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第二十九話

大芸高校

矢代170

浅井174

谷川183

山神191

実充190


山岡大付属

伊藤180

赤迫175

奥平185

藤間185

野山193


「藤間?誰だ?」

 大芸の監督、大鷲が隣に座っているサブコーチに聞いた。

「二年生みたいですね。珍しいですね、付属が夏大会に二年生を起用するのも。」

 パンフレットを見ながらサブコーチは答える。大鷲は険しい顔をする。

(どういう意味だ?うちの山神にぶつけてくるってことは、かなりのディフェンダーか?)


 付属の思惑は分からぬまま、試合は始まった。ジャンプボールは山神と野山が跳んだが、ここは山神が圧倒的な高さを見せつけて大芸ボールとなる。

 両観客席から、ベンチに入れなかった両高校の選手たちが大声で応援している。一瞬で会場の雰囲気が変わったようだ。この会場の多くの人間が、この試合に注目している。

「四番!」と大鷲が叫ぶ。四番はPF、つまり山神で得点しようとするセットプレイだ。

 このセットプレイに、いとも簡単にディフェンスが崩れた。最終的に山神がフリーでジャンプショットを決める。

(動きが遅いな…ディフェンダーではないかもしれない。)

 大鷲は椅子にも座らず、試合を眺める。山神はこの後も、得点を決め続けた。マッチアップ相手の藤間は、簡単に山神にやられていた。

 しかし、この試合の最初の主導権を握ったのは付属だった。


 付属のキャプテン、伊藤がボールを持つ。マッチアップする大芸の矢代は、身長差がある為べったりついてディフェンスをしている。しかし、伊藤はそれを嘲笑うかのように、ワンドリブルから少しステップバックして、スリーを放つ。これがノータッチで決まる。

 さらに次のオフェンスも、同じプレーでスリーを決めた。矢代のディフェンスは決して悪くない。むしろしっかりチェックができており、シュートを狂わせる効果は十分あるように思われた。

 しかし、伊藤は止まらない。今度はステップバックから、一気にドライブを仕掛ける。矢代は一瞬で置いて行かれ、ヘルプに来た山神をダブルクラッチでかわし、得点した。

 

 いーぞ!いーぞいーぞ!伊藤!いーぞ!いーぞいーぞ!伊藤!


 観客席の応援も熱が入ってきた。手拍子代りにメガホンを叩いている。

 大芸は山神、谷川を中心に得点し、付属は伊藤が縦横無尽に、18得点4アシストの活躍。1Qを、大芸25対付属31で終えた。

 2Q、伊藤のパスから赤迫が連続でスリーを決めるなどしてさらに付属はリードを広げる。大芸は一旦タイムアウトを取り、選手交代を行う。


「あ!あいつ早見じゃねーか!」

 観客席の、五島が言った。早見は大芸の一年生で、この前の練習試合で五島がマッチアップした相手だ。その早見が、大芸の浅井と交代してコートに入った。

「一年なのにもう試合に出れるのか…。山神は別格としても…。」

 藤原が羨ましそうに言う。ちなみに、既に西商メンバーは自転車組が到着し、全員が試合を観戦していた。

「よく見たら、この前の練習試合の時のスタメンだった奴らは、全員ベンチ入りしてるんだな。」

 小倉がそう言った。上原、安部、国富もベンチに座っているのが見える。

「そりゃすげーや。強豪大芸だってのに…俺達がやられてもおかしくはないかあ。」

 中野がそう言ったが、誰も返事はしなかった。正直、誰もがあの試合のことは思い出したくはなかった。中野は高校から始めた初心者で、「~年バスケをやってきた。」という自信がなかったので、一年チームにあれだけやられたこともそこまでこたえては無かったのかもしれない。


 大芸は、伊藤のマッチアップを早見に任せ、赤迫を矢代にマークさせた。身長差を少しでも無くすためだ。

 しかし伊藤は早見のディフェンスをものともしない。シンプルなドライブで早見を抜くと、190cmの実光の目の前でストップしフェイダウェイを放ち、決める。 しかし早見もトップの位置から、クロスオーバーを繰り返して横に伊藤を揺さぶり、フェイダウェイを決めた。


「負けませんから。」と、早見が伊藤に向けて言う。

「頑張れよ。俺に勝つには、今の君じゃ難しいと思うけどね。」伊藤は笑いながら答える。


 伊藤は次のオフェンスで、トップの位置から、先ほどの早見と同じようにクロスオーバーを繰り返した。しかし、早見は素早い飛び出しでスティールを決める。

「おっと!」

 一気に走りだす早見を、伊藤が追いかける。伊藤の方が若干足が速く、早見がレイアップをしようとしているのに対して、ブロックに跳んだ。

 しかし早見はレイアップのモーションから、後方へパスを出した。パスの出た先は、山神だ。

 パスを受け取った山神は、力強くコートを蹴って跳ぶ。そして、豪快なツーハンドダンクを決めた。

「うおおおおおお!」

「やまがみー!」

「やべえ!あれで高一かよ!」

 観客席から様々な声が湧き上がった。

(あっちゃあ、同じプレーでやり返してやろうとしたら、読まれちゃったか…。早見君か、いい選手だな。)

 伊藤は、何処か楽しそうにしていた。


 このダンクから、大芸に流れが傾き始めた。山神のドライブをメインに得点を伸ばし、2Q終了時には50-51と、一点ビハインドまで追いついていた。

 ハーフタイム。10分の休憩が与えられる。

(何故、山神にあそこまで好きにやらせているんだ?藤間という選手はオフェンスでもぱっとしないのに、何故変えないのか…。)

 大鷲は考える。ここまでで山神は28得点だ。普通、大芸はここまで山神にボールを預けるチームではないが、決勝戦という状況の中で、山神の決定力に頼ってしまっているようだった。

 そして、平均6アシストはする山神がここまで0アシストなのも、不安要素の一つだった。


「山神か。確かに高い能力を持った選手だな。…しかしそろそろ、分かってきただろう?藤間、潰しに行け。」

「…はい。」


 付属は、何かを仕掛けようとしているようだった。


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