第二十一話 流れ
南北スターター
宇野160
関167
池原172
冬元175
植木175
審判と、両チームのスタメンがセンターサークルに集まった。
「お願いします。」
「お願いします!!」
南北の部員はその挨拶と同時に、一瞬でサークル周辺に散らばる。西商の部員はのんびりと集まる。
ジャンプボール。これは能勢の圧勝だった。しかし、南北のセンター植木はそもそもジャンプせずに、PGの柳のところに走った。柳のいるところへボールを弾こうと思っていた能勢は一瞬怯むが、すぐに落ち着いて小倉のいる場所へ落とした。
「ちっ。」
植木は悔しそうに自陣へ急いで戻った。小倉は柳にパスを渡して、ゲームが始まる。
南北はゾーンディフェンスだった。おそらく形は1-1-3。前の紅白戦で三谷が一年生に教えたものに似ていた。ローポストでボールを持たれることを防ぎ、スティールを狙って速攻に繋げようという考えだろう。
柳から小倉、小倉から五島へと上でパスを回すが、ローテーションが非常に早く、隙がない。五島がドライブを仕掛けるものの、宇野がこれを完璧に止めた。五島が逆サイドの小倉へパスを出すと、これをSGの関がカットしようとしてきた。しかし、パスが一瞬速く、小倉へノーマークでボールが渡る。小倉は楽にジャンプショットを決めた。
(キャッチ&シュートの練習が生きたか?)
「小町、準備しとけよ。場合によってはすぐに投入する。」
「はいっす。」
ゾーン攻略のカギとなるのはやはりシューターの存在だ。このゾーンではインサイドが攻めづらいので、まず外のシュートでディフェンスを広げなければ。
南北は宇野と植木でスクリーンプレーを仕掛ける。宇野とマッチアップしている柳はスクリーンをすり抜けるも、宇野が強引にドライブを仕掛けてきた。
「いてっ!」
宇野は無理やり突っ込み、レイアップに行こうとする。柳が思わず手を出してしまうと、宇野は腕を自分からぶつけて大げさな声を出した。これが、柳のファウルとなる。
「えっファウル!?」
宇野が自らぶつかってきていたのは明白だったが、柳の手の印象が良くなかったのだろう。ツースローを与えてしまう。これを宇野はきっちり決めた。
「当たれっっ!」
宇野が叫んだ。ここでいきなりオールコートマンツーマンを仕掛けてくる。非常にタイトなディフェンスだ。
「…ほらきた。やっぱだりいわ…。五島、スクリーン。」
柳が五島を呼ぶ。五島はスクリーンに来るが、ここで柳はスクリーンと逆方向に開いてボールを貰った。一気に運ぶ。しかし、ハーフラインで再び捕まった。
「止めてみろよ。」
柳は左に抜いていくとみせ、ビハインドドリブルで逆を抜こうとした。しかし、これにも宇野がスライドステップでついてくる。ここで、柳は宇野の開いた両足の間をクロスオーバーで抜いていく!
そのまま柳はゴールへ向かう。当然宇野が追いかけてくるが、それを見るふりをしながら、一気にゴール下の大賀へノールックパスを通した。大賀は冬元の上からシュートを決めた。
「すげえ…。」
田部は憧れの表情を見せる。まさか公式戦でもあのストリートのスタイルを貫くとは。なかなかいないタイプの選手のプレーに魅せられ、観客も少しずつ増えてきているようだ。
南北のオフェンスでは冬元がスリーを放つも外れる。リバウンドは能勢ががっちりと掴んだ。南北はすぐに帰り、ゾーンを組む。
西商は、能勢がハイポストでボールを貰い、ローポストの大賀へすぐパスを出す。綺麗なハイローを決めた。
南北のオフェンスはまたも失敗。池原のドライブからのレイアップを、大賀がブロックして止めた。五島はやはりディフェンスの時の動きが適当だ。簡単に抜かれている。
次に南北がシュートを決めた時には14-4で、10点差が開いていた。といってもこちらも楽にシュートを決めているわけではない。残り時間は一分になっていた。
シュートを決めた南北はゾーンではなくオールコートマンツーを仕掛ける。柳の突破に対し、宇野がファウルをして止めた。
「西商、強いじゃん。」
「南北がやられてるぜ。」
ギャラリーも予想外の展開に驚いている。私としても、こんな好スタートが切れるとは思っていなかった。
「動きが遅い!!!」
南北の監督、熊代監督が叫ぶ。南北のベンチでは絶えず声が聞こえる。スクリーンアウトをしろとか、ヘルプが遅いとか、パスカットが狙えるとか、ベンチメンバー達が様々な声かけを行っている。監督も叫ぶ。
それが、一つのリズムの様に感じられた。南北の監督や選手たちは焦っているという様子を出しているわけではなく、ただいつもの通りにやろうとしているだけ、そんな感じだ。
そのベンチが、さらに大きな声を上げる。柳から大賀へのパスを植木がカットした。それと同時に宇野、関がスタート。柳、五島が置いていかれる。簡単に速攻を決められた。
「ディフェンス!!!」
またオールコートマンツーだ。
ここで分かったが、おそらく南北のディフェンスは、スローイン時はオールコートマンツー、シュートが外れた時はゾーンにする、チェンジングディフェンスだ。これは、かなり頭を使わなければ攻略できない。
すると、笛が鳴った。柳と、宇野が倒れている。
「チャージングファウル!白(南北)ボール!」
審判が柳のファウルを宣告する。ここで南北ベンチは、この日一番の盛り上がりを見せた。
「ナイスディフェンス!」
「さあ一本取りましょう!」
南北はセットプレイを使い、池原がスリーをうって、これが決まる。14-9。そのまま1Qが終了した。
最後の一分間の攻防で、流れが変わるのを感じた。ガッツポーズをしながらベンチに帰る南北の選手と、誰一人良い顔をしていない西商。どちらが勝っているのか、分からない状況だった。




