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異世界は歩くような速さで  作者: 森野 キキ


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第十二話 凱旋 ※挿絵あり

非道(ひど)い!あんまりだ!」


 白い狼が俺の横でワンワン吠える。体高が俺の腰くらいあってでかい。この大きさの犬の初めてでビビるけど、コボルト達に比べたら小さく感じる。可愛い。


「いやぁ狼と一緒に旅すると楽しいかなぁって考えちゃって」

「このォ……普通は同種族、もしくは人間的価値観で言ったら美麗なエルフを望むだろ!はぁ〜……こんな姿ではジョッキが持てん!」


 狼が自身の前脚を交互に見て怒る。


「まだ前の姿の記憶があるはずだ……!!むん!」


 狼がギュッと目をつぶり力を込めると、その体が白い光で包まれる。


 おぉ!?


 光が止んだ後に、白髪で金色の瞳の少女が立っていた。身長はエルシーくらいだ。


「ふふん。造作もないわ」

「あの、まだ耳と尻尾が残ってるけど……」

「何ッ!?あぁ……でももう力は出し切ってしまった……」


挿絵(By みてみん)


 しょんぼりとしながら自身の尻尾を撫でる。体のほとんどが白い被毛で覆われていて、暖かそうだ。


「なんの種族なんだ?」

「知るかッ!!お主が変な姿にするからッ……!」


 犬耳少女も悪くないぞとフォローした。


「いや、この姿は一時的なものだ……。この姿を保つには魔力を使うから……ハァ……」


 白髪の少女はため息をついた。


「それで、名前はどうした?」

「あぁ、シロにした」

「し、シロ!?」

「あぁ、前に飼っていた犬の名前」


 少女がカッ!と目を見開いて俺に詰め寄ってきた。


「お主は!!なんて名をッ……!!」


 ワナワナと震えている。


「別のにしろ」

「えー!?でも契約時に……」

「うるさい!嫌なものはいやなんだ!」

「えー?うーん……別の名前ねぇ」


 女の子の名付けなんてしたことが無いから引き出しが空っぽだ。


「……ルーヴェンのままでもあり?」

「……まぁこの姿も引き継いだ事だし、名もそのままでもありっちゃありか……?」

「結構緩い契約なんだな」

「う、うるさい!前代未聞だぞ!こんな事!もういい!ルーヴェンのままにする!」


 そう言うとルーヴェンはシュルシュルと狼の姿に戻った。伸びをしながら欠伸をする。


「力を使い過ぎた。しばし寝る」


 そう告げて遺跡の壁の方へ行きくるくると回ってからストンと寝転んだ。その姿は完璧に犬……。

 俺も少し休もうとそのすぐ横に腰を下ろした。



 ***



「――ト殿。ケイト殿」


 トントンと肩を叩かれて目が覚めた。

 目の前にはこげ茶色の毛並みのガブールだ。もう日が昇ったようで周りが明るい。


「あ、ごめん。寝過ぎた?」


 目を擦りながら欠伸をすると、誰かがかけてくれた毛布が肩から落ちた。ガブールは困ったような顔をしながら俺の隣を指差す。


「あの〜……この狼は一体……?」


 横の狼……ルーヴェンはスヤスヤと寝ている。ガブールは拾ってきたんですか?なんて聞いてくる。


 なんて説明するか悩んでたらルーヴェンが起きたので、みんなが居る所で説明することにした。

 簡易テントまで戻るとアステラの姿が無かったので尋ねたら、どうやら先に村に状況を知らせに戻ったらしい。

 黙って出てきてしまったから村長やアミュラが心配しているかもしれないな。

 朝食を食べながら昨夜あったことを話したらみんな目を丸くして驚いた。


「ケイトさんは不思議なものを呼び寄せる才能があるのですか……?」


 エルフにドラゴン、どちらもこの周辺では見かけず、もちろん交流も無いからとても珍しいらしい。


「それを言うならケイトが一番不思議なものだ」


 ガルードの言葉にみんな確かにそうだと笑った。

 朝食を終えると簡易テントを解体し、村への帰路に着いた。



 ***



『おい』

「ん?」


 帰路の途中、森を進んでいると頭の中で声が響いた。先を歩いているコボルトたちが足を止め、こちらを不思議そうに見た。


「何かありましたか?ケイトさん、」

「いや、ごめん。何でもない」

 

 リューベルド先生の問いを誤魔化すと、またみんな前を向き歩き出す。


 『ばか。念話もわからんか』


 頭に響くのはルーヴェンの声だった。念話なんてしらん!


 『普通に話しかけてくれよ。びっくりした』

 『コボルトらに聞かれたくなかったのでな』


 ルーヴェンは目も合わせず歩きながら続ける。


 『お主が転生者であることは絶対に隠せ』


 ルーヴェンは俺が転生者だと知っていた。


 『なんで俺が転生して来たってわかるんだ?』

 『お主とエルシエラの会話が聞こえておった。そもそも、コボルト語と共通語を話せる能力がありながら、こんなに非力な若造がどこにおる。はっきり言ってお主はこの世界の基準では異質中の異質』


 どんぐりに転生するエルフや指輪で契約するドラゴンより異質なのか!?


『詳しくは後で話すが、転生者一人で今のこの世の情勢が変わってしまう。特にここの村の住人に気付かれると不味いことになる』

『ここの村の住人に?』

『そうだ。コボルト族は魔族側の勢力だ』


 魔族側!?


『そ、そんなことないだろ!?だって、俺、人間なのに村のみんなは優しくしてくれるし、今だってエルシーの為にお前を助けに……』


 そうだ。人間を受け入れて、エルフに助力してくれたんだ。


『ここの村の事情は知らんが、基本的にコボルトは魔族側だと言うことだ』

『そんな……』


 ルーヴェンによると基本的に亜人種は魔族側、エルフやドワーフは人間側に属しているそうだ。


 ちょっとショックだった。これから王都を目指し、冒険者としてギルドの仕事とか請け負おうと思っている。

 その中できっと魔族と人間の争いに関わることは避けられないだろうし、エルシーに頼まれた学長に会ったら、それこそ転生者として振る舞わなければならないだろうし……。

 俺はコボルト族と敵対するなんて考えられない。


『お主が好きなのはここの者たちだろう?』


 ルーヴェンが言うには、コボルト族は狡猾で獰猛な種族で人間とは心底相性が悪いらしい。そう言えば、エルシーも同じ様な事を言っていたのを思い出した。


 『そういうコボルトを見ると考えが変わるぞ』


 うーん……。それでも、俺は……


「ケイトさん!」


 リューベルド先生に声をかけられてハッとする。


「みんなが迎えに来てくれたようです」


 前方を見ると、よく見知ったコボルトたちがこちらに手を振って「おかえり!」と声をかけてくれている。アミュラにラディも居る。もう村が近いんだろう。足元にはどんぐりがたくさん落ちていた。 



***


 村の集会所で事の顛末を話した。


「そうですか……。エルシエラ殿のことは非常に残念です」


 村長やアミュラはエルシーがどんぐりの姿に転生したことを悲しみつつ、ルーヴェンが無事に帰ってきたことを喜んでくれた。


「ルーヴェン殿が攫われたと聞いて、我々は無事では無いと思っていたが、お強い方だったのですな」

「攫われた時はエルフの姿だったし、不意打ちで不覚を取ったのだ」


 ルーヴェンは通訳の俺を介さずに村長と会話していた。このことにみんなは驚いていたがルーヴェン曰く、狼の口の構造とコボルト族の口の構造は似ているから発音しやすいらしい。


「それで村長、魔獣についてですが――」


 ぐぅぅぅぅぅ


 誰かの大きなハラの音が鳴り集会所が静まり返った。


「我じゃないぞ」


 ルーヴェンだ。


 *** 



「ルーヴェン殿の無事とエルシエラ殿の転生を祝おう!」


 エルシエラがどんぐりになったことを余りにもみんなが悲しむのを見かねてか、ルーヴェンが長命のエルフと短命のコボルトでは死生観が違う、エルフにとって転生することは喜ばしいことだと説明するとみんな明るさを取り戻してくれた。

 集会所の食堂には、今回の魔獣討伐に参加した面々が集まってテーブルを囲んでいた。

 テーブルの上はもちろん肉フェス状態。

 

「ゴクゴクッ……ハーッ!」

「あ!もう飲んでる!」

 

 ルーヴェンは犬耳少女の姿になり、ちゃんと服を着てコボルト特製の蜂蜜酒を飲んでいた。木のカップに注がれたそれにはベリーやハーブが浮いている。


「お主もやるか?」


 ルーヴェンがこちらにカップを突き出してくるが、あいにく未成年だから断った。


「乾杯!」


 村長、リューベルド先生、ダイチ、アステラ、ロッシュ、ブルクナー、ガルード、ガブールそれに瀕死の負傷をしているように見えたオルネイまでいてみんな杯を掲げて乾杯した。


「オルネイ、もう大丈夫なのか?」

「あぁ、一日寝たらだいぶ傷は塞がったよ。まだちょっと痛いけど」


 コボルトの回復力ほんとどうなってんの!?


「お待たせいたしました」


 キッチンにいたアミュラに、ガブールとガルードが呼ばれて行き、二人は焼き上がったばかりのデカい鶏の丸焼きを持って戻ってきた。目の前に置かれるとそのデカさにビビる。一メートルはあるだろう。こんがりと焼かれてて、とろみのあるタレがかけられている。


「これはコカトリスの雛の丸焼きです。果実と蜂蜜などで作ったタレに漬けてから焼いてあります」


 アミュラが説明しながら切り分けてくれる。雛でこの大きさなら、成体はとてつもなくデカいのだろう。アミュラは大きなナイフで切り分けたモモの部分を俺の皿に置いてくれた。


「いただきます!」


 手を合わせてそのまま骨を持って齧り付く。ジュワっと脂が出てきて肉の旨味とタレの甘みが口の中に広がった。ルーヴェンは切り分けられた肉を器用にナイフとフォークを使い食べた。


「うむ。肉の種類によって味付けを変えているのだな。見事だ」


 なんて言いながら蜂蜜酒と肉を次々に口に運んでいく。俺も負けじとナイフとフォークを使いお上品に肉を口に入れた。

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