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2.温度

「いやー、お前が佐渡さんと付き合い始めてからもう半年かぁ。早いもんだよなぁ」

「えっ。もうそんなに経ったの?」

「あれ、まだだった?」

「いや知らねぇよ。そんな急展開なのこの話?」

「もう十月だぜ?」

「マジでか」

 友人の五百旗頭(いおきべ)鬨日出(ときひで)(本名。綽名は『イオ』もしくは『爆破呪文』)によると、どうやらもう前回(※第一話参照)から半年が経過していたらしい。

 思う以上にハイペースなストーリー展開だが、ぼくにはその間の記憶が全く無い。何やら諸事情の臭いがする。

「ほら見ろよ、もう皆季節感バリバリに冬服をがっちり着込んでるぜ?」

「いや四月も冬服なんだけど」

「すっかり寒くなっちまって女子の夏服姿が懐かしいわー」

「ゴリ押しかよ」

「ったくよー、クラス替えして新学期早々彼女作ったお前がホント羨ましいわー。あー、オレも彼女が欲しいー!!」

 椅子を逆向きにして、だらけた姿で背凭れに寄り掛かりながらイオは言う。どうやら衣替えについての突っ込みはこれ以上は認められないらしい。ぼくとしてはこの半年間で何があったか訊きたいところだが、これ以上深く追求すると恐らく不思議な力が働いて恐ろしい事が起きる可能性があるので却下せざるを得ない。

「佐渡さんとか、山瀬高校でトップテンに入る美少女じゃんかよ。何でお前が付き合えるかマジ謎だわー」

「あれ、佐渡さんって美少女だったっけ? ぼくそんな描写した記憶ないんだけど」

 確か『間違い無く■■■で可愛い■■■■■■■入る』って……

「黒塗り?!」

「何だ真麻、黒漆の器にでも目覚めたか」

「違うし判り難い! じゃなくて、何か今ぼくのモノローグが規制に引っ掛かったぞ!?」

「そりゃあきっと高校生的にCEROアウトだったんだな。やべー、真麻さんエロいわー、ぱねぇー」

 ぎゃはは、と笑いながらイオは言う。

「いやいや怪訝しいだろう、だって『間違い無く■■■で可愛い■■■■■■■入る』って……まただよ?! 何コレ怪奇現象!?」

「すっげ、リアルピー音とか、卑猥にも程があるぜ? 高校生の猥談にしちゃあ、ちょっとレベル高過ぎじゃねーのそれ?」

「ちがああああああああああう! だって前回(※第一話参照)は普通に言えたんだぞ!! 無理矢理お話改竄しようとしてるの!?」

 いちいち注釈付けるなよウゼぇな!!

「いやー、きっと前回(※第一話参照)からきっと倫理規定変わったんだろ。しょうがねぇよ、政治家に文句言えよ。HUNTER×HUNTERだって単行本になったらモザイク増えるだろ?」

「こんな場末で誰が気にするんだよそんな事! プロバイダー?! プロバイダーが見てるの!?」

「垢BANされたんすか真麻さんwwwwwww」

「SofTalkっぽくワラワラ言うなムカつく」

「だってwwwww規制とかwwwww」

 本当にもう日本語乱れ過ぎですよこの空間。美しい活字の日本語をもっと正しく使うべきだ。記号とかネット表現に頼るのはよくない。だから最近のゆとりは馬鹿にされるんだ。ましてやDQNネームが跋扈する昨今、名前まで西洋文化に侵されては日本人として後立つ瀬が無い。

 お陰でケータイ小説とか陽炎みたいに揺らめく不明瞭な発信源の文芸作品が高評価を受けたりする世の中になって、文化的に低レベル化を招いているじゃないか。

「あぁ、嘆かわしい……」

「今の会話からいきなり世を憂われても困るんだけどオレ。お、予鈴だ。また後でなー」

 一人頭を抱えるぼくを残し、規則正しく鳴る録音のチャイムに合わせてイオは席に戻る。丁度、担任の……えーと、名前何だっけ、忘れちゃったな。兎に角担任が教室に入ってきて、周りも自分の席に戻っていた。教卓の前に立つと、担任は先ず黒板に『森川茂』と自分の名前を書いた。

 あー、そうかそうか。森川先生か。何で忘れてたんだろ。疲れてるのかな……半年も経って担任の名前も覚えてないとか、結構不味いかも。

「えー、それでは今年からこのクラスを担当する森川です、これから一年宜しく頼む」

「ってやっぱりまだ四月じゃん!!」

 ぼくは思わず椅子を転げさせる勢いで立ち上がり、教室は疎か廊下に反響する渾身の突っ込みを入れる。

 ぼくの熱を持った言葉に対して、周りは豪く冷ややかだった。

 そしてその後ぼくは先生にしこたま怒られた。

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