可愛そうな子とぐうたら
なんで私だけ親がいないの。
なんで私だけ片目が見えないの。
なんで私だけこんな不幸な目にあうの。
ぜんぶ私が悪いの。
早く死にたいのに、どうして死ねないの。
どうしてゴミを漁らなくちゃいけないの。
どうして、
どうして、
どうして、
どうして世界が灰色なの。
・・・生まれてきてごめんなさい。
華やかな街。活気ある市場。
街の中心にある噴水広場の前でレベル1の街子供達が集まっている。
ぼろ布を来た少女を囲んでいる。
少女はうつむいている。
「やっちまえ!」
レベル1の男の街子供が叫ぶ。
それと同時に少女を囲む男の街子供、男の街子供、女の街子供が、後ろ手に隠し持っていた水いっぱいのバケツを順番にぶちまけた。
「・・・」
ぼさぼさの肩まで伸びた薄い金髪が、異臭のこびりついたぼろ布の服が、びしょ濡れになる。
少女は何も言い返さない。
少女はうつむいている。
街子供達は大笑いしている。
「父ちゃんが言ってたぞ。お前は呪いの子だって。片目がないのがその証拠だって」
「そうだそうだ! 気持ち悪いんだよ!」
「そうよ!」
周りの人々は見て見ぬふりをしている。
「どうしてまだ生きてられるんだよ!」
ボス子供が言う。
「呪いの子ー」
「呪いの子ー」
小猿子供が同調する。
小猿子供が少女の細い足を蹴る。
「・・・」
少女はうつむいている。
ボス子供が気づく。
「ああそうか! 俺たちの家のゴミ箱を漁っているから生きられるんだ!」
ボス子供はぎゃははと大笑いする。
「そうだそうだ! 気持ち悪いんだよ!」
「呪いの子のくせに生意気ね」
小猿子供が同調する。
「なんか言えよ!」
ボス子供が少女の腹を蹴る。少女がうずくまる。
「いたい・・・」
ボス子供は大笑いする。
「いたいー、だって! だっさ! ギャハハ」
「いたいーいたいー」
「もっと苦しみなさいよ。みんなあんたのせいでくさくて困ってるんだから」
「そうだそうだ! 気持ち悪いんだよ!」
「くっせー! みんなもう行こうぜ! 俺たちまでくさくなっちまうぜ。ぎゃはは!」
「行こう行こう!」
「いじめはよせ!」
街子供達は去った。
広場を通り過ぎる人々は誰もこっちを見ない。
うずくまる少女をかばう俺の勇姿を。
誰もみない。
今更。
「いや見ろよ!」
確かに俺はぐうたらしながら子供達のいじめを見ていただけだ。
だが、俺だけは見ていたのだ。
それだけはわかってほしい。




