第四十八話
目を開けると、白い天井が見えた。あれ?さっきまで確か体育館にいたのに…。
「どこ、ここ?」
周りは白いカーテンで覆われている。それを開けて、外に出てみる。
「おっ、やっと起きたか、高田。」
三谷先輩が、椅子に座って本を読んでいるのが見えた。
「三谷先輩…?えっと、ここ、どこですか?」
「保健室だよ。」
「保健室?何で?」
「お前、試合中にボードに頭ぶつけて倒れたんだぞ。覚えてないのか?」
「頭をぶつけて…倒れた?」
試合中のことを思い出そうとする。確か、コートに立ってからすぐのディフェンスで、敵センターのシュートをブロックにいって…。
そうだ。ここで頭に衝撃が走ったのだ。ボードにぶつかったからだったのか。
「ボードに頭ぶつける奴なんてそういないぞ。お前、ホントにジャンプ力あるよなあ。」
「はは、そうすね。…ん?」
少し笑って、そして思い出した。そうだ、さっきの試合には桜ちゃんが見に来ていたではないか!
「うわ、恥ずかしー!」
「そんなに恥ずかしがるなよ。試合には勝ったし、お前のおかげで盛り上がったからな。」
「いや、頭ぶつけたのが恥ずかしいんじゃなくて、それを見られたのが…!…えっ?」
一呼吸置いて、確認する。
「勝ったんですか?」
「うん、勝ったよ。」
西商対白家。結局、70-55で西商が勝利した。途中ハプニングがあったものの、西商は終始自分達のペースで試合を進め、一度もリードを許さなかった。
この試合で目立ったのは序盤に突き放す際にインサイドを支配して、前半だけで17得点を挙げた大賀。そして矢のようなパスでアシストとターンオーバーを連発した五島だった。
「能勢。」
「…あ、寺山君。」
能勢に、次の西商と対戦相手の翠高校のPG,寺山が話しかける。寺山はくちゃくちゃと音を鳴らしながらガムを噛んでいた。
「何か、眠たくなるような試合ばっかだな。うちの試合も俺が出たのは最初の2Qだけだったし。正心だっけ?聞いたこともねえような雑魚校だったよ。」
「そ、そうなんだ。」
(正心…鯉幟君のところか。)
「だから後半はずっとお前のところの試合見てた。てか、お前手抜きすぎじゃね?高校に上がったら好きにすりゃいいって言ったじゃん。」
「…。」
「別に俺のせいとか言わないよな?確かに中学の頃はきつく言ったけどさー。」
「うん、別に寺山君のせいなんかじゃないけど…。僕はこのプレーが好きなんだ。」
「ふーん…。まあ好きにすりゃいいけど。でも、次の試合では本気だせよ。俺が面白くねーから。」
そう言って寺山は手を差し出す。能勢は握手かと思って手を握り返す。
すると、寺山はガムの包み紙を能勢の手に入れてきた。
「じゃ。」
そして寺山は帰っていく。能勢は、手の中のゴミを茫然と見つめていた。
「111-49ですか…。」
「はい。いやあ、流石に力の差がありましたね。」
私、黒沢は正心の監督、庄先生と話をしていた。
「それで、翠高校はどんな戦い方をしていたんですか?」
「えっと、前半はほとんど15番が一人でボールを持って、指示を出しながら仕掛けていくという感じでした。彼が下がってからは、各々の選手が好き勝手にやるという感じでしたね…。」
15番…能勢の話していた選手だろうか。
「15番の選手はどんなプレイをするんですか?」
「そうですね、なんでもできるって感じで…。身長は170ちょっとぐらいでしょうが、ドライブやジャンプシュート、リバウンドにも参加していました。パスが上手くて、周りを上手く使っていましたね。」
周りを使いながら、自分でも点が取りにいくという選手か。マッチアップは柳になりそうだが、果たして止められるだろうか…。
「夏の大会でリベンジするという目標は結局叶いませんでしたけど、黒沢先生、私は西商を応援しますよ。」
「そ、そうですか。ありがとうございます。」
「選手たちも今回の試合でさらに成長したと思います。リベンジは、次の大会で。」
次の大会は、ウィンターカップか。果たして本当に対戦できるかは分からないが、庄先生はやる気いっぱいという感じだ。
「では、そろそろ次の試合なので…。」
「はい、頑張って下さい。」
そう言ってステージ上の役員席を降りようとした時に、庄先生の手元をちらっと見る。そこには、先ほどの試合のスコアシートがあった。
4 .鯉幟 36P22R 0A 7B 3S
はっきりと成長の証が見てとれる成績。
次のウィンターカップか…。油断できないな。




