幼妻元王女は、旦那様をメロメロにしたい!
「リカルド、ぎゅっとして!」
リカルドに好きになってもらうために頑張るんだからっ!
リカルドは13歳離れている、私の夫であり、この国の柱の1人。
そんなリカルドはとにかくモテる!
私と婚約している間も、たくさんの女性がリカルドを狙っていた。
家柄良し、容姿良し、器量良し。
我が国の令嬢なら一度は「リカルド様と結ばれてみた〜い!」と夢見る相手だ。
それは私も一緒だった。
幼いながらにこの人とずっと一緒にいられるんだとわかった時、すごく嬉しかったのを覚えている。
私は、先日公爵家に降嫁してきたこの国の第一王女ナタリア。
リカルドとは生まれた時から婚約していた。
歳の離れたお兄様たちと歳の近いリカルドは、次期公爵家当主として婚約者は慎重に吟味されていた。
そんな中で私が生まれたのもあって、リカルドとの婚約が決まった。
社交界で「王女のお守りをさせられている」と言われていたのも知っている。
私がいる前でも、露骨にリカルドにアピールする人もいた。
「ご兄妹のようで仲睦まじいですね」という嫌味も散々聞いてきた。
だからお父様に頼んで、成人してすぐに結婚できるように取り計らってもらった。
ようやく私がリカルドの妻になったのだ。
もうお守りだの可哀想だの言わせない!
リカルドをメロメロにして、私だけを好きになってもらうんだから〜!
「リカルド、ぎゅっとして」
「どうされたのですか?」
「私にドキドキしてほしいの!」
「えっと、殿下…?」
リカルドはあからさまに狼狽えてオロオロしている。
おかしいわね、騎士団部隊長リカルドはもっと堂々として恐れさえ感じさせるのに。
「あと敬語はやめてってお願いしたわ。もう殿下でもないの、あなたの妻なの」
「そう、だね…。ナタリア様、え〜〜〜っと」
「『様』もなしよ」
「…ナタリア、あの、それは心臓に悪いので」
「…リカルドにぎゅっとしてほしい」
リカルドは天井を仰いで、呻いた。
…そんなに嫌なのかしら。
使用人はニヤニヤしている。
執事長が「奥様を悲しませるんですか」と言うと、リカルドの顔が正面に戻ってきた。
ほんのり顔が赤い気がする、熱でもあるのかしら。
「…ナタリア」
リカルドは手を広げて私の名前を呼ぶと、そのまま腕の中に包み込んでくれた。
「リカルド大好きっ!」
私も抱きつくと、「うっ」と言う声が聞こえた気がする。
そんなにタックルしてないと思うんだけど。
「今日の夜会も、妻として頑張るから!」
「そのままいてくれれば十分だよ」
ううん、私が『リカルドの妻』ですってしっかりアピールしなきゃだもん!
他の女は全員蹴散らすつもりで行かなくちゃ!
ふぅ、新婚だからって次から次へと人が絶えないわね。
同じような夜会でも、王女時代にこんなことはなかった。
リカルドの妻として、ちゃんとしているのかを見られている。
あと、「奥様はまだお若いのでリカルド様は大変ですね」と物凄く言われた。
もれなく女性が言ってきたので、まあ負け惜しみだろう。
リカルドはもう私の夫になったの、ちょっかい出さないでよ〜!
「ナタリア、飲み物を取ってきますので、ここにいてくださいね」
そう言って、リカルドが離れていく。
それを見逃すことなく、あっという間に私はご令嬢に囲まれた。
「まあまあ、ナタリア様。相変わらず甘やかされていて羨ましい限りですわあ」
出た…、リカルドを本気で狙っていた筆頭令嬢。
何かと私に突っかかってくるのは、結婚しても変わらないらしい。
「そうなんですよ、夫は私に優しいので」
「あら、ナタリア様は元王女様ですもの。気を遣うに決まっているではないですかあ」
ニヤリと意地悪く笑み、取り巻きたちとケラケラ笑っている。
「リカルド様もお可哀想に。ナタリア様ではさぞ満足できないでしょうに」
そう言って、豊満な胸を見せつけてくる。
なによ、そんなことわざわざ言わなくたって、私が幼児体型なのはわかっているわよ。
…笑え、それで負けるな。
私はリカルドに好きになってもらえればなんでもいいんだから!
「では夫を満足させられる方法を教えてもらえるかしら?さぞ、虜にできる手腕がございますのでしょう?」
「なっ、下品ですわよ!」
先に言い出したのは、そちらじゃない。
「そんなことしなくても、私はあなたに夢中ですよ」
振り返ると、リカルドが立っていた。
「この肌の全てに跡を残しても足りないくらい、あなたしか見えていませんよ」
リカルドが珍しく口説き文句を言って、私を抱き寄せた。
そのまま髪を掬って、キスを落とした。
周囲から黄色い声援が上がる。
私は何度か瞬きをして、リカルドを見た。
「リカルド、私のこと好き?」
「はい、好きですよ」
「私ばっかり好きだと思っていたわ…」
「早く結婚したくて、ナタリアが成人したらすぐにと陛下にお願いしておりました」
それは、私がお願いしたから叶ったと思っていた。
リカルドも、同じ気持ちだったの…?
飛び跳ねたいくらい嬉しくて、でもそれじゃいけない気がして、思わず大きい声が出た。
「それではリカルドがロリコンだと勘違いされちゃうわっ!」
「ろ…」
「私はリカルドに好かれればそれでいいのよ!噂に悪評を重ねることはないわっ!ただでさえ私は童顔なのに!」
騒がしい夜会が、一瞬静まり返った。
奥の方で、ブハッと笑い出した人がいた。
あの笑い声はお兄様ね、いやね私は真面目な話をしているのに!
リカルドは一瞬固まったが、真剣な顔で言った。
「誰に何と思われようとも、この身も心もナタリアにしか向いていない。それ以外は瑣末な事だ」
ご令嬢たちの歓声と悲鳴と何人かの倒れる音で、夜会は大騒ぎとなった。
「リカルド、今日は体中に跡を残してね!」
主寝室にリカルドが入ってくるなり、私は抱きついてそう言った。
「え」
「さっきそう言っていたわ!絶対絶対いっぱいつけてね!」
「…ナタリア、それは、その、私が加減できる気がしないので」
「やだ、いっぱい愛されたい」
「…これだから、敵わないんだ」
リカルドはまた天井を仰いでしばらく帰ってこなかったけれど、私をベッドに連れていくなり、今まで我慢していたかのように愛された。
その日以来、ぎゅっとしてとお願いすると、顔を赤くしながらもすぐに抱きしめてくれるようになったのだった。
了
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