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第十四話 飲み屋にて

 大芸との練習試合が終わったその夜、大鷲先生と「黒霧亭」という居酒屋で飲むことになった。大鷲先生は大の酒好きで、この店で出される芋焼酎が大の好物なんだそうだ。


「はあああっ、美味い!」

 大鷲先生は焼酎をまるで水であるかのように飲み干す。とても真似できない…。

「今日の試合だがな、まさか4Qだけでもやられるなんて思ってなかったぞ。もちろんU-15の山神がいるってのはでかいが、上原と国富は中学時代は山岡県選抜の選手だし、早見と阿部は根島県選抜、しかも早見は根島県の県大会最優秀選手だ。こいつらだけで県ベスト4ぐらいまでは行ける自信すらある。そいつらが、去年の地区大会二回戦負けのチームに負けるとはなあ…。」

「私も驚きましたよ。子供たちの可能性ってのは、無限大だって感じましたね。決して中学時代の成績なんかで全てを決められないですよね。」

 大鷲監督はもうおかわりを頼んでいる。

「おう、そりゃそうだ。うちは私立だからスカウトには力を入れているが、最後はちゃんと俺自身が見て呼ぶかどうかを決めてる。例え県選だろうが何かの大会のMVPだろうが、使えない奴だっていくらでもいる。」

「逆に、中学時代無名でも使える選手はいくらでもいるってことですよね。」

「まあな。それは確かだ。例えば、お前のチームにいた、あの足が速い選手とかは、鍛えればかなりの選手になるはずだ。…ただ、あの能勢はな、中学時代に一度試合している姿を見て、うちの練習に誘ってみたんだが、とにかく弱気で、自分を出したがらないんだな。こういう選手は良い物を持ってても、伸びないんだ。」

「そこを伸びるようにするのが、監督の力量じゃないですか?」

 能勢の育成については考えていて、アンセルフィッシュな性格を直し、ポストプレーばかりではなくスリーや、1on1も教えていく予定だった。能勢が伸びない選手だとは、とても思えなかった。

「人の性格なんて、簡単に変えられるもんじゃない。弱気な選手ってもんは、自分に限界を作りがちなんだ。『俺にこんなプレーはできない。こんな重要な場面でシュートは決められない。』ってな。練習で良いプレーができても、本当の勝負をする時、縮こまっちまう奴も多いな。だから、使い物にならないことがよくあるもんだ。」

「…そんなものですか。」

 大鷲監督は既に顔が真っ赤で、またおかわりを頼んでいた。私は頼んだビール一杯すらまだ飲んでいない。

「ふん。何しょぼくれた顔してやがる。『俺には、能勢を伸ばすことができない。』って考えたか?それが弱気だって言ってるんだ。」

「えっ?」

「俺に言われたからって、気にすることはないんだ。わしができないことでも、お前ならできるかもしれない。それはお前次第だ。自分に限界を作るなと、言ったばかりじゃないか。」

 そんなことは言われただろうか。ただ、大鷲監督の言っていることは概ね正しいと思う。最初からできないとか決めつけるべきではない。私ならできる、と考える方が良いはずだ。


 あいつらと、県大会ベスト8を目指す。いや、インターハイを目指すんだ。私なら、あいつらをそこまで連れていくことが出来る、と考えなければ。


「ところで黒沢、お前もう春季大会の組み合わせは見たか?」

「ああ、ファックスされてきてました。一回戦は、確か光雲高校だったと思います。」

「一回戦の相手は、まあ勝てるだろ。問題は二回戦だ。南北高校と当たるんだろ?」

「ああ、確かそうだったような…。どんなチームなんですか?」

「県大会ベスト16クラスのチームだ。といっても、最長身の選手が175しかないがな。」

 175?なら、かなりの小型のチームだ。何が問題なんだ?


 …いや、175が最長身のチーム…。私の想像が正しければ、今の西商とかなり相性が悪いチームなのではないか?


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