第八話 紅白戦4
Cの大賀、PFの中野を両ローポスト、そしてトップに黒沢、四十五度に柳と小倉という形にまず動かす。
「大賀、ハイポストに上がってこい!」
大賀がハイポストに上がる。と同時に、ローポストをディフェンスしていた藤原がそれにつられてハイポストに出てきた。
(あれ、これ、中いけるんじゃね。)
柳がそう思って切れ込もうとした瞬間、黒沢から絶妙なリードパスが来る。一気にゴール下まで来たが、能勢がヘルプに来る。
「大賀飛び込め!」
黒沢の声と同時に大賀がハイポストから下りてきた。そこに柳からのアリウープパスが出て、これを大賀が決めた。
(なんだこれ…めっちゃ簡単やん。)
高校に入ってからセットオフェンスなんてろくにしなかった柳は、そう思った。
「藤原、そこは付いていかなくていいんだ!ゴール下固めとけ!」
三谷が藤原に声を掛ける。やはりこの一年チームは、ゾーンの動き方などは分かっていないようだった。
一年チームは、能勢のハイポストから展開しようとするも、柳が隙をついてスティールする。そのまま速攻で攻めると、小倉が田部からバスケットカウントを取り、ワンスローも決めて、スコアは25-20。
「ごめんね、田部くん。」
「能勢はそんなこと気にしなくていいから。がんがんパス回すぞ!」
残り時間は三分だ。再び能勢がローポストに張る。
田部はいつものようにそこにパスを、入れはしなかった。パスフェイクを2,3回入れ、デフェンスが距離を開けたとみるとスリーを放った。これがリングの上を一回跳ねた後、ゴールに収まった。
しかし二年チーム優勢の流れは変わらない。今度は小倉がミドルレンジジャンパーを決めると、一年チームは藤原が大賀にブロックされる。さらに二年はセットプレイから柳がスクープショットを決めるなど、得点を決め続けて、29-23。
「最後だ能勢!点を取りに行け!」
三谷が声を上げる。自分が考案したゾーンディフェンスで点を取られ続けているのだから面目なしといったところか。
能勢はスリーのラインでボールを受けた。大賀は念のためスリーを警戒して、べったり付く。
しかし能勢は、ジャブステップで少し距離を作り、フェイダウェイでスリーを放つ。美しい回転だった。大賀が慌ててチェックに行き、手を叩いてしまう。能勢はその勢いで倒れてしまった。
それでもボールはリングにかすりもせずにゴールに突き刺さる。スリーでのバスカンだった。いわゆる四点プレイだ。
「おい能勢!お前スリーうてたのか!」
「やべえ!まじやべえ!俺こんなシュート初めて見た!」
「いける!まだ逆転できるで!!」
一年チームの士気が上がっているのが分かる。衝撃的なプレイだった。当の本人は「いや…まぐれだよ…。」と恥ずかしそうにしている。
能勢はワンスローも決めて、点差は二点差になった。残り五十秒だ。
「ヘイ!パース!」
柳が走っていた。一年チームは気が緩んだせいか、柳の動きにすぐに気付けなかった。中野がベースボールパスで一気に飛ばす。すこしパスが流れて、シュートが遅れる。その一瞬で五島が距離を詰めて、ファウルで柳のシュートを止めた。
柳は最初のフリースローを外した。中野が「一本決めよう!」と声を掛ける。
そして二本目も外した。点差は二点差のままだ。柳や中野は体力的にかなりきているようだった。
能勢はリバウンドから自分でボールを運んだ。センターとは思えない俊敏な動きとハンドリングだった。小倉が止めに来たが、スピンムーブでかわす。さらにゴール付近で止めに来た大賀に対して、ギャロップステップで抜き去り、ポンプフェイクを入れる。大賀はそれに思い切り反応し、体ごとぶつかっていった。能勢は押されながら、右手で回転をかけたシュートをうった。
そのシュートはボードに当たり、そのまま綺麗にゴールに吸い込まれていった。二連続のバスカンだ。
「くそっ!」
大賀が悔しそうに顔を歪める。一年チームは能勢を中心に盛り上がっていた。
能勢はワンスローを決めた。残り三十秒で、29-30と一年チームが逆転した。五島が「勝ったっ!」と言った。
相手が勝利を確信した瞬間は、相手が一番油断している瞬間だ。こちらにとっても最大のチャンスとなりうる。ここは時間を使わずに攻めるべきだと考えた黒沢は、ボール運びからトップスピードを出した。
一年チーム、いや、このコートにいる全員がそのスピードに驚愕した。のんびり帰っていたディフェンスを次々と抜き去る。五島は遅れながらも反応したが、追いつけない。それどころか、さらに距離を離されて、黒沢にレイアップを決められた。
(俺より足が速い奴、初めて見た…。)
五島は驚きの表情を隠せなかった。油断していたとはいえ、自慢の足の速さで負けたことはショックだった。
「さあ一点差だ、守るぞ!」
また能勢がスリーのラインでパスを貰う。前半までで彼は非常にパスも上手い選手だということが分かっているので、迂闊にダブルチームにも行けない。
大賀のディフェンスに賭けるしかない。
残り八秒。能勢がドライブを仕掛ける。しかし、大賀がぴったしと付いていき、ゴールに近寄らせない。すると能勢がステップバックから、フェイダウェイを放つ。
大賀は、先ほどの四点プレイのことが一瞬頭を掠めるも、ブロックに跳んだ。しかし、手はボールに届かない。
このシュートは外れた。しかし、中野は疲労のせいかリバウンドに跳べない。それは一年の藤原も同じようだったが、上背のある分藤原が手を伸ばして、リバウンドをキープした。残り三秒。迷わずシュートを撃とうとする。
しかし、黒沢がそのシュートモーション中にボールを弾いた。床に転がったボールを中野が拾うと同時に、試合終了のブザーが鳴った。
30-31。二年生チームの勝利だ。
一応スタッツです。適当ですが。
とりあえず試合を終わらせようと急ぎ足で書きました。
#また五島が後藤になってたので、修正しました。
二年チーム得点アシストリバウンドスティールブロック
黒沢信吾5 1 1 1 0
柳良太4 5 0 2 0
小倉心11 0 3 1 0
中野新太郎0 1 6 0 0
大賀大河11 0 6 0 2
一年チーム
田部安秀3 1 0 0 0
小町啓介7 1 0 2 0
五島正弘11 0 1 0 0
藤原さとし2 0 3 0 0
能勢球児7 4 8 1 2




