第一話
討魔協会。ここは古くから魔物を退治し、世界の平穏と均衡を崩す者たちからの脅威から世界を守護する組織。過去に二大勢力出会ったヴァルハラとデザイアが引き起こした『第三次世界対戦』での戦いにも世界を守護する為に戦った。
これは、その討魔協会の三大士族『青羽家』に属する女性『青羽 翼』と一人の少女の、後に起こる巨大な災禍との戦いの前日憚である……
第三次大戦から四年後…
アフリカのとあるジャングル。様々な動物や虫達が生息している森のなかに、一人の茶髪のサイドテールの日本人がいた。
「…そろそろ敵の領域に入りそうね」
彼女の名は青羽 翼。討魔協会に所属する三大士族『青羽家』の出の中級討魔士である。
彼女がこのジャングルに来たのは理由がある。任務だ。討魔協会は怨霊の怪人『リビドン』などの邪悪な存在の討伐、平和に害する存在の排除、協会への勧誘など様々な任務が存在する。今回の任務は、ジャングルの奥地にある施設で捕らえられている科学者の救出である。
「………………」
鳥のさえずり。風になびく木々の音。五感でそれらを感じながら翼は前に進む。慎重に。
シュッ…!
「っ⁉」
突然翼の足元に何が飛んできた。それは、矢だった。
「罠?いや、この矢は…」
しかもただの矢ではなかった。漆黒に輝く光の矢だった。しばらくして、矢は消滅した。翼は察した。
(異能の使い手…!)
翼は背中に背負っていた弓矢のような武器『スピリアロー』を取りだし、いつでも攻撃できるよう構えた。
「……………」
シュッ…!
「ふん…!」
今度は別の方向から飛んできた。翼は飛んできた矢を、自分の矢で相殺させた。通常の矢では先程の攻撃は相殺することは出来ない。相手が異能ならこちらも異能を。翼も異能…霊力の使い手で、今射った矢は霊力で出来た矢だった為、相殺することができた。
(さて…敵もこちらが異能であることがバレたし、対異能の警戒してくるはず…)
と思っていると、またもや矢が飛んできた。しかも今度は連続で、しかも数発射ってきた。数が数なので今度は射たずに回避する翼。と、翼は何かを感じた。
(何…?この違和感は…)
確かに敵の攻撃は激しくなった。だが、激しいはずなのに、激しく感じない。
(これは多分…)
と、あることを思った翼は、回避を止め、敵の攻撃を射ち弾く態勢に変えた。激しい攻撃をものともしないように翼は射ち弾いた。
「無駄ですよ!今のあなたの攻撃は全部射ち弾けます!大人しく出てきたらどうです?」
ジャングルに隠れる敵に向かってそう叫ぶと、意外にもあっさりと攻撃が止まった。自分の攻撃がこれ以上無駄に終わると理解したのか。
「…………………」
森の奥から黒い閃光が走ったと思ったら、木の陰からフードを被った虚ろな瞳の少女が現れた。彼女が先程まで攻撃してきた敵の正体だろう。
「ずいぶん素直な方ですね。そういうところは誉めておきましょう」
「…………………」
少し煽ってみるも、フードを被った少女は無言のままでいる。と、少女の両手から漆黒の光の刀が現れた。
「剣は弟の方が得意だけど…仕方がない」
翼は持っていたスピリアローに霊力を込めた。すると弓の部分が刃になったスピリアローブレードへ変化した。翼はブレードを構えた。
「………っ‼!」
少女は翼に向かって飛びかかってくる。翼は難なくその一撃を受け止めた。
「…………」
「……っ!」
と、つばぜり合いをする間もなく少女は黒い閃光となって消えた。そして、翼の背後へと回り込んでいた。木の陰から現れる前の閃光の正体はどうやらこれらしい。
「はっ!」
背後からの攻撃も受け止める翼。霊力探知で、先読みしていたので、防ぐことが出来た。少女は再び閃光化して様々な方向から翼に向かっていった。
「はっ!やぁっ!」
探知しているため、少女の攻撃を何度も防ぐ翼。だがここでも感じる。ある違和感を。
(終わらせるか…)
そして、ある結論に至り、翼は勝負を決めにいった。
「はっ‼」
「くっ…!」
一瞬の隙をついて翼は少女を蹴り飛ばした。
「うっ…っ⁉」
距離を離された少女が翼の方を見ると、翼はブレードを解除してスピリアローに戻してこちらを狙っていた。弓矢の先には炎が纏われていた。
「青羽流討魔戦術、鳳閃火」
翼は討魔戦術の一つである鳳閃火という技を放つ。少女に向かっていった炎の矢は当たる寸前に、まるで花火のように爆発した。
「かはっ…‼ぐっ…」
爆発の影響で吹き飛ばされた少女は樹に衝突して倒れた。
「……………」
倒れた少女に近づき、スピリアローを構えた。狙いを少女の頭に狙いを定めて、翼は弓引いた。霊力で形成された矢が少女を 射抜こうとした。が、
「………止めた」
と、突然翼は少女を殺すのを止めた。そしてそのまま少女に背を向け、研究所へと向かおうとした。
と
「まっ……て……」
翼の足を少女は握って止めた。
「…悪いわね。今はあなたに構ってられるところじゃないの。じゃあ」
弱々しく握っていた手を振りほどき、翼は研究所へと向かっていった。
「どう……して…」
少女は翼に手を差しのべるが、そのまま意識をなくした。
某日。
討魔協会特別収容所『箱庭』
「ほう…それが青羽翼との出会いか…」
「…………そう…」
協会が所有している特殊な罪人を収容する施設、通称『箱庭』。その一室。フードを被った少女に透明なガラス壁で隔てた檻の向こう側に青紫の髪の少女、のような女性が寝転がりながら言った。
「なるほど…面白い出会いだ。それがお前が討魔士となった要因であり…」
「あなたが今檻のなかにいる原因の一つ」
と、青紫色の少女は笑った。
「はっはっは。そうだな。あの時お前を殺しておけば、私は捕まらずに済んだのだがな」
「というか、何故いきなり私の昔話を?」
フードの少女は問うた。
「古巣のアンチジャスティスが壊滅した、なんてのを報告しに来ただけではつまらないだろう?ちょうど話し相手が欲しかったんだ。良いだろう?減るもんじゃないしな」
「…………」
「で、その後どうなったんだ?青羽翼に負けた後、どうやって討魔士になったんだ?エフよ?」
「……………私が負けた後…」
フードの少女、エフは再び語り始めた。