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異世界は歩くような速さで  作者: 森野 キキ


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第五話 レベル上げ

 ありえない。おかしい。普通じゃない。


 俺のレベルについて、エルシエラにこれでもかとツッコまれていた。村長もリューベルド先生も目を丸くしている。


 村長曰く、それなりのレベルの冒険者ではないと人間の居住域である王都周辺からこの村に辿り着くのは無理らしい。


 異世界転生の部分だけ伏せながら、転生後の状況をエルシエラに説明した。


「記憶が曖昧だから、レベル2だという事ももしかしてだいぶ前の事なのかもなぁ」


 笑って誤魔化す。それしか無い。


 「レベルは2だし、記憶も無いなんて……君、まるで赤ちゃんだね」

 

 エルシエラが冗談めかして言う。

 赤ちゃん……?


「ふっ」


 思わず笑ってしまった。確かに、俺の第二の人生はあの森から始まったのだ。この世界において、俺は本当に赤ん坊みたいなもんだ。エルシエラが笑い続ける俺を、不思議そうに見つめている。


「とにかく。魔獣退治に協力してくれるのなら、まずはレベル上げが必要だね」


***


 最初にラディと出会った森、コラコルン村の北に広がる、名前のない森。リューベルド先生によると、ここがレベル上げに最適らしい。

 

 というわけで、俺とエルシエラの二人で向かうことになった。 

 道中、エルシエラに俺の唯一の魔法、キャンドルフレアを披露する。


「ふぅん。珍しい魔法だね」

「珍しいの?」

「うん。私たちエルフの系統とは違うし」


 続けて、この世界の魔法について教えてもらう。ここでは空気中の精霊にお願いして力を借りるのが魔法らしい。

 エルシエラが何かボソボソと唱えたと思ったら、手のひらに小さな竜巻が生まれ、それが大きくなりエルシエラの身体を包む。そのまま、ふわりと五メートルほど浮き上がった。


「すごっ!」


 風の精霊の魔法らしい。俺も真似して風の精霊に語りかけてみたが、何の反応もない。ガッカリ。


「ケイトの魔法も、レベルが上がれば強くなるよ。使っていこう」

「うす」


 リューベルド先生やラディから聞いた大オケラ(旧モグラ虫)の群生地に到着。早速、エルシエラのアドバイスを受けながらレベル上げを開始した。


 方法はこうだ。大オケラの注目を集め、奴らが巣穴に潜っている間に木に登り……顔が出た瞬間、脳天にドン!


 三匹倒したところで……



【経験値が一定数を越えました レベル2→レベル3】


 おおっ!レベル上がった!この調子でどんどんいこう。


「武器って、それしか無いの?」

 

 エルシエラが俺の木の棒を指差す。その通り。これが俺の初期装備。


「ちょうど使ってないのがあるから、これあげるよ」


 ポーチから取り出されたのは、スリングショット。いわゆるパチンコだ。


「面白いでしょ。昔ドワーフにもらったんだけど、私は弓があるからね」

「ありがとう!」


 エルシエラからスリングショットを受け取る。

 それは黒っぽい木で出来ていて、ちょっとボコボコしているけどよくやすって何か塗料が塗られているようで、スベスベしていた。

 ゴム紐は白っぽくて紐状のものを編み込んだ感じになってて珍しい。


「このゴムのところ珍しいね」


「ゴム?あぁこれは、ポリィスパイダーの糸を編んだものだよ。弾力性があって強度も高いよ」 


 すご!蜘蛛の糸なんだ!?

 さすが異世界。未知のものが出てきてワクワクするな。

 

 さて、早速石を拾ってセットし、引っ張る!……引っ張る!!


「かっ……てぇ!!?」


 糸が強すぎて全然引けない。


「スリングショットも立派な武器だからそう簡単には扱えないよね。練習しよ?」


 エルシエラは俺からスリングショットをひょいと取り上げ、狙いを定め、ググッと引き――


 バシュッ!!!十メートル先の木に、穴が開いた。威力パない。


「やってみて」

「ぐぐぐ……」


 バシュッ!よし!二メートルは飛んだ!


「レベルが上がれば筋力も上がるよ。平行してレベルも上げよう」



***



 レベル上げを続けていると、突然後ろの茂みが揺れた。エルシエラが弓に手をかけたとき


「うわーん」


 ラディの声だった。


「ラディ!?」


 駆け寄ると、大オケラの巣穴にラディがズボッと落ちていた。こいつ、また落ちてる!


「ラディ……」

「えへへ。どんなことしてるのか気になっちゃって」


 可愛く舌をぺろっと出す。可愛い。助け出しながら、ふと気になっていたことを聞いてみた。


「ラディ、最初ここで落ちてた時、何をしてたんだ?」


 大オケラの群生地ということは村では有名なようなので、子供一人で遊びに来るには危険すぎる。


「この奥に、火がつきやすいドングリが落ちてるの!燃料にするやつ!」


 火がつきやすいドングリ……?


 ラディに案内されながら森の奥に進むと巨大なドングリの木が現れた。地面には直径三センチほどのドングリがゴロゴロ。


「すげ……」

「これ、ぜんぶ使えるんだよ!」


 ラディが広げた麻袋に、みんなでドングリを集め始める。そのときだ。ひらめいた。


(キャンドルフレアで着火して、スリングショットで飛ばしたら……)


 火炎弾、作れんじゃね?


「エルシエラ!ちょっと試したいことがある!」


 事情を話すと、エルシエラはワクワクした目で頷いた。


「やってみよう」


 ドングリをセットして


 「キャンドルフレア!」


 ボッ、と炎が灯る。


「いいじゃんこれ!」

「すごいよケイト!」


 不思議と熱くない。ドングリを持っている右の掌が黄色い光で包まれている。この光のおかげか?


「あっ!!」


 ラディの声。


 パンッ!!!乾いた破裂音が俺のすぐ近くから響いた。

 火のついたドングリが弾けて、熱が手に散った。光に守られていなかった顔にドングリの破片が当たる。


「あっちぃぃ!!!」

「ダメだよケイト!切れ目入れてないドングリは弾けるの!」


 栗かよ!


 焦っていると、エルシエラが俺の顔に手を添えた。


「大丈夫、治す」

 

 呪文を唱えると温かな光が灯り、痛みが消える。


「扱い注意ってことだね。切れ目入れて使おうか」

「うす……」


 その後は、切れ目を入れたドングリで再チャレンジ。火のついたドングリが綺麗に飛ぶたびに、ラディが「おお〜!」と声を上げる。


  ふっと肌寒さを感じて顔を上げた。

木々の合間から差す光は赤く、森は昼の鮮やかさを失い始めていた。いつの間にこんな時間になったんだろう。


「そろそろ帰ろうか」

「今日、すごく成長したと思うよ、ケイト」


 エルシエラの言葉に、胸がじんわり熱くなる。木の棒の扱いにも慣れてきたし、何よりスリングショットと火炎弾という中距離の攻撃手段が増えたのが嬉しい。

 話の流れで俺も捜索隊に参加することになったが、

これでみんなの足を引っ張らない……はず。


 よし、レベルはどうなったかな。


【経験値が一定数を越えました レベル3→レベル7】


「……は?」


 いきなりレベル7!?思わず声が裏返り、エルシエラが心配そうに覗き込んでくる。


「あ、大丈夫。大丈夫だから」


 取り繕いながら、もう一度空中の文字に目を落とす。


 いや、これ……すごくない?もしかして俺、レベル上げの天才なんじゃ……?


 ニヤけそうになる頬を必死で抑えつつ、夕暮れの森を三人で並んで帰った。

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