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第二十話 試合前

 今日が勝負所だ。第三試合に南北高校。第六試合にみどり高校と島上しまじょう高校の勝利チーム。この連戦を制さなければ、県大会へ進むことはできない。もし県大会へ行き、結果を残すことができれば夏大会の組み合わせが良くなる可能性がある。

 しかし、昨日の光雲戦で疲れたと言っているチームで、この連戦に勝利することができるのだろうか?南北高校は前大会でベスト16のチーム。翠高校と島上高校は、共に県大会一回戦負けのチームだ。地区予選二回戦敗退の西商からしたら、どのチームも格上と呼べる。

 第三試合は12時からの開始だ。今は11時で、部員達はアップに向かわせている。

 外は嫌になるくらいの良い天気だった。空には雲ひとつなく、太陽はこれでもかという程に照っていた。春だと言うのに、気温がどんどん上がってきている。この春一番の暑さとなると予報されていた。

「これは、ついてないと言うべきか…。」

 連戦に、この暑さ。問題となるのは当然スタミナだった。




南北スターター

宇野160

関167

池原172

冬元175

植木175


 試合開始前のアップの時間。私は役員席から見ていたが、西商はだらだらとコートに入ってきて、南北は我先にと入ってきた。

「「「お願いします!!」」」

 南北はそう気勢を上げると、すぐにアップを開始する。


ソオオッ!エイオウエイ!ソオオッ!エイオウエイ!ソ~オ~オッ!エイ!オウ!エイ!


 この広い体育館全体に響き渡るような声だった。部員数は十五人ほどだった。対する西商は、これに委縮して誰も声を出していない。いや、出しているかもしれないが、聞こえない。

 その時、隣に座っていた監督が声を上げた。


「声が小さい!!!」


 近くからの声だったからか、南北の十五人より遥かに大きい声だと感じた。南北の選手たちは一瞬声を止め、そしてすぐに先ほど以上の声でアップを再開した。


「おっと、びっくりしてしまいましたかな。」

 四十程の大男だった。185cmほどはあるだろう。口を開けてその男を見ていた私に、そう声を掛けてきた。

「西商の新任の監督の方でしたよね。私は南北の監督の熊代です。どうぞよろしく。」

「ぁ…はい。よろしくお願いします。」

 委縮したのは、西商の部員だけでない。情けないことながら私もその恫喝に委縮してしまった。

「今日は180超えの選手が三人もいるところとの試合だということで、とても頭を悩ませていたんですよ。どうぞお手柔らかに。」

 言葉は丁寧だが、その声は低く、異常に威圧感がある。私は一礼して握手する。すると、熊代監督はすぐにベンチの方へ歩いて行った。私も行かなくては。

 …しかし、180超えが三人と言っても、内一年が二人いる。これが最初の公式戦だというのに、どこから情報を集めたのか。



 アップ終了三分前に選手たちを集めて、話をする。

「聞いた通りのローサイズだな。しかし、これで県大会ベスト16まで行ったチームだ。決して油断するな。…まあ、言う必要はないかもしれないが。」

 選手たちは、普段と違い真面目な顔をしてこちらを見ている。真面目な、ではなく、弱気そうな顔かもしれない。

「スターターは昨日と同じ。おそらく、ガードの負担が非常に大きい試合になるだろう。柳、田部は覚悟しとけよ。状況によっては、五島と小倉にもボール運びを任せるからな。」

「うっす。」

「オフェンスはインサイドメインだが、外のシュートもリバウンドを信頼してどんどん狙ったらいい。相手のペースには巻き込まれないようにして、オフェンスを組み立てるんだ。」

 …部員達の声が少ない。

「お前ら、ビビってるな?」


「いや、ビビってなんかないっすよ。」

「おう、そんな訳あるか。」

 そう答えたのは小倉と大賀だ。

「声がでかいだけの雑魚だろ。蝉だ、あんな奴ら。言いたいだけジージー言わせとけってんだ。」

 五島も続く。

「おーけー…、じゃあいつものアレやろうか。」

 三谷がそう言った。一年たちは首を傾げている。

「ちょっと円になって。」

 十人の部員で円を作る。試合前にこうして団結感を高めようとするのは、多くのチームがやっていることだろう。円陣を組んだまま三谷が一年に説明している。



ピューイ!誰かが口笛を吹いた。


ピューイ!ピューイ!ピューイ!ピューイ!ピュイ!ピュイ!ピュイ!ピュイ!ピュイ!…。口笛を吹きながら、全員の腕が上を指す。口笛に合わせて全員が声を出す。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」


「行くぞッ!」

「「「オウ!!!」」」


 このパフォーマンスは多くの観客を惹き付けた。口笛は遠くにも聞こえやすいのだろう。


「さあいこーぜ!」

 柳がセンターサークルへ向かう。次いで、スターターが歩き出した。



 これで、開始前の雰囲気でも負けてないはずだ。あのまま始まったら、その雰囲気のままやられていたかもしれない。


…しかし、「いつもの」ということは、去年は五人でこれをやっていたのか?

まあ、多分目立ちたがりの柳の考案だろう。しかし、皆楽しそうな表情になっていた。



試合まで行く予定でしたが、思ったより文字数が多くなったのでわけます。

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