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第十九話 初公式戦

西商スターター

PG柳 167

SG五島 170

SF小倉 177

PF大賀 184

C 能勢 186


光雲スターター

PG光原 160

SG十才 165

SF友田 169

PF新谷 174

C 金子 188


「一人かなりサイズがある奴がいるなあ。…しかし、あの腕の細さと白さは一体なんなんだ。」

「光雲高校は進学校ですからね。多分、ガリ勉の奴ですよ。」


 光雲高校は県内トップクラスの進学校だ。しかし、バスケ部は全くと言っていいほど目立っていない。万年一回戦負けというチームだ。

「彼らに負けるようなら、バスケを辞めた方がいい。」とまで言われている。県下最弱を争うチームだと言っていい。西商の二回戦進出はほぼ確実と見られていた。




 試合は1Qから予想通り一方的な展開になった。光雲は十才のスリーが二本決まったのみで、西商はビッグセンターの金子をものともせずに得点を重ね続けた。大賀がチームハイの十得点、さらに五島と小倉が八点ずつを決めて、全員の得点を合わせて36-6。


 しかし、2Qから試合は異様な展開を見せ始める。


「2Qはベンチメンバー主体で行くぞ。田部、小町、小倉、中野、藤原の五人で行く。いいか、勝ってるからといって油断したり手を抜いたりするんじゃないぞ。最後まで全力で点を取りにいけ。」

「分かりました。」

 田部らがそう答える。

「この試合、150点取ろうぜ。」

 柳が茶化す。しかし、私もそれぐらいはできなければ県大会に行くのも難しいだろうと考えていた。向こうの選手は全員素人とほぼ変わりない。苦戦する要素はどこにもなかった。


 2Qが始まる。光雲高校はアウトサイドシュート主体のオフェンスをしていた。フリーなら、とにかくうつ。そんな感じだ。

 そのスリーが、開始二分で三連続で決まる。十才が一本と友田が二本決める。しかし、こちらも負けずに田部のスリー、小町のカットインで得点する。

「楽にシュートをうたすなよ!ディフェンスの距離を詰めろ!」

 そう指示した。しかし、さらに光雲高校のスリーが加速する。また十才がスリーを決めると、中野がターンオーバーをしてしまい、光雲ボール。今度はインサイドで金子が得点すると、返すディフェンスでは金子が小倉のレイアップをブロックする。

 次の光雲高校のオフェンス、タイムクロックぎりぎりで、PGの光原がスリーのラインから2mほど後ろでボールを無理やり投げると、それがボードに跳ね返ってゴールに沈んだ。光雲高校に謎の流れが来ていた。私は、慌ててタイムアウトをとる。41-23。


「何本決められてるんだ。何のためにあれだけディフェンスの練習をしたんだ。しっかりチェックして簡単にうたせるな。」

「いやでも、あんなのほとんどまぐれでしょ…、特に最後のシュートなんか。」

「お前たちは二点差の場面であのシュートが決まって負けた時でも、まぐれなら仕方ない、で済ますのか?」

 選手たちは黙る。

「今まで走る練習をしてきた成果を見せよう。オールコートプレスだ。光雲高校に、このQでもうオフェンスの機会を与えるな。メンバーはスタメンに戻す。」

 柳は、うげーという表情をしたが、緩んだ空気はもう無かった。


「オールコートプレスね…、でもその前に、借りは返しとくぜ。」

 小倉が、クロスオーバーで友田を一瞬で抜く。ここでわざとスピードを落とした。

 金子が若干チェックに来る。基本光雲高校はヘルプディフェンスをしない。するスタミナもスピードもないのだろう。しかし、金子だけはディフェンスの要ということなのか、ドライブが来た時は反応して来ていた。

 小倉は金子に向かってドライブして、目の前でストップした。視線はゴールで、シュートを構えた。金子がブロックに跳ぶ。

 しかし小倉はシュートはうたず、ここからステップイン。金子の接触を受けながら、レイアップシュートを決める。ディフェンスファウルの笛が鳴り、バスカンとなる。


 フリースローが決まると同時に、西商はオールコートプレスを仕掛ける。光雲チームは慌てて、ターンオーバーを連発。光雲にはプレスを避けきるほどの運動力は無かった。ドリブルでも突破を許さず、前に出るパスはほとんどカットした。皆、前と比べると動きが俊敏になっていた。

(これだ、このディフェンスだ。)

 黒沢は微笑んでいた。このオールコートプレスを仕掛けていると、敵陣でボールをスティールできた場合、すぐ近くにゴールがあるので、攻撃に転じやすい。つまり、守りながら攻めているということだ。このディフェンスは、チームにとって大きな武器となる。黒沢はそう考えていた。

(あ、五島が抜かれた。)

 ただし、突破されてしまうと相手チームにとってはゴールの近くにディフェンスが少ない状態なので、今度は相手にとって攻めやすい状態になる。しかし、運動量で西商は光雲を圧倒している。そもそもオフェンスのパターンがほぼスリーポイントを狙うことしかない光雲にとって、例えボールを運べても高い確率でシュートを決めることはできなかった。


(…また五島が抜かれた。あいつやる気あんのか!)




 気付けば試合終了。140-33。圧勝だった。

 すぐに次の試合に出る選手たちが入ってきて、アップを始めた。すぐにどけなければならない。

「お前たち、とりあえず着替えてから、私の車の前に集合だ。」

「ういーす…。」

 柳は死にそうな顔で歩いている。結局プレイタイムをおもいっきり与えることを遅刻の罰とした。小町も3Qと4Qをずっと出ずっぱりにしてあげたので、ふらふらしながら歩いている。




 駐車場に行くと、太陽がさんさんと降り注いでいた。今はだいたい正午ぐらいだ。じわじわと気温が上がってきている。

「よし、皆とりあえず今日はお疲れ様。ディフェンスの練習の成果が出たな。」

「まさか光雲相手にこんなに消耗するとは思わなかったですよ…。」

 柳はまだ疲れているようだ。

「ほう、今日くらいでそんなに消耗したのか?鍛え方が足りなかったようだ。ランメニューはもっと増やさないとな。」

「えっ、ちょっ!それはやめてください!」

「柳にだけ特別メニューでいいでしょ。疲れてるのはこいつぐらいですよ。」

 中野がそう言った。それを聞いて、小町も疲れているだろ、と小町の顔を見るが、平然としている。汗ももう止まっているようだ。疲れているのは間違いないはずだが、こいつのポーカーフェイスぶりは一体なんなのか。

「とりあえず、明日が本番だ。今日は早く家に帰ってしっかり休みなさい。もちろん今日各自が感じた課題をノートに書いておくように。ちなみに、明日の南北高校戦に勝てば、その三試合後にまた、翠高校と島上高校の勝者と試合がある。その気持ちで試合に臨むように。」

「「「はい!!!」」」

 そうしてすぐ部員達は帰り支度を始めた。おい、まだ言うことは終わっていない。

「ちょっと待て。言っておくが、ランメニューを増やすというのは別に冗談で言ってわけではない。今後さらに増やしておくから覚悟しておいてくれ。明日の南北高校はサイズのある選手のいないチームらしい。まあお前らの方がよく知っているかもしれないが、おそらくかなり走ってくるチームだろう。ここに走り負けないことを目標にしよう。」

 柳、藤原辺りが非常にダルそうな表情をしている。

「では、解散。」




「南北高校かあ、俺、やだなーあそことするの。」

 柳と田部は一緒の電車に乗って帰っているところだ。

「そんなに強いんですか?」

「強いっていうか…ほんとやり辛いよ。」

「大芸より、やり辛いかもな。大芸だとすぱっと倒してくれると思うけど、南北はどこでも接戦に持ち込もうとするからな。最後まで気が抜けねえ。」

 田部は少し緊張した表情をした。明日、覚悟して試合に臨まなければならない。


内容はたいしたことないのに、字数ばかり多くなってしまいました。

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