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如何にして女子高校に編入したか②



バイト先である『星の散歩道』からの帰宅の途についたアリアはヴァイオリンケースを片手に夕暮れの道を歩いていく。気温は少々肌寒いくらいだ。学校を辞めた事で時間に余裕は出来た物の自分が何をしたいのかちょっとした未来でさえ何も思い浮かばない。我知らず溜息は出るが暫くは星の散歩道でバイトの日々だろうか...。海外の学校でピアノの講師を務める母からも電話がありこっちで住まないかという事を伝えてくれたものの結局返事は出来なかった。


やがて家の前までくると一台の黒塗りの高級車が止まっていた。


因みに両親は海外で音楽活動中である。アリアの他には音楽教諭になった姉九条月子と中学生の妹九条絵理の三人で日本に住み続けている。両親が海外へ行く前にも一緒にどうか?と尋ねられたが三人共理由をつけて断った。実質、我が家の支配者は姉である。働かざる者食うべからずな姉に蹴りとばされとりあえず以前のバイト先に働き始めたのだ。


両親不在の我が家だ。訪れる者は限られている。姉の知人か...そして高級車である。何かやらかしてしまったのか我が姉は...。不安を抱きつつ玄関のドアを開け靴を見る。見慣れない靴のサイズは小さい婦人の物だ。居間から響く談笑に安堵する。やのつく職業の人ではなさそうだ。直で二階の自室に行きたいがとりあえず居間に向かう。肩身の狭い高校中退者の私に姉は容赦はないのだ。居間を覗くと姉と妙齢の女性がスーツ姿で柔和な笑顔を見せている。


「姐さん、ただいま。いらっしゃいませ、ゆっくりしていって下さい」


「こんにちは、お邪魔させて頂いてます。可愛らしいから男の子に人気が高そうね」


客の婦人はそう言って微笑むが姉は乾いた苦笑いを漏らした。流石にアリアが男であると紹介するには別の勇気がいる。


最低限の挨拶はした。義務は果たした。Uターンして自分の部屋にと行動を起こしたが...

「アリア、ちょっと待ちなさい。こちらは遠野由紀さん。お婆様の同級生で今では四木々谷女学園で理事長をしていらっしゃるの。お婆様の話、聞きたくない? 」


姉に呼び止められ当初は実に嫌な顔をしたが祖母の話でピクリと動きを止めて流れるように自然に姉の隣のソファに腰を下ろした。


「始めまして遠野さん。アリアと言います。是非! 是非にお婆ちゃんのお話を聞かせて下さい」


テーブルを挟んでいた物のアリアの食いつきっぷりは半端なかった。祖母の事なら何でも聞きたい。アリアの目はジッと由紀を見つめてる。そのアリアの姿にふわりと婦人は笑顔を見せた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その後絵理が帰って来たので一緒に話を聞く事になった。アリアが話を聞くならと言って隣に腰を下ろす。その間に姉がお茶のよういを始めた。緑茶の熱く程よい渋みが心地よい。一口お茶を飲み由紀は語ってくれた。祖母と同じ四木々谷女学園の同級生で学園生活の苦楽を共に過ごしていた事を。同じクラスの女子に告白を受けた由紀に祖母がやきもきしていた事。修学旅行の出来事で祖母が迷子になった事。卒業を迎えそれぞれの進路を進み結婚しお互いに子供を産むまでの交流を話してくれた。祖母とは随分と仲が良かったのだろう。お婆ちゃん子なアリアには堪らない話しを聞けたが妹の絵理は眠そうで姉はお婆ちゃんらしいと苦笑いだ。絵理がちょんとスカートを摘む。その頭をアリアは撫でるとむぅと声をあげもっと撫でろと言わんばかりに頭の位置を調整する。


「アリアさんもヴァイオリンが弾けるのね。一曲弾いて下さるかしら? 」


ヴァイオリンケースに視線をやり少しアリアを試すような目を見せた。


祖母は三年前にこのヴァイオリンを渡して亡くなった。祖母と一緒に学生生活を送っていた由紀だ。きっと自分以上に何度も祖母の演奏を聴いていただろう。そしてアリア自身も由紀に聴いて欲しい。そして出来れば感想を聞きたい。


「勿論。 あと感想を聴かせて欲しい」

席を立って少し離れる。


姉は珍しいとぼやく。アリアがこれまででコンクールに出たのは小学6年の時のピアノのコンクールだ。他人の評価など気にも止めないようなアリアだが尊敬する人には非常に緩い。日本を問わず世界的ヴァイオリニストの特徴あるアフロの熊野晋平もアリアの尊敬する1人だが彼の演奏を聴きながら顔を紅くして「彼になら何をされても許しそう」とか既婚である事を知って落胆してた時期があったが月子は若さ故の乱心だと思いたい…。


ケースからヴァイオリンを取り出し構える。静かに集中したアリアが弦をゆっくり弾いた。


G線上のアリア。


世界的に有名なJ.S.バッハの管弦楽組曲第三番第二楽章。4本ある弦のうちの1本の弦G線のみで演奏出来る事から呼ばれアリアの名前でもあるし生前祖母が良く演奏していた曲である。何度も弾き自身にとって十八番である。自信があった。


演奏を終えて由紀を見つめた。


由紀の反応、一挙手一投足に緊張してアリアは集中する。


胸がざわめく。


此れ程緊張したのはいつ以来だろうか。


長い間をとって由紀がうなづく。


「私は素人だし、音楽は詳しくないのだけど。少し言い辛いけど華と比べると何か足りない気がするわね」


矢張りかとアリアは落胆する


「ちょっとアリアの演奏に何が不満なんですか! 最高の演奏じゃない」


ばしーんと机を叩き絵理が由紀に噛み付く。その頭をコツリと姉が軽く叩く。


静かにアリアを見つめていた由紀が何度かうなづき自分の中で何かが決定したようだ。


「アリアさん」


名を呼びアリアの瞳を見据える。


「...何ですか」


精一杯の強がりで何とも無いように返答するのがやっとだった。


「アリアさん。貴方、四木々谷女学園に編入する気は無いかしら? 」


どうしてこんな結論になるのか、九条家一同が硬直するなかアリアの困惑は激しくなる。


「私が祖母の通った学校に...? 」

今だ困惑の渦中にある中そう返すのがやっとだった。


(=゜ω゜)拙い作品ですが読んで下さってる方もいるようです。

嬉しいですが気恥ずかしい...

編入までもう少しかかりますが...少々お待ちください。

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