第二話
数時間後…
「うっ……な…これって…」
気を失っていたフードの少女、エフは目を覚ました。と、エフは目覚めてすぐに自分の状態の変化に気がついた。体を拘束されている。動けない。
「気がついたようね」
と、隣には自分が戦った青羽翼が座っていた。だが、自分が戦った時よりボロボロになっていた。
「悪いけど拘束させてもらったわ。目覚めてまた襲ってこないようにね」
「どうして…殺さないの?それにあなた…ボロボロ…」
エフは尋ねた。
「逆に聞くけどあなた、私を殺す気がなかったでしょう?いや、殺さないようにしていたでしょう?戦ってて思ったのだけど、あなたの意識が感じられなかった。それを確かめる為に、あなたを生かしたのだけど…」
「……………」
「何か訳ありのようね」
「私は…」
エフは静かに語り出した。
エフは傭兵育成学園『ヘブンズエデン』の卒業生だった。だが、卒業後は特に職に就く訳でもなく、バウンディハンターのような賞金稼ぎをして暮らしていた。
だがある日、賞金首を探そうとしていた時、突然何者かが襲ってきてエフは連れ拐われてしまったのだ。
「私の他にもヘブンズエデンの卒業生や異能の使い手とかが囚われていて、そこで私たちは何かの実験のモルモットされていた。確か、アンチジャスティスとかいう組織、とかだったような…」
(アンチジャスティス…やはり…)
エフは仲間と共に施設からの脱出を企てた。だが施設の人間に計画がバレてしまい、エフは一人捕らわれ、洗脳を施されてしまった。
「そして私は仲間を…仲間を…くっ…!」
「………………」
翼は無言で聞き続けた。
計画を企てた仲間たち全員は皆殺しにした。囚われていた仲間たちを殺害した後、研究者は施設を放棄した。用済みとなったエフは、施設の警護という名目で捨てられた。必要のない警護を。そして、今に至る。洗脳が解けかかっていたお陰か、翼と戦う際に抵抗が出来たらしい。
「なるほど…で、私と戦ったということね」
「そういうことになる。だから私を殺して。私は…エルを…仲間たちを…」
エフは自らを殺して罰する事を求めた。だが翼は首を横に振った。
「とても仲間思いなのね、あなたは。だからあなたは私を殺さないように必死に抵抗していた。そんなあなたを、私は殺すことは出来ないわ。だから、自分を責めたりしないで。そのフィリアって子も、きっとあなたの行いを責めたりしないわ。悪いのは全部あなたを操っていた人達だから」
「あっ…う…うん…」
翼はエフの頭を優しく撫でた。エフの目から、涙がこぼれた。
「泣いてるところごめんなさい。一つ、教えてほしいの。あなたのいた研究所の主任が誰だか知っているかしら?知っていたら教えてほしいのだけれど」
「えっ…確か…センラ・スカーレット、だったはず……」
「センラ…」
センラ。その名前を聞いて翼の目付きご変わった。
「ねぇあなた。悪いけれど、一緒に着いてきてもらうわ。どうやらあなたは私の追っている組織と繋がりがあるみたいだから」
「…分かった。でも一つだけお願い。私も…あいつを追わせて。仲間の…仇を取りたい…」
「…それについては協会に着いてからね…」
翼はエフを背負って協会に戻ることにした。
「忘れてた。あなたの名前は?」
「……エフ…」
「そう。私は青羽 翼。よろしく」
互いの名前を教えて。
「ところでどうしてボロボロで帰ってきてたの?」
「……施設に行ったら罠が仕掛けられてた」
エフ…イメージCV:新田恵海
青羽 翼…イメージCV:井口裕香