第八十話
3Q、51-39。西商は五島を小町に、小倉を中野に替えた。
島上は明らかにメンバーを落としていた。SGの小町兄とCの烏丸のみを残して、他はベンチメンバーだ。12点をリードしている余裕からだろうが、このチャンスを逃さない手はない。
(小町…頼むぞ。)
島上ボールから試合が再開される。ボールマンは小町兄。マークマンは小町弟。早速兄弟対決が始まった。
弟は兄に密着してマークし、シュートを狙わせようともしない。
「啓介と一緒にバスケするのは久しぶりだな。」
兄はボールを保持しながら、弟に話しかける。
「兄貴、これは遊びじゃない。勝負だ。」
弟は兄の隙をついてスティールを試みる。しかし、読み通りと言わんばかりに、兄は巧みにボールを操り弟の手をかわし、突破を試みる。
(抜かれる…!)
弟は必死に体勢を立て直し、兄の進行を阻もうとする。しかし、兄は片足でストップし、その片足で立っている状態のまま、シュートを放つ。
そのボールはネットに綺麗に吸い込まれた。
(兄貴、また上手くなってる…!)
兄貴は、ジャンプシュートの天才であると同時に、ショットスペースを作り出す天才でもある。
ステップバック、フェイダウェイ、急ストップなど、多彩なムーブを使って自分の前に空間を作り出す。そして、シュートの確率も大きく下がることはない。
兄貴との1on1は、言ってしまえば、いつでもゴール下で1on1しているようなものだ。
ゴール下でポンプフェイクをしながら、どのタイミングでシュートを打つかを狙うオフェンス。そのシュートに行くタイミングを読んでジャンプして、ブロックを狙うディフェンス。一瞬の読み間違いで、楽にシュートを決められてしまう。
そんな常識外れのシュート力。それが、兄貴の最大の武器だ。
(俺は…。)
次の西商のオフェンス、柳がボールを運び、一旦インサイドの能勢を経由した後、小町弟にボールが渡る。
弟は、目の前に兄がついているにもかかわらず、スリーポイントシュートを狙う。
このシュートはリングを外れ、ボードにぶつかってから烏丸の手の元へ。
烏丸はボールを抱え込んでから、西商がディフェンスに戻っていくのを待ってから小町兄へパス。ゆっくりと島上のオフェンスが始まる。
(違う…。さっきのは俺がしていいプレーじゃない。)
小町兄は、レッグスルーをしながら弟との距離を詰める。そして、小町が一歩引いたのをみるや、横へステップ。視線はリング。
弟が前に出ようとすると、兄はボールを突きだすようにしてドライブを始める。
しかし、弟はこれに反応し、兄の体を制止する!
「うっ!」
(このパターンなら知ってる!)
コントロールを失ったボールを、中野が飛びこんできてキャッチ。そして、柳にボールを渡す。
「二番!」
柳は腕を上げ、ピースサインをする。セットプレーの合図だ。
左四十五度に立った小町弟に、ゴール側から大賀がスクリーンに来る。
小町弟はそのスクリーンを使い、ゴール下に飛びこむも、兄に読まれ、パスコースを塞がれる。
すると弟は反転、再び大賀のスクリーンを使い、スリーポイントラインの外へ飛び出す。
(そう来ると思った!)
兄は弟の動きについていき、またパスコースを塞ごうとする…が、何とスクリーンに掛かってしまう。
大賀のスクリーン、その隣に構えた、中野のスクリーンに。
「チェンジ!」
小町兄は中野のマークマンに、弟にチェックするように言うも、そのマークマンはまだ一年生で、ろくにディフェンスの練習をしない島上の選手だ。すぐにその言葉に反応できず、小町弟はフリーでボールを受け取った。
(そう…俺のショットスペースは、皆が作り出してくれる。)
小町弟はスリーを放つ。それは、何度も何度も練習してきたフォームと同じ。寸分違わぬ弾道。入ることを確信した小町弟は、リングに背を向けた。
スパッ、と、後ろで音が聞こえた。
「ナイシュー!」
ベンチが沸く。
さあ、追いつこう!そう考えていた西商ベンチ。その横を、さっと風が過ぎ去る。
「来てるぞ、止めろ!」
常にディレイドオフェンスをしていた島上。そのペースに慣れていた西商は反応が遅れる。
小町兄が、フルスピードでボールを運ぶ。みるみるうちに距離を詰め、スリーポイントライン付近まで近づいてきた。何とか帰っていた柳も、判断を要求される。
(スリーがあるか…?しかし、下手に距離を詰めると一瞬で抜かれそうだ。いや、あのスピードからジャンプシュートが打てるはずがない!)
柳はそのまま突っ込んでくるのを警戒し、腰を落とした。
しかし、小町はそのフルスピードのまま、スリーポイントラインの上で跳ぶ。
その体制は前に流れており、綺麗なフォームとは言い難い。
しかし、その手から放たれたシュートは、ボードに当たり、ネットをくぐった。
後ろから追いついてきた弟に、小町兄は言う。
「勝負、だろ?何度でも来いよ。何度でも決め返してやる。」
小町兄は威圧するように言う。
同じだ。あの、中学の体育館でしたシュート対決と同じ雰囲気をしている。
スリーを100本中、88本決めた、あの時と同じ。絶対に手は抜かないという目だ。
しかし、小町弟は、自分がかつてない程高揚しているのに気が付いた。
「そうでなくちゃ。」
なんと、今回で西商、八十話目です。そして、八十話目でまだ夏大会やってます。展開が冗長すぎる感じがしますね。
今、今大会を一つの区切りにして、また主人公を新たにして始めようかなという考えもあります。まだ未定ですが!




