第四十九話
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西商
PG柳167
SG五島170
SF小倉177
PF大賀184
C能勢186
翠
PG寺山172
SG武田176
SF小島170
PF一色180
C向185
西商対翠。試合前のアップの時間で、柳が能勢に話しかけに行った。
「能勢、向うのあのデブ見てみ。」
「デブ?…うわ!でかっ!」
柳が指差したその先には、非常に大柄の男がいた。ゴール下でシュートの練習をしている。
「あれが、翠のセンターの向ってやつ。横幅はお前の二倍ぐらいあるぞ。」
能勢は、向の自分の体を見比べる。二倍…決して冗談ではないほど、向の体は大きかった。しかも、上背も十分ある。
「あいつはあの体して、この地区じゃトップクラスの技巧派センターって言われるほどの選手だから、油断すんなよ。去年の翠校はほとんどあいつのワンマンチームだったから。」
「技巧派なんですか!?へー…。」
「あ、ちなみに三年だからタメ口使うなよ。」
(“デブ”とか“あいつ”呼ばわりしといて、この人は…。)
しかし、あのサイズで技巧派。一体どんなプレイヤーなのか…。能勢は楽しみというより、不安が頭をよぎるのを感じた。
(ただ、あいつを雑魚呼ばわりする寺山ってやつは一体どんな選手なんだか…。)
柳もまた、別の不安を感じていた。
「今回は難しいことは言わない。今までの練習の成果を出していこう。今回は体力を温存する必要もないんだ。思いっきりやろう。」
「了解です。」
「ちなみに高田は保健室で寝てる。もともと使う予定なんてなかったが、あいつみたいに怪我するなよ。」
「誰もあいつみたいな怪我の仕方、できませんて…。」
柳が苦笑しながら言う。さらに中野も続く。
「能勢、向の体に押しつぶされても、誰も助けられないからな。倒れたあいつを起こせる人間なんていないぞ。」
中野の皮肉に一同、笑う。二試合目ということもあってか、全員リラックスできているようだ。
「能勢とあのでかいセンターなら、スピードのミスマッチで攻められるだろう。ディフェンスでは、能勢一人で止められなさそうなら大賀がヘルプに行ってくれ。その際、ローテーションを確かにしよう。五島、忘れるなよ。」
「ちなみに今回はシュート打っていいんだよな?」五島が仏頂面で言う。
「今回はまあいいだろう。しかし、チームの流れを壊すようならすぐに変えるからな。」
五島は何も答えず、目を閉じながら頷く。本当に分かっているのか?
「さて、じゃあ今日も気合入れていこう。」
三谷がまたもベンチ前に人を集める。もはやお馴染みの光景になってきたな…。
「123!」
『All out!!』
…三パターン目か。何種類あるのだろうか。
しかし、All out…“全てを出し切れ”。この場にぴったりな掛け声だ。
「よし、いこうぜ!」
柳がコートに向かう。それと同時に、翠の選手たちもミーティングを止め、コートに向かった。翠の監督が手を叩いている。
翠の監督は、薄い白髪で、もう50か60はきている男性だ。話す機会がなかったので分からなかったが、一体どんな監督なのだろう。
「よろしくお願いします。」
「よろしく。」
向と能勢がセンターサークルに入る。
ジャンプボール。これは能勢の圧勝だった。向は太っている分、運動能力は低いようだ。
西商のファーストオプションは、小倉のアイソレーションだ。小倉以外の選手は左サイドに寄り、小倉は右サイドでドリブルを始める。
(何だ、コイツ…。)
小倉のマークマンの小島は、翠校のスタメンで最も身長が低い選手だが、腰を思い切り落とし、低い姿勢で構えている。五厘刈りの坊主頭が、照明を反射していた。
(腰落としゃディフェンスができるってわけでもねえだろ!)
小倉は連続でレッグスルー、クロスオーバーを繰り返し、最後はストレートドリブルで仕掛ける。しかし、小島がしっかりと体で受け止め、ゴールに近づけさせない。
「小倉!」
小倉で止められたと見るや柳がボールを受け取りにいく。小倉は、一旦柳の方を見た後、スピンで強引に小島を振り切りにいく!
しかし小島はこれにも反応し、小倉はボールハンドリングを誤りボールをエンドラインの外へ出してしまった。
「くそっ!」
小倉は悔しそうにディフェンスに戻る。
翠校は、寺山がゆっくりとボールを運ぶ。八秒じっくりかけて、ハーフコートまで運んだ。
(まあ、向がいるからランゲームにはしたくないんだろうな。)
柳が分析した通り、翠は向がゴール付近に入ってからオフェンスを開始した。
寺山が独特なリズムのドリブルを始める。
背中側からレッグスルー。柳の目の前にボールがふわっと出てくる。
(取れるか?)
柳が少し上半身を倒した刹那、寺山は右手で強くボールを弾くように前に出す。そのボールは柳の体スレスレを抜いて行き、寺山も一歩でボールに追いつく。
「ヘルプ!」
柳の叫びに応じて能勢が飛び出す。それと同時に寺山は一瞬フリーになった向にビハインドバックパス。向はボールを貰ってから、シュートフェイク。
このフェイクに向のヘルプに行った大賀が引っかかり、派手に跳んでしまう。そして向は落ち着いてシュートを決め…なかった。
「は!?」
向が外したボールを能勢がリバウンド。
「おいこら下手くそ!あの程度のシュートも決められねーのか!」寺山が叫ぶ。
「おいおいあいつ、先輩に向かって何て口のきき方だよ。」
柳も呆れるが、このことに反応したのは柳だけではなかった。
「うっせー寺山!先輩にはちゃんと敬語使いやがれ!」
声の主は翠校のSG、武田だ。
「いや、いいから…。俺のミスだ。すまん。」と、当の向は半笑いで二人を制する。
「あの武田も一年だな。武田と寺山、翠のスタメンには二人も一年が入って来たのか。」
「でも、仲悪そうですね…。」
早くも空気が悪い翠校。対する西商も、不安要素を抱えていた。
(最近、小倉の無理な攻めが多いな…。)
双方、ミスから始まったこの試合。この1Qを動かしたのは、両チームのPGだった。
今ちょっと寝る時間もろくにとれない状態なので、次話の更新は遅れそうです。
「NBA」の方も全く更新できてなくてすみません…。




