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第三十話

 アチーブ対至誠報徳の試合は、ハーフタイムの時点で40-33とアチーブの七点リードだった。

「アッチは188cmの金堂、197cmの張、196cmの田上にうまくボールを回して得点しているみたいですね。」

 私は大芸と付属戦ばかり見ていたが、庄先生は隣で行われているアッチ対至誠報徳の試合も見ていたようだ。

 至誠報徳のセンターは183cm。フロントコート陣の身長差は圧倒的だ。むしろ、よく40得点に抑えられたものだと感心する。


 3Q、大芸対付属戦では、大芸ボールから試合が再開する。PGは早見から矢代に戻っていた。

 最初のオフェンス、矢代がドライブから谷川にパスアウトし、谷川がスリーを放つも外れて付属ボールとなった。

 付属は伊藤がスクリーンを使ってスリーを放つも、外れる。両チーム、点の入らない展開がしばし続いた。

 そして3Q開始から二分後、大芸は山神でアイソレーションを仕掛ける。マッチアップは藤間だ。

(俺が点を取らなきゃ…!)

 山神はシュートフェイクを一つ入れ、右にステップ、そして左にドライブ。しかし藤間が完璧なタイミングで前に入り山神を止めた。

「何!?」

(今まで全く反応して来なかったのに!)

 山神は焦ってボールをファンブル。ボールはサイドラインを越えて、付属ボールとなった。


「単純なフェイクだ。中学のレベルなら、ずっとそれだけで点が取れてきたんだろう。だが、高校レベルでも通用すると思うなよ?」

 付属の監督、大河原は不敵に笑う。彼の手元には、山神のプレイが細かく書かれた紙があった。

 山神が右ドライブを仕掛ける。藤間はこれも力強いディフェンスで進行を阻む。


 ・右ドライブをして止められたら、スピンかポストアップ。


 まさに山神はスピンを仕掛ける。それを読んでいた伊藤が、山神のボールをはじいて、マイボールとした。


 ・ゴールではなくエンドラインに向かってドライブした時は、ステップバックからジャンプショット。


 藤間が厳しくチェックする。ボールまで手は届かないものの、山神のシュートは外れた。


「分かりやすいな。技が完成されている分、対応は楽だ。」大河原が言う。

「くそっ…!」

 山神は連続のミスに、悔しそうに顔を歪める。反対に藤間は、楽しくて仕方がないと言った表情だ。

「安心したぜ、U-15って聞いたからもっとやる選手かと思ったけど、たいしたことなかったな。」

 藤間が山神に声を掛ける。

「…まぐれのディフェンスで、良い気になってんすか。」

「まぐれ?いやいや、前半は手ぇ抜いてただけだから。俺は、本当は山岡一のディフェンダーだぜ?」

 山神は、眉間に皺を寄せながら藤間を見る。

(…どうせただの挑発だ。ここはムキにならずに、先輩にパスを回していこう。)

 しかし付属のディフェンスは、ディレクションにより山神の方にボールを入れやすいようにディフェンスの形を変えた。結局山神にボールが入る。


「山神が怖いのは、あれだけの能力を持ちながらパスで回りを活かすのも上手いことだ。しかし、ボールを預けられる状況で得点することに縛られるか、またパスをすることに縛られれば…、うちの藤間なら、止めるのは難しくない。」

 大河原が呟く。


 山神はドライブを仕掛ける。今度は、あっさり藤間を抜いた。

「攻め気が無いの、バレッッバレなんだよ!」

 抜かれた藤間は山神の背中側から手を回してスティール。先ほどの山神のドライブは明らかにスピードが緩かった。パスを回そうと考えていたためだ。

 付属は速攻を決める。50-57。大芸の得点が止まったまま、点差が開いて行く。


 また大芸がオフェンスに失敗した時、大鷲監督はタイムアウトを取った。

「お前ら、山神がボールを持った時に足を止めてるんじゃない!山神に合わせろ!山神はいつも通りのプレーをすればいいんだ。無理に点を取ろうとするな。」

 大鷲が指示を出す。

「安部、山神と一旦交代だ。得点は浅井と谷川を中心に取っていくぞ!」

 一年生のSF、安部を投入する。安部は、高いディフェンス力を持った選手だ。

「矢代も、伊藤が相手だからって弱気になるなよ。谷川はもうちょっと我が儘に攻めてもいいぞ。お前なら点が取れる。浅井、赤迫はたいしてディフェンスの良い選手じゃない。ただ、一人抜いた後にスペースがあるのかを確認してドライブをしろ。」

 矢継ぎ早に指示を出していく。選手たちは黙って聞いている。

「さあ、追い上げるぞ!」

「オッス!」


 試合はここから互角の展開となった。大芸の谷川がここから当たりだし、スリーやドライブで得点を重ねる。付属は谷川に藤間をマークさせてきたが、今度は浅井のドライブが付属のディフェンスを切り裂く。

 付属は、センターの野山が左利きを活かした独特なポストムーブで得点を重ねた。山神が抜けたことでインサイドのプレッシャーが少し緩くなってしまい、193cmの野山に楽なプレーを許していた。

 4Qが始まってからも、展開は変わらず、点差は大きく動かなかった。


「すごい試合ですね…。」

 庄先生も、こちらの試合に見入っている。

「両チーム、レベルが高いですね。」

 それに、ベンチワークも優秀だ。まるで試合が付属の監督が描いたストーリー通りに進んでいるように感じる。しかし、大鷲監督も簡単に試合の流れを持っていかれないような采配をしている。


(大河原の野郎、やりやがるな。)

「山神、行くぞ。さっき言ったことを忘れるなよ。上原、お前もだ。わしがここでお前を出す意味、理解してるだろうな?」

 大鷲は再び山神、そして一年生ガードの上原を投入する。4Q、残り七分。75-80で大芸五点ビハインドだ。


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