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第十八話 高校バスケ

 結局、その日藤原は練習に来ていたし、翌日に退部届を持ってくることも無かった。涙すら見せた彼に何があったのかは知らないが、彼の気持ちを動かしたのは、おそらく部員の誰かだろう。私にとっても、良い部員に恵まれたものだと、嬉しくなる。


 練習は、ランメニューと、マンツーマンディフェンスを鍛える練習を増やした。いまのところ、ゾーンディフェンスを練習させる予定はない。どんなディフェンスも基本のマンツーマンが弱くては話にならないからだ。

今日は4月21日。春大会の一回戦は4月26日にあるので、あと練習できるのは五日間のみだ。大会までにはディフェンスをそれなりのレベルまでにはしたかった。しかし、部員達にはそれを不満に思う人もいた。


「先生、もうちょっとシュートの練習も増やした方がいいんじゃねえの?このままじゃ大会の時もシュートが入らなさそうだ。」

 そう言ってきたのは五島だ。

「ジャンプシュートの練習なら手軽に一人でできるだろ。昼休みとか、朝練の時間にできる。せっかくチームで練習できる時間なら、それを有効に活用する方が大事だ。」

「先生、朝練はしちゃいけないって決まってるんだぜ。」

 ・・・え?

「何でだ?この学校の方針なのか?」

「いや、先生知らないの?去年の十月ぐらいから、学生の学力の低下を防ぐとかの理由で、山岡県の高校では朝練が禁止になったんだ。週に一日は絶対完全休養日を入れなきゃいけないって条例も、そろそろ決まるかもしれないって話だけど。」

 知らなかった。しかし、そんな馬鹿な話があるか?

「朝練があるから学力が低下する?だから朝練廃止・・・そんな話、私はおかしいだろ。体を動かすことが脳に良い影響を与えることも証明されているし、何より部活を頑張りたい高校生たちの気持ちを考えていないのか?」

「俺に言われても知らねえよ。」




 聞けば、この朝練禁止の条例は山岡県が他県に先駆けて始めたらしい。よって、他の県では普通に朝練をしてもよいのだ。納得がいかない。他県勢に比べて山岡県の部活のレベルは低くなることが予想される。確実に不利になる。朝練をすることによって睡眠時間が短くなることは確かにあるかもしれないが、最近の学生の睡眠時間が短い一番の原因はパソコンなどが主な原因なのではなかったか?それに、ゆとり教育を実施しておいて、その所為で下がった学力をこんな形で取り戻そうとするなんて…。


「馬鹿馬鹿しい。」


 結局その日はコートを使える時間にシュート練習を増やし、それが終わったら学校の外を走らせることにした。

 練習時間が足りない。山岡県の高校はおそらく、どこもこの問題に悩まされているのだろう。すぐに廃止にしてもらいたい。

 …というが、確かに教育者の立場からすれば、授業中の昼寝を防げるかもしれないので、ただ悪法と決めつけるべきではない。子供の成長において睡眠は非常に大事なことでもある。学力の低下は、非常に悩ましい問題だ。

 しかし、高校生の頃の一番の思い出と言えば、多くの人が部活動を挙げるのではないか。それを制限されるのは、フラストレーションが溜まる学生も多いだろう。少し、可哀そうだとも思った。




 結局この五日間、ランメニューを外周で補い、ディフェンスとシュートの練習はコート内で、という形で練習をした。


 そして、今日から春大会が始まる。今日の相手は光雲高校だ。会場は駅から近く、コートも広い広近高校が選ばれた。試合開始は二回戦で10時半からだが、着替えやアップの時間が必要なため、8時半に集合するようにと伝えた。一回戦のハーフタイムの時間にはコート内アップの時間もあるので、それまでに体を温めておかなければならない。


 私は、ボールやユニフォームなどの運搬を車で行うことにしたので、八時には学校に着いていた。広近高校は、私立の学校で非常に校舎が綺麗だった。真っ白な壁に、花壇には色とりどりの花が植えられている。広い駐車場があることも西商とは違う点だった。

 羨ましいことは、体育館がコート三面分の広さがあることだ。西商含め、多くの学校はは二面分しかない。広近高校はそうした力を入れていることもあってか、バスケ部は県内でベスト8クラスの力を持っている高校だった。

 しかし、強豪校はほとんど私立という今の時代に、公立高校でインターハイを目指すというのは大変なことだ。体育館や練習器具などを買う金も十分にないし、もちろんスカウトや、スポーツ特待生などにかける金もない。

 さて、今、九時だ。一回戦がそろそろ始まる。やっと、柳と小町が到着した。何故もっと集合時間を早くしなかったのだろう。うちには遅刻常習犯が二人もいるのに。


「道が混んでたので。」

「柳、お前電車から、歩きでここまで来たんだろ?何が混んでたんだ?」


「寝坊しました。」

「分かった、寝てろ。試合には出さないけどな。」


 柳、小町。今日のプレイタイムは半分にしよう。


この作品にはたまに実在の選手の名前などが出てきたりしますが、舞台設定などほとんどのことはフィクションなので、あまり本気にしないで下さい。

多分ですが、まだ朝練禁止を実際に行っている県などはなかったと思います。

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