表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/99

第七十五話

 和城との対戦を終えた翌日、夏大会の二回戦と三回戦が行われる。

 そう、一日の間に二試合行われるのだ。ただでさえ暑い盛りの季節だ。一応この体育館は空調が効いているとはいえ、選手たちの負担は非常に大きいものになるだろう。

 何しろ、相手は前大会のベスト8、島上高校。勝ちあがることが出来ても、優勝候補の一角であるアチーブが控えている。昨日とは全く違う、何の余裕を挟むこともできない一日となるだろう。


 今日は、一試合目から、春大会での優勝校である山大付属が登場していた。試合をする高校が少なくなったにも関わらず、附属の試合を一目見ようと、昨日より多くの観客が訪れている。対戦相手は西商が一度戦ったこともある南北高校。隣のコートでは、みかん高校という独特な名前の高校と、泉高校が対戦していた。

 西商の試合は二試合目から始まる。選手たちは前日と同じように、試合が始まる前にしっかりストレッチやアップをしておくように言っておいた。

 

 南北高校、頑張ってるなあ…。

 附属と南北では、戦力差は圧倒的に大きい。平均身長は10cm以上の開きがあるだろう。

 しかし、南北は持ち前のディフェンスでターンオーバーを誘発させ、足を止めずに速攻を連発。さすがの附属も時には押されるような展開に持ち込まれ、2Q終わりごろになっても36-25と、点差は実力差を表す数字になってはいなかった。

 春大会時の南北の監督は熊代という人間だったが、暴力事件を起こしてしまい、今は違う先生が監督をやっているようだ。ベンチで熱い声を飛ばしている。選手たちもその声に応えるようなプレーを見せている。

 負けたとはいえ、この高校と一度戦えていたのは私たちにとってありがたかったな。


「ちょっと、良いですか?西商の監督さんですよね。」

 不意に後ろから声を掛けられ、振り向くとそこには…。


(び、美人…!)

 おっさん率八割の役員席。そこに、愛らしい笑顔の女性が一人立っていた。まさに掃き溜めに鶴…!一体、誰なんだ?

「…あ、もしかして、佐々木さんですか…?島上の監督さんの。」

「はい、佐々木紗枝と申します。あまりこういう場には慣れてないので、年の近い人がいて良かった。」

「どうも、西商の監督の黒澤です。」

 平静を装って挨拶をするが、思わず見とれてしまう。ふと…いや、思わず、視線を少し下に落とすと、再び衝撃を受けた。…でかい!何がとは言わないが。

「昨日、西商業と和城の試合を見てたんですよ。すごい試合でしたね。あの、最後に三点も審判さんが入れてくれたのが大きかったですね。」

「えっ…?審判さんが?」

「遠くから入れたので、頑張ったで賞、みたいな…。違いましたっけ?実は私、バスケットボールのルールはあまり知らなくて…。」

 そう言って彼女ははにかむ。バスケのルールを知らない?

「そんな…。謙遜でしょう?島上はここ最近で急に力をつけてきたって聞きましたよ。きっと、素晴らしい指導をなさっていることかと…。」

「いえ、私はただ練習を見ているだけですよ。知らないのに口を出しても意味がないと思って…。」

「ほ、本当ですか…?」

「はい。それでもたまに、中学の方の練習を見に行かせてもらったりして、勉強していますけど。」

 にわかに信じられなかったが、何となく彼女の容姿を見れば納得がいく気がした。

 こんな人に練習を見られていると意識すれば、それは力も入るだろう。もしかしたら中学に行った時に、その姿に見惚れて島上に来たという子もいるのではないか。

 いや…流石に邪推か。健全なバスケ球児にそんな考えなんて…。


「お願いします!」

「お願いしまーす!」

 コートから大きな声が聞こえてきた。試合がハーフタイムに入り、次の試合を行うチームがアップに使える時間が始まったのだ。

 そして島上高校は、コートに一礼してから、役員席にも振りむき、再び一礼した。

「ほう、礼儀正しいな…。」

 と、どこかの監督が言っているが、私は気付いた。選手たちの視線が一点に集まっていることを。

 まさか、こいつら、佐々木先生しか見てない…!

「頑張ってー!」

 佐々木先生も役員席から声を出す。その声を聞いて、選手たちの動きがより機敏になっていくようだ。


 覚悟を決めて試合に挑もうとしていた矢先に…。何か調子を狂わされるな。




 そして、一試合目が終了する。付属は結局85-45と大差での圧勝。隣のコートの対戦では、みかん高校が65-50で勝利していた。

 私は西商側のベンチに向かい、そこに腰を掛ける。

 さて、スタメンは…。


 西商のアップはシューティングメインの練習だ。身体を作るのは外でもできるが、シューティングの練習だけは今しかできないので、それを重視したメニューにしている。

 アップの時間が終了すると、選手たちをベンチに集まらせる。


 そして、スターティングメンバーを言い渡す。


「今日のスタメンは、柳、小倉、大賀、能勢。そして…。」


「三谷。」

 島上高校、未知数であるものの、実力は西商より上だろう。

 

 私は今回の試合、一つ奇策に出ることを考えていた。


七十五話目にして、やっと二人目の喋る女性キャラが登場です。女性キャラの出しどころってあんまりないんですが、多い方がいいんでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ