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第八十一話

前話のあらすじ

仲間の力を借りながらスリーを決めた小町弟。しかし直後に小町兄はワンマン速攻からスリーを決める。

「何度でも決め返してやる。」と小町兄は弟を挑発し、弟は心を昂らせる。

 56-42。3Q中盤で14点のリードを奪われていた西商。

 西商ベンチ、黒澤から出た指示は二つ。

「…まず一つ目。全員で、小町にスリーを打たせるんだ。小町を信じろ。」

 

 コーナートゥーコーナー。右サイドのコーナーから左サイドのコーナーまで一気に走り抜ける小町弟。マークマンである小町兄の足を、複数のスクリーンが阻む。

「打て、小町!」

 フリーでボールを貰った小町は、迷わずシュートに。そして、このシュートはリングにかすりもせずにネットをくぐった。


 何度でも決め返してやる。

 そう言った小町兄。当然彼は次のオフェンスでスリーを狙う予定だったが、西商ディフェンスは、彼の想定外の動きを見せた。


(俺のマークマンが、センターの能勢?)

 上背、手足、高いというか、長いというか…。少なくとも、彼にとってこのサイズの選手にマークされるのは初めての経験だった。

 左右にボールを振って能勢の動きを見る。反応は遅くないが、スピードであれば完全にこちらに分がある。

 

 ダムッッ!!

 小町兄は左へ大きくドリブルを突く。それに反応した能勢の体が、小町兄の方へ大きく動くのを見た後、左足で強く地面を蹴りながらバックビハインドドリブルで能勢の背中側を抜いていく。

 メンバーを落としている島上に、小町の動きに対応して合わせる選手はいない。能勢を抜き去ると即、ジャンプシュートを放つ。

 しかし、後ろからにゅっと出てきた腕が、そのボールを弾く!

「!?」

 ブロックをしたのは、能勢。こぼれたボールを拾ったのは大賀。一瞬で速攻に繰り出した五島にボールが渡るも、ディフェンスが一瞬速く戻っており、五島は一旦ボールを止めた。

 そして、逆サイドへパス。

(ありがとう、みんな…!)

 ボールをキャッチした小町は、一瞬の逡巡もなくスリーを放つ。これまた、スウィッシュでシュートが決まる。


(能勢って選手、間合いが掴みきれない。思っていたより、足も速いのか。しかも、この展開…一度タイムアウトを取った方が…。)

 小町兄は島上ベンチを見る。すると、何と監督は試合など見ていない。隣の選手らと楽しそうに喋っているではないか。

 小町兄は唇を噛み、ボールを普段より強く突いた。




 3Qは西商のペースのまま進んだ。小町弟はその後もう3本のスリーを沈めたが、小町兄はフローターシュートを一つ、そして能勢から二つファールを貰い、4本のフリースローをしっかり決め、6得点で試合を繋いだ。

 57-62。負けているとはいえ、14点差を5点差まで縮めた。

「しかし、ここからだぞ。もう相手はセットプレーにも対応してくるだろうし、メンバーもスターターに戻してくるだろう。今度は小町を囮に使い、小倉、大賀で点を取っていくんだ。」

「了解ッス。小倉、大賀、ボールから目を離すなよ。」

柳が言う。小倉は眉をひそめて答える。

「お前こそ格好付けのパス出そうとするなよ。どうせ格好良さだけは向こうには敵わんし。」

「格好良さだけ、ね…。」

(しかし西商バスケ部一のイケメンがよく言うよ…。)中野は苦笑いをする。

 そこで、小町がずいと前に出て、黒澤に言った。

「監督、兄貴のマークはやっぱり俺に任せてもらえませんか。能勢のファールが増えるのもまずいし、兄貴のプレーなら俺が一番知ってるから。」

「…分かった。任せよう。そう言うからには、当然止められるんだな?」

「頑張ります。」

 小町の言葉自体は自信なさげだが、その声からは強い意志が感じられる。

「…よし、なら、最後の4Q。正々堂々とぶつかってこい。」




「ワントゥースリーの音頭、誰がとります?」

「いつも通り柳でいいだろ。」

「いや、ここは三谷先輩が…。」

「え?まあ、いいけど。」


「1.2.3!」

「オオッッ!!!」

 円陣を組んで気勢を上げる西商の選手達。そして、試合に出るメンバーはコートに向かう。その姿を、三谷は笑いながら見ていた。

「どうした、三谷?」

「いや、ちょっとおかしくって。実はさっきまでは、この試合が俺の最後の試合になるかなって思ってたんですが、あいつら見てたら、全然そんな感じに思えないんですよね。」

 それを聞いて黒澤も笑う。

「俺もだ。」


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