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学園の四姫達

更新が大変遅くなりました。

m(__)mすみません

ブクマありがとうございます。


四木々谷町(しきがやちょう)読んで下さい...

登場人物が多い...そしてこれからも増えていく...。ある程度話しが進めば人物紹介いれます。



四木々谷町。現在はそう表記されていた町は江戸時代中期以前は四姫々谷と表記されていた。考古学者が首を傾げるほどのあったかどうかもわからない眉唾物の伝承が今もなお地元の人に信じられている。


その伝承がかつてこの地に四姉妹の姫がいて一人の男に恋をし姫同士の駆け引きを描いた恋物語である。当時四木々谷湖に居を構えていたと伝えられているがそのような痕跡が残っていない為考古学者が町民を集め四姫々谷伝承は空想。誰かが書いた恋物語であると宣言したが郷土愛の強い町民は反発し考古学者を湖に突き飛ばしたのは有名な話である。


そんな伝承残る湖の側に学校が出来たのだ。郷土愛溢れる地元の方々は文化祭での演劇に四姫々谷伝承をと学校側に要請しいっその事生徒から四姫を選んでおき生徒の代表として祭り上げようとそんな経緯から制定されたのが四姫制度で四木々谷女学園と星華女子高等学校で受け継がれている伝統である。郷土愛溢れる地元の方々にとっては地元を好きになって欲しいという思惑だったが年頃の娘達にとっては郷土愛などどうでもよく思慕の対象として捉えて恋心を寄せるものも多い。両校共同で文化祭の演劇を行うものの四姫はどちらかの学校がやる事にしておりその判断基準が一学期末のテストの平均点の高い方が演じると約束を交わし対立関係が出来た頃より負けられぬと争いは激化しつつあった。


四姫は前任の四姫が選定するのが決まり事で在任が主に二年。進級に伴って後輩に受け継がれているのだが...




「早く次の《春姫》を選んでください。美琴先輩。いい加減選んで頂かないと選ばれた子や私達が困ります」


一人の少女を取り囲み心底困っている《冬姫》藤堂雪華が代表して発言し5人がウンウンと頷く。


「うぅー、せっちゃん。だってさー、だってさー」


後輩に責められ泣きつく美琴と呼ばれた少女は折り畳み机に突っ伏した。園城寺美琴という名の彼女は大きな胸を机にのせて形を歪ませている。


「二年生の子には《春姫》になってって声掛けたんだよ。でも、みんな私には無理っていうんだよー! こうなったら一年生に声掛けるしか...」


二年生達が断るのも無理はない。去年の演劇で例年通りに四姫々谷伝承を催し《春姫》を美琴が演じたが地元の方々がスタンディングオベーションするほどの大盛況。美琴に地元の方々は来年も是非やって欲しいと劇の後に囲んだほどである。今年も演劇を開催する事になるだろうが美琴と比べられるのだ...不興を買えば湖に投げ込まれると噂が立つほどである。顔を顰め先輩の後を継ぐのは無理ですと返されるのも一つの理由だが生徒全員に彼女美琴が慕われているのも事実で続けて欲しいとさえ思われている。


「うぅー、綾がせっちゃんを後任にするから私が苦しむ羽目になるんだよー」


「あら、美琴?こういうのは早い者勝ちよ。モタモタしてた美琴が悪いわ」


満面の笑みで前任《冬姫》である高嶺綾子は返した。雪華は二人のやり取りに複雑になりながらも椅子に腰を下ろしたまま溜息を吐く。前任《夏姫》の石動紫苑は竹刀袋を抱えたまま何度となく行われるやり取りに溜息を吐き隣に立つ後任《夏姫》夏野雅を見やる。


「私達は早く決まって良かったな雅」


「決まったというか決められたと言うか...木刀で脅すのはどうかと思うぞ、紫苑」


「だって断わろうとしたでしょう?」


「当たり前だ。私は陸上一筋で打ち込むつもりだったんだぞ」


「陸上馬鹿も程々にしなさい。雅」


「剣道馬鹿に言われるとは...待て! 竹刀を抜くな」


「そろそろお開きにしませんか。朝会もありますし、この件はまた昼休みにでも」


そう言ったのは前任《秋姫》鈴城栞である。そのとなり後任《秋姫》鈴城縁は我関せずとばかりに本に夢中である。




「もうそんな時間ですか、そう言えば例の編入生の九条さんって朝会で自己紹介するの知っているの?」


綾子の言葉に全員が首を傾げ横に振った。興味がない全員にはぁと綾子は溜息をはく。


「とりあえず九条さんを連れて体育館に移動しないとみんなは先に行ってて」


「む、編入生なら私が連れて行こう、冬姫様」


綾子は率先して動こうとするが雅がそう言って綾子を制止する。


「朝一緒にランニングしている仲だしな。面識もあるし首根っこ掴んででも連れてくるさ」


面識があるのは雪華も一緒ではあるが出会った時を思い出し顔を顰める。厄介事はやりたい者がするべきだろう。しかし雅と早朝ランニングしているとは驚きである。同じ陸上部の者でも早朝ランニングしている者は皆無である。中々、一癖ありそうな生徒と印象を受けるのに十分な情報だった。




「首根っこは止めーもう行っちゃった。早いわね」


「人の話しを相変わらず聞かないやつだ。まったく」


綾子は楽しげに雅の背を見送る。呆れたように紫苑は頭を掻く。あんなのを後任にして良かったのかとぼやきつつ溜息を吐く。


「あれくらい元気な方が雅らしいわ。さぁ、講堂に移動しましょう」


パンと手を叩いて綾子は移動を促す。笑顔を見せ美琴と紫苑、栞と前任《四姫》が会話しつつ移動する。前任《四姫》が動いているのは未だに影響力もありまだまだ文化祭の演劇でメインではないが脇役を演じるのだ。お飾りとはいえ《四姫》は学園の行事は生徒会よりも先頭に立つ事が多い。マイペースな《四姫》が多い中で綾子の様なリーダーシップが雪華には欠けていた。綾子と自分をどうしても比べてしまう。もし自分が《冬姫》を後輩に譲っても綾子のように振る舞えないだろう。むしろ漸く厄介事を押しつけれたと後輩を心配せず丸投げしていたに違いない。綾子を尊敬してはいるが私は彼女の様な振る舞いは出来ない。冷めた感情に支配されつつある雪華を綾子が振り返り見つめる。




「雪華。そう言えばまた告白されたそうね? 程々にしないと刺されるわよ」


「余計なお世話です。それに逃げられましたし」


困った様なそれでも笑顔を浮かべながら見守る様に見つめる綾子。


「雪華がみすみす逃がす何て何があったらのかしら? 修羅場?」


「違います!悪いは例の編入生の所為です」


「あら、九条さんと? 彼女を虐めたら駄目よ。彼女はまだ学園に慣れてないんだから」


「虐めません。それにもう関わりになる事もないでしょうし」


そう言うと隣を歩きながら美琴は驚いた表情を見せる。




「節操なしのせっちゃんがそう言うなんて何だか珍しいね」


「節操なしとは失礼ですね《春姫》」


ジロリと美琴を睨む。ビクリと身を震わせ美琴は綾子の背後に隠れる。




「いい加減遊んでないで講堂へ行くぞ」


紫苑の呆れた声が廊下に響いた。






講堂へと移動すると大半の生徒が集まり席に座っていた。生徒会と《四姫》は座席に座らず壁際に並ぶ。そうこうしているうちに言葉通りに首根っこ掴んで雅がアリアを連れてきた。




「雅...本当に首根っこ掴んで来ないでよ」


「ん?こっちの方が早いし問題ない」


「雅?」


紫苑が呆れ綾子は雅の名を呼ぶがその声音は普段の優しい綾子先輩では無く絶対零度の聞くものを畏怖させるものだった。思わずアリアを落としそうになるが鉄の意志で雅はしっかりとアリアを持ち直す。




「彼女を下ろしなさい、雅」


「ハッ、《冬姫》様」


思わず背筋を伸ばし気をつけをした雅はゆっくりとアリアを下ろす。雪華を除く《四姫》の面々は雅が連れてきたアリアを興味深く見つめる。可愛らしい容姿に背丈は小学生を思わせるほど低い。さらさらな銀髪は艶やかで照明の光で輝いている様にも見えた。手には可愛らしいキャラクターのプリントされたシールを所狭しと貼ってあるヴァイオリンケースを持っている。二挺目のアリアが貯めに貯めたお年玉とお小遣いで買ったヴァイオリンであるが新車の軽自動車は軽く買える程だ。主に持ち歩くのはこちらで曽祖父のヴァイオリンは大事な物なので肌身離さずにいられる状況でしか扱わない。ヴァイオリンケースを見て雪華が顔を顰めたが気にしないでおこう。興味深く見つめる彼女達とは対照的に降ろされたアリアは不機嫌顔である。




「で、何のようなのでしょう」


不機嫌さも隠さず問いかける。綾子は眉をピクリと動かして眉間に皺を寄せる。


「彼女説明しなかったの雅?」


「ん、そんなはずは...してないな」


「雅、後で話しがあるの。昼休みにでもじっくり話し合いましょう」


「ヒッ、《冬姫》様。わかりました...」


綾子の有無を言わさぬ迫力に思わず悲鳴をあげ項垂れる。そんな雅を尻目にジリジリと間合いを詰めて美琴はアリアに背後から抱きついた。




「わぁ、可愛い。ちっちゃい。おー、シャンプーいい匂い。抱き心地も最高だね楽ちん楽ちん」


愛でるようにアリアを抱き締め匂いを嗅ぎベストポジションにあった悩ましい大きな胸をアリアの頭にのせる。柔らかい感触だが重い。


「不愉快な物が頭に乗せられてとても不愉快です」


普通の男子ならば喜ぶだろうがアリアの反応は違った。本気で嫌だった。抵抗しようにも抱き締める美琴の力は思ったより強い。力を入れ過ぎると怪我をさせそうなので身じろぎ程度に留める。




「んん、どれどれ。うん、発育途上だね~。きっと大きくなるよ」


「どさくさに紛れて何処に、止めて、止めて下さい先輩」


顔を羞恥に赤く染めてアリアが悲鳴をあげる。体格は小学生で身体付きも丸みを帯びている気づかれることはないが美琴の触り方は少しいやらしかった。




「不愉快です。屈辱です」


「わわ、ごめんごめん。謝るから泣かないで」


抱き締める力を緩めアリアを開放する。少し涙目のアリアが可愛い。


「肩が凝りそうです」


「肩こりが酷くて、ついついやり過ぎちゃった。ごめんね、えーと」


「九条アリアです」


「あーちゃんね、私は園城寺美琴。よろしくね」


「不本意ながら...よろしくお願いします」


「アリアさん、私は高嶺綾子よ。よろしくね。じゃあ、雅が説明してなかった様だし私が変わりに説明するわね」


「よろしくお願いします。高嶺先輩」


アリアと綾子が話し込み始める。自己紹介についてを軽く話し合い軽く《四姫》について説明を受ける。友人ー八重と千尋からは《四姫》について話しがなかった。一年生には関係無いと思っていただろうし候補としても上がらないだろう。追い追い知っておけば良いと説明を延期したのだろう。短い時間でわかりやすく綾子は説明してくれた。つまり側にいる雪華も《四姫》なのだろう。アリアが連れてこられても素知らぬ顔をしている。いや、美琴に抱きつかれた時笑いを堪えて肩を震わせていた。気さくな綾子先輩は何か困った事があったら相談してねと言って笑顔を見せる。いい人だ誰かと違って。そんな風に思っていたのが気付かれたのか雪華に睨まれた。




教師のいない朝会は生徒会の号令から始まり五月の予定とゴールデンウィーク明けの緩んだ空気を生徒会長が引き締める挨拶をした後私の出番になった。

「それでは我が四木々谷女学園に新たに編入した九条アリアさんに自己紹介して頂きます。九条さんそれでは壇上へどうぞ」


名を呼ばれ壇上に上がる途中でマイクを手渡され受け取る。壇上に上がると生徒全員が興味深そうに見つめてくる。


「おはようございます。今日から四木々谷女学園に編入致しました九条アリアと申します。これからみなさんと同じく四木々谷女学園の生徒として未熟ながら努力して参ります。よろしくお願いします」


ぺこりと頭を下げて無難な挨拶をする。


「僭越ながらヴァイオリンを嗜んでいます。よろしければ一曲ご静聴下さい」


そう言ってケースから取り出したヴァイオリンの準備を済ませアリアは構える。遠目に見えた八重と千尋は耳を塞ぎ目を閉じる。


どんな演奏をと興味を持つ者が多い中鳴り響いたのは黒板に爪を立てたような身の毛のよだつ雑音だった。全員が慌てて耳を塞ぎ悲鳴をあげる。誰もが耳を塞ぐような雑音は一瞬でアリアは静かに『G線上のアリア』を演奏する。顔を顰めて耳を塞いでいた生徒が1人また1人と手を離す中演奏をするアリアに見入り演奏に聴き入り始める。容姿も目を引くがアリアの演奏は卓越したものだった。それなりに有名なオーケストラやヴァイオリ二ストの演奏会に行った者も多いアリアの演奏は勝るとも劣らないものだった。演奏を終えると誰かが拍手をし始める。パラパラなっていた拍手が伝染し大きな拍手になった。ぺこりと頭を下げてヴァイオリンをケースにしまっていると誰かが壇上に上がっているようだった。ふらふらと夢遊病者のように上がり目の前に立ったのは園城寺美琴だった。生徒のざわめきが大きくなる中美琴は気にせず私の前に立った。その目は先程まで見せていた雰囲気ではなかった。真剣な様子の美琴は私の手を握り締める。




「九条アリア。貴方に《春姫》を継いで欲しい。継いでくれないかしら」


美琴の手に力が籠る。全校生徒の前での《春姫》美琴の行動に全校生徒のざわめきが聞こえてくる。




ーちょっと待って欲しい。何がどうしてこうなった‼︎


穏やかな学園生活とは程遠い日々が幕を開いていくのを自覚するのだった。


早ければ3日以内...遅くて一週間以内に更新予定です...

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