え?騙したなぁー!
玄助まさかの戦場に?
自室でのんびりと一服していると…部屋の扉が開く
全く…一声かけて欲しいモンだけど…
「おう、三船。ここに居ったか。」
「祭さん…いきなり入ってくるのやめてよ…せめて一声かけてから」
「分かっておるわ、ほれ急ぎの用じゃ、早う支度せい」
「支度?どこ行くの?」
「どこって賊の討伐に決まっとるじゃろ」
「は?それは祭さんと穏の担当でしょ?」
「大殿からの命でな、お主にも戦場の空気を感じさせろとの」
「はぁー!?ンなの初耳なんだけど…」
「おう、じゃから今言うた。ほれ行くぞ」
そう言って祭さんは俺の首根っこを掴んで城門まで連行していく
「マジで行くの?俺戦えないよ?」
「お主には期待しておらんし、戦場の空気に触れるだけじゃ、戦慣れはしとかんとな」
「ンな…くそう…騙されたぁ…」
「ソレにお主の牙門旗も出来ておるじゃろ?お主の初陣じゃ。まあ、相手は賊じゃが不足はないじゃろ。」
「確かに作ったけどさあ…でも今日使うなんて…心の準備が…」
「なに、お主は本陣の後ろに居れば良い儂の精鋭50人をつける。安心じゃろ?」
「安心って戦場に安心出来るとこあるの?」
「無いのぅ…まぁ賊ごときに本陣が抜かれることはあるまい。お主は見ておけば良いのじゃ。」
「まぁ…戦わないでいいなら…」
「あんなにゴネて居ったのに馬に乗った途端に落ち着いたのぅ…」
「もうヤケクソだよ!全く…今日も商売しようと思ってたのに!」
「はは!文句なら大殿に言うべきじゃのう」
「う、炎蓮さんに文句なんて言えないよ…保護してもらって、商売も許可して貰ったんだから…」
「なら覚悟せい。ほれ行くぞ」
そうして500の兵と共に行軍する。と伝令から報告がある。
「報告します!約5里程先に賊らしき集団を発見。どうやら邑を襲った後の様です。」
「ふむ…遅かったか…しかし急ぎ賊の討伐をするぞ!全員駆け足!」
「「応!」」
そうして数十分…賊らしき集団を見つける
あれは戦利品か?女性も居るな…ちっ、胸糞悪い…
「あやつらはまだ此方に気付いておらん。その上戦利品を持ち運び足も遅い!仕掛けるなら今じゃ!」
「祭様の仰る通りですぅ〜。賊の横っ腹に突撃してください〜」
「(討っていいのは討たれる覚悟のあるやつだけ…)三船隊も続くぞ!」
「お待ちください!我々は後方での待機との命を受けております。それに御使い様になにかあれば我々の責になります!」
「それでも!みんなが戦ってるのに後ろで見とけってか?それにお前らも黄蓋隊の精鋭だろ!賊に遅れを取るとは思えん!行くぞ!」
剣を抜き本隊の突撃により混乱している賊の後方に回り、退路を断つように部隊を動かし、逃げてきた賊の数人を斬り捨てる。
「天の御使い此処にあり!天罰を喰らいたいやつはかかってこい!」
「ンな!あやついつのまに隊を動かしたんじゃ!後方で待機しておけと言っておったじゃろ。」
「でもでも〜玄助さんのおかげで賊の退路は一時的に絶たれました〜今なら殲滅する好機かと〜」
「あやつは後で叱るとして今は賊の殲滅じゃな!お前ら気を張れ!賊を殲滅するのじゃ!」
「「応!」」
それから二刻後、戦闘は終了した。
俺は数人討ち取った。
「はは…賊とは言え、討ち取ったのは確かだ…あーあ…コレで俺も人殺しかぁ…」
平和な日本ではまず有り得ない、剣で斬った感触、賊の死に際の顔…全てが脳裏に焼き付いている…
はぁ…戦場の空気に当てられたな…まさかあんなに興奮するとは…。
「はぁ…やらかした…」
「三船!どういう事じゃ!お主は後方で待機せよと儂は申したじゃろうが!」
「はい…ごめんなさい…」
「全く…大方、戦場の空気に当てられて何も考えずに突っ込んだのじゃろう…。普通は怖がるか怯えるかするのじゃが…お主は違ったようじゃのう…」
「違うってなにが?」
「本能で動いたのじゃろうが、敵の退路を一時的にも潰し殲滅する。そのような判断は出来る。もしかしたらお主は武官の才がありそうじゃな」
「いやいや、もう戦は懲り懲りだよ、血なまぐさいし、また、ああなって敵陣に突っ込むのは嫌だな…」
「しかし、お主、初陣の割には随分と冷静じゃのう?経験でもあるのか?」
「いや、戦の経験は無いけど…一応俺…無手で人を殺せるくらいの力はあるからさ。まぁコッチで使えるか分からないけど…」
「なるほどのぅ…その力を手に入れる時に命を奪う心構えが出来ておったのかも知れんな。」
「でも、返り血浴びて気持ち悪い…。臭いし…終わったなら早く帰ろう?」
「待て待て、戦が終わった、はい帰ろう。では無いのじゃ。損害報告と賊がどこから来たのか、どの邑を襲ったのか、様々な情報を手に入れなければならん。」
「まだそんなに仕事があるのか…ほんとに俺は無知だなぁ…」
「まぁしかし、三船よ、良くやったの、本陣に天幕がある。そこで休んでおけ。」
「はーい。」
それから本陣に張られた天幕に入り一服する。人殺したってのに…いやに冷静だな俺…まだ現実味が無いのか?それとも…祭さんの言ってた人殺しの術を身につけた時に、命を奪う覚悟が出来てたから?自分でも分からん…しかし、冷静であることには変わりない…。これから俺はもっと多くの命を刈り取ることになるだろう…これからは群雄割拠の時代だ…殺らなければ殺られる…ワガママは言ってられない。
「よっしゃ!孫呉発展の為に尽力するって誓ったし、元々孫呉はキャラが少なかったし…戦力はいくらあっても足りない。孫呉発展の為に俺は全力を尽くすだけだ!」
1人天幕で気合いを入れる。これから文官としてか武官としてかどうなるか分からないけど…俺にやれることをやっていこう。
裏で炎蓮さんは玄助を戦に慣れさせる様に手配してました。この前の朝議で玄助の名前を出さなかったのは油断させる為です。そして無理やりにでも連れて行けば、覚悟を決めるだろう。と言う考えの元、事後報告としました。