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第七十六話

「えっ、俺?俺はもう試合に出さなくてもいいですよって、予選が終わった時に言いませんでしたっけ。」

 スターティングメンバーとして自分の名が呼ばれた時、三谷は困惑しながら言った。

 もちろん三谷の言葉は覚えている。そして、三谷が三年生だから温情で出す、というわけでは決してない。

「考えがあってのことだ。準備をしていなかった、なんて言わないだろう?」

「そりゃ、いけないわけではないですけど…。正直、能力で言えば後輩たちの方が俺より動けるし上手いのは分かってることじゃないですか。なのに、何故俺を出そうって言うんです?」

「戦術の関係上だ。」

 三谷は怪我の影響でずっと練習が出来なかった期間がある。翠高校との試合ではワンポイントのシューターとして起用したが、高いパフォーマンスを期待することはできない選手だ。

 三谷だけでなく、部員達全員が何か言いたそうにしていたが、私はその言葉を待たずして続ける。

「私を信頼してほしい。全ては勝利の為にやっていることだ。お前たちが私を信頼しないなら、お前たちの考えるメンバーを出してくれればいい。その時は私は何も言わない。」

 部員達は黙り、顔を見合わせる。しかしそう待たずして、柳が発言した。

「分かりました。別にいいでしょ。別に、シューターとしてなら小町と比べて三谷先輩が劣っているとも思わないし、十分戦力ですよ。俺は、三谷先輩も、監督も信頼しています。」

 そう柳が言うと、審判が試合一分前を告げる笛を吹いた。

「じゃあ、いこっか。」

 柳の一言とその笛により全員が覚悟を決めたようだ。彼らは、ベンチ前で円陣を組んだ。


「監督の意図は正直よく分からないけど、俺達は普段通りやるだけだ。次のことは考えなくて良い。この試合に全力を尽くそう。」

 円陣の中で柳が小声で呟いた後、全員がお互いに目配せをする。

「さあ…行くぞッ!」

「オウッッッ!!!」


西商

PG柳

SG三谷

SF小倉

PF 大賀

C能勢


島上

PG羽田166

SG小町175

SF本田175

PF堀177

C烏丸183




 西商のスターターがコート中央に集まる。遅れて島上の選手達もやってきた。

「あれ?けいすけ、いないんだ。」

 島上の四番、小町大介が呟く。彼はスターターの五人を見渡した後、ベンチに視線をやった。

 そして、西商ベンチの小町を見つけると、嬉しそうに手を振った。


 小町はこれを完全に無視。

 …どういう関係なんだ、一体。




「それでは、山岡西商業対、島上高校の試合を開始します。礼!」

「お願いしゃーす!!」

 ジャンプボールは烏丸対能勢。

 審判がボールを上げると、高さに勝る能勢が難なくボールを弾き…とはいかなかった。

 ジャンプボールは、ボールが最高点に達するまでは触ってはならない。烏丸は、非常に早いジャンプを見せ、そしてボールが最高点に達したその瞬間にボールを弾いた。

(予想以上に…速いし、高い!)


 この試合は、予想もつかない立ち上がりを見せた。 

 島上のPG、羽田は、ボールを持つや否や、スリーポイントラインから1.5mは離れているにも関わらず、そのままシュートを放つ。

 そしてそのシュートは高い弧を描き、…ネットに突き刺さった。

「何っ…!?」

 西商の選手達は度肝を抜かれた。PGが、初っ端からこんなプレーを狙ってくるチームなんてあるだろうか?

 ペースを崩された西商を尻目に、島上の持ち味であるオフェンスはどんどんキレが増してくる。


 次の島上ボールでは、ボール運びをした小町大介がそのままドライブ、からのステップバックジャンプシュート。

 三谷のチェックも届かず、ボールはリングに吸い込まれる。

 さらに次のオフェンスでは、小町は三谷のタイトなチェックでドライブを止められたにも関わらず、ポンプフェイクを三回、そして構わずフェイダウェイを放ち、これを沈める。

 三谷は、決められたというのに、思わず笑ってしまった。

「…おいおい、どうすれば止められるんだ…?」

「三谷、ナイスディフェンスだ!それを続けていけば問題ない!」

 三谷のディフェンスに問題はない。苦し紛れのシュートが決まっただけ、と考えるしかないだろう。




「…それじゃ駄目だ。」

 …誰かが呟いた気がした。





手抜き更新で申し訳ないです!

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