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第三十八話

 西商対正心。61-25で西商リードの状態で、3Qが始まる。西商は小町を五島、小倉を中野、大賀を藤原にメンバーチェンジした。正心高校は部員が五人しかいないので、そのままだ。

「控え起用ってのはイラつくが、これからは暴れさせてもらうぜ。」

 五島はボールを持つとノーフェイクでドライブを仕掛ける。それでもマークマンの中原を一瞬で抜き去り、ヘルプが来る前にレイアップを決めた。

(速い…!)

 中原はそれからも五島を止められない。ドライブでディフェンスを切り裂きながら貪欲にゴールを狙った。

 また、藤原も好調だ。ローポストでボールを貰い、体重差を活かしながら押し込んでフック気味のシュートを打つというパターンで得点を重ねた。


(まずいな…後半が始まって五分立つのにまだ一点も取ってない。このままじゃ60点なんて取れないぞ。)

 能勢は焦る。このまま行くと今後一週間筋トレ地獄が約束されている。

 しかし、ハーフタイムでパスを回していくと作戦を決めた為、我が儘に得点を取りに行くなんて、自分にはできない。能勢はエゴイストになりきれない自分を責めていた。

(あ…そうだ。)

 田部がショットクロックギリギリでスリーを放つ。これはリングに当たって外れた。

(自分でリバウンド取れば…!)

 能勢は鯉幟の前に回ってスクリーンアウトで鯉幟を押し出す。長い手を伸ばしてボールを掴んだ。そのままシュートに行く。

「シャッ!」

 同時に鯉幟も跳んだ。そして、能勢の放ったシュートを弾き飛ばす。

「うわっ!」

 能勢は思わず転ぶ。

 弾かれたボールは正心の中原が取った。鯉幟はそのまま速攻に参加する。

(五人でやってるのに、全然足が衰えてないな。これだけ暑いのに。)

 中原は前を走る松田にパスを出す。ここは五島が止めるが、松田はふわっとしたパスを上げる。

 このパスを取ったのは、鯉幟!そのままタップしてシュートを決めた。

「足速え…。」

 ベンチの小倉を驚いている。先ほどの打点の高い能勢をブロックしたこともあり、かなり運動能力の高い選手だということが分かった。

  

 田部とのピック&ロールで、再び能勢に得点のチャンスが来た。背中側には鯉幟。

 能勢は一つシュートフェイクを入れる。これにつられて、鯉幟は思いっきり跳んだ。

「あれっ!?」

 鯉幟が落ちてから能勢は跳び、落ち着いてシュートを決めた。

(やっと二点…。)

 もう残り時間は4Qを合わせて13分しかない。

「ああ、なるほど、なるほどなあ。いいなそれ。」

 鯉幟はやられたにも関わらずしきりに感心している。

(あと、膝を曲げたまま落としてない時はフェイクか…。膝を落とすタイミングさえ合えばブロックできる。)

 

 だんだんと、西商のパス回しはあまり上手くいかなくなってきた。出ずっぱりの田部や五島、藤原の体力が切れてきたことが大きい。単調な外からのシュートが増えてきた。

 五島のスリーが外れ、藤原、能勢がリバウンドに行く。藤原がボールをチップして、能勢の方に弾くも、能勢は鯉幟のスクリーンアウトで動けない。

(今までスクリーンアウトなんてしてたっけ?)

 結局鯉幟がリバウンドをキープ。

 西商が攻めあぐねている間、中原が連続でスリーを決めるなど、正心は得点を重ねる。

 そして、鯉幟が今度は能勢にポスト勝負を仕掛けてきた。鯉幟はスピンムーブでエンドライン側を攻め、強引にゴール下でポジションを取った。

 そしてシュートフェイク。これには能勢も引っかからない。

 能勢が跳ばないのを見るや今度は後ろへピポッドをしてシュート。能勢が跳んだが、鯉幟はシュートの構えだけで跳んでいなかった。能勢との接触を受けながら強引にシュートを決めた。バスケットカウントワンスローだ。

「良しっ!」

 鯉幟はガッツポーズ。76-45と点差は開いているものの、嫌な流れになってきた。


 能勢がローポストで再びボールを持つ。右、左と肩でフェイクを入れて、左へターンしてフェイダウェイを放つ。

(このプレーも、前半でも見たぞ!)「おらッ!」

 能勢のポストフェイダウェイにも、鯉幟は触ってきた。そして能勢をスクリーンアウトして止める。軌道が逸れてリングの手前で落ちたボールは飯見が取った。

「また…!くそっ!」

 能勢が珍しく怒りをあらわにする。

「大賀でもあんなブロックはできねぇだろ。」

「うるせぇな、できるよあのぐらい。」

 また小倉と大賀が何か言いあっているが、実際能勢のフェイダウェイがブロックされるのを見るのは初めてだ。

(もしかしたら…とてつもない逸材かもしれない。)

 私は鯉幟を見ながら、そう思った。


「よし鯉幟いいぞ!その調子だ!」

「うっす。結構、能勢のプレーも掴めてきました。」

 正心ベンチでは庄先生が嬉しそうにしている。


 結局能勢の得点はほとんど鯉幟に止められてこのクォーターは四点に終わった。

「あいつ、試合中にもどんどん成長してるみたいだな。まさに鯉幟だな。鯉が滝を登って竜になっていくみたいだ。」

 五島がそう言って茶化す。

「どうする能勢、もう交代するか?」

 私はそう能勢に聞く。

「いや…まだやります。」

「しかし、多分あいつはお前のパターンを読んで来ているんだろう。お前を出し続けるのもどうかと思うが…。」



 能勢は少し間を空けて、こう言った。

「お願いします、やらせて下さい。絶対に勝ってきます。」


「よし。」

 私は笑った。

 暑い盛りの体育館。ひと際涼しい風がぴゅーっと中に入ってきた。


皆さんのバスケ人生でのベストプレー、みたいなものを聞かせて頂きたいなと思っています。良かったら感想欄か、Twitterで聞かせてください。

もしかしたら作中でその技を描くかもしれません!

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