表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/99

第四十七話

「シュートを打つな、か…どういうことだよ…。」

 西商のオフェンス中。五島はコーナーで半腰の姿勢で足を止めていた。

(面白くないな…。)

 小倉が切れ込んでシュートを決めた。五島はそれを見て、歩くようにディフェンスに戻る。

 続くディフェンスでも、五島は簡単に抜かれる。しかし能勢のヘルプにより、得点されるのは防いだ。

「おい五島、やる気ないならすぐにでも下がれよ。邪魔だ。」

 小倉が辛辣な言葉を告げる。

「そうしましょうかね…。」

 五島はちらっとベンチの方を見る。

(…いや、わざわざ言うこと聞く必要あるか?別に攻めてもいいだろ。)

 五島は左四十五度の位置で、柳からパスを受け取る。

 そして、即ドライブ!

「速っ!」高田が叫ぶ。

(いける!)

 五島はコートを一瞬で切り裂き、レイアップのモーション。

「ヘイ!」

 そこで大賀が野太い声を張り上げてパスを呼ぶ。五島にヘルプディフェンスがいって、大賀がフリーになっていた。

(しゃあねえな!)

 五島はレイアップを中断して大賀へパス。大賀はボールを受け取ると、力強くパワードリブルを突いてゴール下シュートを決めた。

 序盤から12-4と突き放された白家は、たまらずタイムアウトを取る。


 ベンチで大賀が五島に声を掛ける。

「どうした五島、らしくないな。お前が呼ばれたからってパス出すなんて。」

「シュート打つなって言われてるんですよ。おもんないっす。シュート打たない俺なんて、両輪のない自転車みたいなもんですよ。」

 五島は私にも聞こえるように言う。その例えを聞いて、私は少し笑った。

「ふん、そうかもしれないな。…で、お前が自転車の本体だとするなら、チームメイトは何になる?」

「チームメイト?」

「そう。それこそが、自転車の両輪じゃないのか?」

「……!」

「さっきのようなパスを、また頼むぞ。」


(ポイントガードでもやれってのか?)

 五島コーナーで柳からパスを受けた。五島は膝を落とし、自然にシュートを構えた。

 そのフェイクにつられて白家のディフェンスが一人飛び出してくる。それをかわしながら、ドライブを仕掛ける。ヘルプディフェンスを見ながら、ハイポストへノールックパス!

 ハイポストには、スクリーンを使って小倉が入ってきていた。

 しかし、このパスは小倉の足にぶつかり、白家の選手に奪われる。そして、そのまま速攻を決められた。

「低すぎんだよ!変なパス出してんじゃねえ!」

「いや、いい判断だぜ、五島。」

 小倉が怒り、柳は褒める。

「あそこが見えてたんなら十分。あとはパスの正確性だけだ。小倉は足が速いんだから、さっきのはバウンズパスじゃなくてチェストパスで合わせれば良かったんだ。」

 柳がボール運びをしながら、五島にアドバイスする。

「…りょーかいっす。」

(そーいうこと考えながらしなきゃいけないのか…。)




 前の南北高校との対戦で、控えPGの層が薄いことは大きな課題だった。

 田部はシュートは上手いものの、サイズがないし、ハンドリングやスピードも優秀だとは言えない。パスが上手いというわけでもない。

 その点五島は、ハンドリングは十分だし、スピードは非常に優秀なレベルだ。今までのプレースタイルのせいかパスはまだ苦手なようだが、これから伸ばしていけば良いガードになれる。

 何より彼は、非常にクレバーな選手だ。


「ここだ!」

 五島から、ローポストの能勢へ速いパスが通る。若干パスが外へ逸れていたので、能勢が腕を伸ばしてボールを取る間に、ディフェンスが距離を詰めてきた。

(くそ、またパスミスか。)

 五島は舌打ちをする。しかし能勢はディフェンスに背中を向けたまま、ボールを取った片手をそのまま振り降ろし、エンドライン際を通るビハインドバウンズパス。ゴール下に跳び込んできた大賀に合わせる。

 少し観客から声援が上がる。大賀は確実にシュートを決めた。

「ナイスパス!」

 大賀が能勢の手を叩く。

(ボールを受け取る前に、もう見えてたってことか?)

 五島はさっきの場面を思い出しながら考える。

(俺から能勢へパスがいって…パスが逸れたから能勢がちょっと外に開いて、その空いたところに大賀先輩が飛び込んできたんだよな。さっきのパスは、見えてたって言うよりほとんど予測か?足音でも聞いたのか?)

「あー…パスって難しいな。」


 現在2Q残り三分で、38-21で西商がリードしていた。

「点差が開いてきたな…。よし、メンバー交代だ!田部、小町、中野、藤原、それと高田準備しとけ!」

「はい!」

「よしきたあ!」

 高田が勢いよく上着を脱ぎ捨て、ユニフォーム姿になった。

「高田、あんまり張り切り過ぎて怪我するなよ。お前にとっては初めての試合なんだから。」

「初めてだから張り切るんじゃないすか!」

「無茶なことしそうなら、試合には出さんぞ。お前の怪我も怖いし、お前が相手に怪我させるのも怖い。」

 実際、まだ基礎もできていない選手を試合に出すのはあまり好ましいこととは言えない。キャッチ技術の悪い選手なら突き指などの怪我をする可能性もあるし、ファウルの基準がよく分かっていない選手は無茶なディフェンスやリバウンドへの飛び込みをするので、危険だ。

 まあ、彼が入ってから数日ほどはとにかく基礎を教え込んだので、何とかバスケをしてくれることを期待しよう。


 交代のブザーが鳴り響く。コートから戻ってきた五人は、試合展開が楽だったこともあってか疲労の色はそれほど見られない。

 五島の成績は、4得点(速攻での得点)8アシスト6ターンオーバー。得点に結びつくポイントにパスを出せてはいるものの、球筋が安定しないのが弱点だろうか…。


「ゴール下で手を上げて、誰か突っ込んできたらジャンプしてプレッシャーを与える。外れたシュートの球を取る。これだけやってくれたらいいっす。」

 小町が高田にアドバイスをする。

「プレッシャーを与える?ブロックでいいんだろ!バレーで鍛えた跳躍力を見せてやるよ!」

 高田は屈伸運動をしながら答える。

「いいところを見せて、大賀先輩を蹴散らして、桜ちゃんに振り向いてもらうんだ!」

 小町はやれやれといった感じで溜息を吐く。


 白家高校のオフェンスが始まる。

 白家のスモールフォワードが、ドライブを仕掛けるも中野が止める。苦し紛れにローポストのセンターにパスを出す。そのセンターがシュートを構えた。

「とうっ!」

 高田が跳んだ。


 ガァン!とボードが震えて音を出す。

 …高田はボードに頭をぶつけて、倒れていた。


日本人の高校一年生がボードに頭ぶつけられるわけないじゃん!某漫画の赤坊主か!という方のために超逃げ道的補足をさせて頂きます!

1. 竿山校のバスケットボードは、普通の基準のものよりもいくらか低いものになっています。(実際、そのへんの高校のボードはものによって高さが違ったりします。)

2. さらに安全の為にゴムで覆われているので、その分低くなっています。

3. 彼は昔の話で最高到達点が330cmと語っていましたが、それはさらに昔に測ったもので、今はもっと跳べるかもしれません。何と言っても彼はバレーで世界を狙えると言われた選手です!


以上、この話を書いた後に考えた苦し紛れの補足でした。

でも実際に日本人でボードに頭ぶつけられる人っているんでしょうか?


※追記

これを書いた時、リングの高さとボードの高さを勘違いしており、ボードが305cmあるのかと思っていました。(実際は290cmです。)

また、だだだダイキさんによると、プロバスケ選手の比江島や桜井などはボードに頭をぶつけられるようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ