少しだけ。
解放したら。
周りの女の目は全員、俺にそそがれるのだろうか。
俺に対する反応は、やはり変わるのだろうか。
話し掛けてくるのだろうか。
遠目に見つめるだけだろうか。
恋は盲目という言葉に偽りはないのだろうか。
ほんの少しだけだ。
もしも俺が魅力∞を全解放した日には。
世界中の人間と魔物が、俺を、殺しに来るに違いない。
俺が召喚された日に、惨劇は起きた。
だからそれだけはやらないのだけど。
ほんの少しだけなら。
やってもいいんじゃないかと。
ぐうたらなある日。そんなぐうたらなことを。
考えていたんだ。
今日はそれをやってみたいと思う。
俺は念じる。
ステータス『魅力∞』『女』に対してほんの少しだけ『解放』。
俺は何も変わらない。当然だ。魅力は物ではないし、変わるのは相手の心だ。
俺は裏路地から出て、表通りを歩き始める。
両脇はレンガの家々でひしめいている。
当然、街女、街少女、が慎ましやかな服を着て町中を歩いている。
子供連れの女が俺に気づく。
「ぁ・・・」
尻目に、そして、俺が見返すと、視線を子供に戻す。
「・・・」
子供連れの女はそのまま行ってしまった。
「んー・・・」
こんなものか。
ほんの少しでは。
こんなものなのだろうか。
期待は少し薄れる。
『ハーレム』にはほど遠い魅力なのか。
そのまま表通りを歩いていると、女が集まっているレンガ造りの井戸があった。
3人が井戸端会議をしている。話し込んでいる。楽しそうに。慎ましく。家庭的に。
俺はその近くの壁に、少し遠目に背をかける。
女達は一瞬こちらに視線を向けたが、すぐに自分達の話に戻った。
みな20~25歳ほどで、若く、独身。だがその中に、1人俺と同い年の、17歳の可愛い美人がいる。
女達はおしゃべりしているが、時々、こちらを気にする。
美人もその例外ではなく、こちらを、気にする。
しばらくいることにする。
少しして、俺の話題が上がる。
そして俺が呼ばれる。
「おにいさーん。ちょっとこっちおいでよ。お姉さん達と一緒にお話しないかい」
姉御肌、巨乳Aに呼ばれる。
俺は行く。
俺の腕が巨乳に挟まれる。弾力に包まれる。体格は豊か。母性本能が高い。黒髪長髪。
「さっきお兄さんのことをみんなで話していたのよ。格好いいねって。ふふ」
肩に頬を乗せる。上機嫌。
「ほう」
俺は言う。
「ずるーいー。姉さんばっかりー。ねえ、貴方見かけない顔ね。どこから来たの?」
童顔が俺に触れそうな距離に接近する。童顔、低身長のわりに胸はCほど。ツインテール。
「俺か? そうだな。・・・君の理想郷から」
「ぇ・・・」
童顔Aが言葉を失う。
痛い発言。だったかも。
どこから来たかなんて覚えていない。
「ぷっ・・・もうやだーお兄さんったらー。変なこと言わないでよー!」
腹を抱えて。笑い出す。
演技かも。
と思った。
頬を上気させている。
目の端に涙を浮かべる。
「お兄さん。面白いんだね」
しんみりと、素朴に。
言われる。
「可愛い」
巨乳A、巨乳お姉さんが甘い目で見上げる。発情している。
「もうー! 抜け駆けはやめてよー!!」
「駄目よ。私はもう恋してしまったのだから。見ず知らずの。この方に」
ふー、と耳に甘く息を吹きかけられる。
童顔Aが巨乳Aを引きはがしにかかる。でも離れない。
「お兄さん。私と今度、デートしてくださらない?」
「もー! 勝手に話進めないでよー!」
「たまにはいいでしょ。私は父さんと母さんの代わりにあんた達育てるのに必死で、ずーっと恋なんて出来なかったんだから」
巨乳Aが鬱憤を晴らすかのように言う。
「うううううううううう!!!!!!! それとこれとは、別よー!!」
童顔Aが涙をためる。
2人の口論を遠目に、井戸の反対側から見つめる女がもう1人。
いる。
その女は、口元をほころばせ、じっと2人の会話を、何もせず聞いている。ショートボブの、Dカップ。
俺と目が合うと、
「ぁ・・・」
頬を染め、視線を落とす。
これが、イケメンの力。
これが魔性の魅力。
イケメンと、イケメンじゃないやつの、差。
イケメン側とイケメンじゃない側。
それを味わった。
次はブサイク側。
俺はそれをやってみようと。
ぐうたらしてからやってみようと。
今度思った。
いや。
やっぱりやめようかな。