第九話 スタメン
「片づけが終わったら体育館の二階でしっかりダウンして、三十分後に部室に集まりなさい。」
紅白戦の後、すぐに女バスの練習が始まるので手早く片づけをさせて、黒沢は教官室に戻った。すると、女バス顧問の佐藤先生が話しかけてきた。
「白熱した試合でしたねー。」
「ええ、子供たちも思ったより本気でプレイしてくれてるみたいで、私も熱くなってしまいました。」
「最後の速攻、すごく速かったですね!さすが大芸高校バスケ部出身です。」
「でもあの時間は自分で判断して行っちゃいましたけど、子供たちに任せた方が良かったですね。ああいう場面で正しい判断をさせるためには、試合経験を多く積ませることも大事ですし。」
「それはありますよね。では、私は女バスの練習を見に行ってきます。」
「どうぞ。」
佐藤先生が教官室から出て行った。さあ、今日の試合を振り返って、次の土曜日の練習試合のスターティングメンバーを決めなければ。
しかし一年の能勢の終盤のプレイは凄まじかった。県選抜選手と言われても信じてしまいそうだ。ただ、前半全く点を取りにこなかったし、アンセルフィッシュな性格の選手なのだろう。
二年生も去年地区大会二回戦負けとは言え、十分に優秀な選手が揃っている。去年は部員が五人しかいなかった計算なので、メンバーを替えられない弱みを突かれたのではないか。
トーナメントの組み合わせ次第では、ベスト8も十分狙えるチームだ。指導のしがいがありそうだ、と黒沢は思った。
「よし、全員集まったな。まず大事な話がある。今週の土曜日に、あの大芸高校と練習試合をすることになった。」
練習後のミーティングとかダリいな、とか言っていた部員達が、急に静かになった。
「とは言っても来るのは大芸の一年生だけだ。しかし、当然中学で有名だった選手ばかりだろう。舐めてかかってはいけない。」
「一年か…、良かったよ、正直あいつらとまともに試合するとか、考えたくねー。能勢、向こうの一年生に選抜の知り合いとかいるか?」
少し緊張感のある空気だったが、柳はまるで気にしていないという様子で能勢に話しかけた。
「あ、えと、確かU-15に選ばれた人がいたはずだと思います…。」
「はっマジ!?市選とか県選とかのレベルじゃねーじゃん!」
それには黒沢も驚いた。大鷲先生、そんなこと一言も言わなかったじゃないか…。
「あれだろ、山神だろ。泉中学の。ミニレブロンって言われてた奴。」
大賀は知っているようだった。泉中学と言えば、去年初めて全国大会に出場し、ベスト4まで上り詰めた中学だった。
「そう、それです。ミニ、といっても190超えてますけど。」
「おおそうか…。あいつが二年の頃にマッチアップしたことがあるが、その頃はまだ180ぐらいだったな。そんな成長したのか。」
「はいすごい選手になってますよ。」
さて、選手をあまり遅く帰すわけにもいかないので、本題に入ろう。
「そこで、スタメンをさっきまで考えていたんだ。それを発表したいと思う。」
PG柳良太
SG小町啓介
SF小倉心
PF大賀大河
C能勢球児
「これで行きたいと思う。もちろんスタメンじゃない選手にも、プレイタイムは与えるから心配するな。」
しかし、ここで「…は?」と五島が言った。
「なんで、俺入ってないの?なんで小町?」
不満げというより、信じられないといった表情だ。
「俺、一年のなかで一番点取ってるし、小町なんか能勢のパスからシュート決めただけだろ。得点力考えたら、俺入れるべきじゃねえの?」
「お前はな、ディフェンスができなさすぎる。小町を入れたのはスリーがうてるシューターが欲しかったからだ。お前は確かに得点力はあるみたいだが、うちには小倉や大賀とか、点の取れる選手がいるんだ。お前にはシックスマンとして、その代わりを務めてもらいたい。」
「いや、ディフェンスって…、小町だって小倉先輩に取られまくってるし、柳先輩のハンドリングやべえんだから、簡単に止めれるわけないっしょ!」
「じゃあお前は柳に抜かれた後どうした?お前は、笑って足を止めたんだ。ディフェンスのやる気のない選手を、スタメンにおくわけにはいかない。」
小さく舌打ちが聞こえた。
「あーそう…、もー分かった。帰る。」
五島はかばんを抱えて、そのまま部室から出て行った。
ちなみに小町はこの言い争いの最中、ずっと寝ていたようだ。
二月上旬ぐらいまで忙しい日が続くので、更新は2,3日に一話ぐらいのペースになりそうです。
一話一話が短いのにのんびりしててすみません。




