美人騎士とぐうたら
強さ、気高さを兼ね備える彼女。
リアナ・アルフォードは今日も街へ繰り出す。
下流階級から騎士へと成り上がり、美人騎士として知られる彼女。
その周りには、求愛する男達が後を絶たない。
リアナ・アルフォードは清く美しい。
そして子供達と戯れる優しさを持っている。
誰もが憧れる存在。
そんな彼女。
そんな彼女にも、隠していることが1つだけある。
絶対に知られたくない秘密がある。
ささいなことだ。
だが、彼女にとってはどうしても表沙汰にしたくない。
そんな。
ささいな秘密があった。
「くまちゃんパンツ」
王都。繁栄する市場。
その日、リアナは耳を疑うような、聞き捨てならない男の発言を看過することが出来なかった。
「なっ・・・」
軽装のリアナは、露出する肌とスカートの裾の間を咄嗟に押さえる。
だが、中には丈の短い、厚手のスパッツを履いている。
見えるわけがないのだ。
「おい。貴様、今なにか言ったか?」
誰に対して言っているのか。それを明らかにしたい。
その一心で。見ず知らずの、路傍でのんべんだらりとしている男に問いかける。
喧噪の中、それは敏感にリアナの耳を捉える。
「くまちゃんパンツ。を履いているだろう」
俺が。
ぐうたら言った。
「はひっ・・・!!?」
リアナは一歩後ずさる。
こいつ。透視する能力でもあるのか・・・!?
あり得ない。
そんな能力、あるはずがない。
リアナは悟られぬよう、気丈に振る舞う。
「は・・・はっ。面白いことを言う青年だな。そんな子供っぽいパンツを履いているように見えるか? この私が」
リアナはドキドキする心臓を押さえ、透き通る長い金髪を顔の横で払う。
「でも、履いてるし」
俺は言う。
「ひぁ!?」
血の気が引く。
リアナは目の前が真っ暗になる。
周りの目がリアナに向けられる。
「おおおおい貴様! ちょっとこっち来い!!」
やばい。
そう思ったリアナは、ひとまずひと気のない裏路地に俺を力任せに引きずった。
路地裏でリアナは問い詰める。
「どうしてわわわ私の秘密を知っている!! 誰にも言ったことないのだぞ!! 何か理由があるなら答えよっ!」
「間違えた」
俺はごまかす。
美人騎士とくまちゃんパンツのギャップに思わず声が出てしまった。
本当に間違えた。
「ま、間違えただと!? 何をどう間違えたらそうなる!!」
リアナは混乱する。
「くそっ! 今まで誰にも気づかれたことなどなかったのに・・・! よりにもよって、こんなどこの馬の骨ともわからない、見たことも話したこともない、この男に私の秘密がバレるとは・・・っ!!」
うつむき、路地裏の壁をガンガン打ち付ける。
歯がみする。
ひとしきりぼやいた後、リアナはうつむいたまま俺に向き直る。
「・・・どうしたらいい」
リアナは言う。
「なにをだ」
俺は言う。
「どうしたら私の秘密を忘れてくれると聞いている!」
顔を上げる。迫真の美貌が間近に迫る。
「ごめん」
俺は言う。
顔の下には軽装に包まれたDほどのカップ。
「何がごめんだ!! ごめんで済む問題か!」
リアナは涙に暮れる。
「これは私にとって死活問題だ!」
異世界最強の俺は、口を滑らせて女を泣かせました。
「まじごめん」