たまには気分を入れ換えて…
「たわけ!」
「ひゃわわ!」
カタカタとキーボードを打ち込む音が雷火さんの怒声でかき消される。俺は何をしてるのかって?雷火さんに頼まれた書類の整理を雷火さんの執務室でしている。自室でやっても良いのだが、不明な所は雷火さんに確認しないといけないのが面倒で雷火さんの執務室で作業すればいちいち行ったり来たりしなくて楽じゃね?と思ってココで作業をしている。そして今、初歩的なミスをした包に雷火さんの雷が落ちた。
「雷火さん…もうそこまでにしときなよ。包も反省してるし。」
「おお、玄助さんは良い事いいますねー!叱られてる時間があるなら仕事に回した方が良いですからねぇ…」
「包?思ってても口に出しちゃダメだぞ?」
「ほう?包は儂の注意は無駄な小言じゃと言いたいのじゃな?」
「あ、その、今のはパオの本音ではなく…」
「たわけ!嘘をつくな!」
「ひゃわ!」
ほらー…火に油を注ぐー…まぁ俺は口に出さないけど…
「雷火さん?ただでさえ戦後処理があるんだからお叱りはそこまでにしとこ?まずは仕事だよ。」
「全く…お主は包に甘いの。」
「包を庇うワケでもないけど…今は仕事優先ってだけ」
「お師匠様聞きました?パオの事を庇うフリして仕事に誘導してますよ?」
「包?雷火さんに叱られるのと、仕事するのだったらどっちが良い?」
「そりゃお仕事ですよ!パオのお役目ですからね!」
「なら、その分仕事で挽回しなよ。雷火さんもそれで良いでしょ?」
「ふむ…仕方ないの。玄助は口も出しながら手は止めておらんし…包、我々の仕事は地味じゃ、手柄を立てたいのは分かるが、今は自分の仕事に集中するんじゃな。」
「わっかりましたー!」
そうして席に戻る包。案外単純なのかもな…。カラカラと竹簡の音、サラサラと筆の音、そして場違いなカタカタという音…
「のう、玄助?」
「はーい?なに?」
「それは本当に文字を書いておるのか?」
「もちろん。ほら。」
雷火さんの執務室に持ち込んだノートPCの画面を見せる。
「む、文字が小さいの…少し見にくい…」
「え?もしかして老眼?」
「たわけ!そこまで老け込んでおらんわ!」
「あー…ごめんなさい…」
「ふむふむ…きちんと書けておるようじゃな…」
「でしょ?」
「しかし、聞きなれん音は不思議じゃ…」
「まぁ、そうだよねぇ…。てか、雷火さんも包も休憩しようよ。お茶淹れるから。」
「あの、こぉひぃと言うものですか?アレはパオは苦手ですねー」
「儂も同意見じゃ。」
「あー…今日はコーヒーじゃなくて紅茶。この大陸から西の方へ行った国のお茶だよ。」
「ほう?ならば茶なのじゃな?」
「そそ、すぐ用意するね。」
そしてアイスティーを用意する俺、ガムシロップとミルクも忘れずに…
「はい、どーぞ。冷たいからね?」
「うむ。」
「冷たいお茶ですか、珍しいですねー」
「まぁ飲んでみて。」
「では、パオからいきまーす。コクコク…んー。風味豊かですね。大陸のお茶とは違う香りがします」
「では儂も…コク…。ふむ…確かに風味が違うの。色も茶というよりは赤じゃの」
「そそ、赤いから紅のお茶と書いて紅茶。」
「なるほどー。」
「ふむ…これは、こぉひぃよりも飲みやすいの。冷たい茶というのも良い。」
「最近暑いからねー…」
そう言いながらタバコを咥えると…
「玄助、タバコを吸うなら窓際で吸え。煙くなる。」
「はーい。」
窓際で一服…
「ふぅー…」
なんだろう…最近事務仕事ばかりだからか、タバコがいつもより美味く感じるな…気のせいかな?
「玄助さん。パオにもソレを少し分けてくださいよー」
「ん?包も吸うのか?」
「少し興味がありましてー…玄助さんが美味しそうに吸っているので余計にー。」
「んじゃ、1口吸ってみ?」
吸いかけのタバコを渡す
「えー…ケチですねー。」
「吸ったことないやつに1本渡せるか。むせるに決まってる。」
「そんなことないですよ!パオはなんでも完璧なんですからね!」
「んじゃ吸ってみ?」
「いきますよー。すぅー…っ!?ゲホ!ゴホ!」
「ほらな?」
「ケホ、コホ…よくこんなの吸えますね。」
「だから言ったろ?むせるって、ほらお茶でも飲め。」
「お師匠様ー。玄助さんは意地悪ですよー…」
「たわけ、玄助は先に注意しとったじゃろうが。それを聞かなかったお主が悪い。」
「えー…パオのせいですかー?目に付くところで美味しそうに吸ってる玄助さんが悪いですよー。」
「人を悪者扱いするな。俺の仕事を包に投げるぞ?」
「あ、それだけはやめて下さい。」
「だったら文句言うな。そもそも包から吸いたいって言ったんだぞ?」
「そこまでじゃ。玄助、吸い終わったのなら仕事をせい。包もじゃ。」
「「はーい」」
そうして俺たちは日が暮れるまで仕事をするのだった
久しぶりに雷火さんと包が出てきた気がします。まぁ書いてるの自分なんですけど…




