なんだ…普通の兄妹か…
「お兄ちゃんー。」
早朝、ドアの外からお兄ちゃんに声をかける
「ぐぅ…」
「あれ?居ないのかな?もしかして寝てる?」
「んが…ぐぅ…」
「ソーっ…って寝てる!」
「ん?んんー…なんだ琴音…こんな時間から…ふわぁ~…」
「こんな時間ってもう朝だよ?」
「何時だ…?」
腕時計を確認すると7時と表示されている…
「それで…お兄ちゃん…」
「なんだ?」
タバコを咥えながら聞くと…
「私と手合わせしてよ。」
「お前とー?うーん…」
「ね?いいじゃんかー…」
「んー…まあ、たまには良いか…」
「やった。」
「んじゃ、庭に行くかー…」
「はーい。」
そうして庭に出ると…
「ふっふっふ…お兄ちゃんに私の実力を見せる時が来たねー。」
「おう、かかってこい。」
「行くよー。」
そうして琴音の一撃を受けると…
「うお!?重てぇ!」
「そりゃそうだよ。私この世界の武将と同じくらいの身体能力があるんだよ?」
「あー…そうだった…。でも武将の身体能力があったところで…琴音の動きは読める!」
「力押しでー。とりゃ!」
「ぐ…くっそ…調子に乗りおって…小癪な…」
「ふっふっふ…いくらお兄ちゃんが強くても今の私には勝てないでしょ。」
「無い胸を張るな!」
「失礼な!これでもあるもん!」
「寄せて作った谷間は谷間とは言わん!」
「じゃあ…お兄ちゃんは私の谷間が養殖とでも言うの?」
「ああ、ここのメンバー見れば分かるだろ。」
「うぐ…皆、大きいもんね…でも、今はそんなの関係無い!」
「そうやって挑発に乗るから直線的な動きになるんだ。よっと。」
真っ直ぐ飛んできた右ストレートを手のひらで受け止め小手を返し合気道の様に投げる
「きゃん!いったーい…」
「ほい。一本。」
「うう…負けたぁ…」
「お前は挑発に乗りやすいからな…」
そう言いながら地面に倒れている琴音に手を差し出す
「うう…悔しいなぁ…」
「あれ?玄助に琴音?」
「ん?梨晏?」
「あ、梨晏さん。」
「何してたの?2人で。」
「お兄ちゃんと手合わせをしてて…」
「へー…それで?」
「俺の勝ちだな。」
「あはは。やっぱり琴音じゃお兄ちゃんには敵わないか」
「うう…身体能力向上してるはずなのに…なんでぇ…」
「そりゃ、お前身体能力だけでやってたら隙だらけになるぞ?攻撃も直線的だし…」
「それはあるかもねー…琴音も戦の経験は無いだろうし…」
「やっぱり、戦って違うの?」
「ああ、こんな仕合が可愛く思えるくらいにな。相手も命掛けてるからな…死ぬ気で攻撃してくるぞ。」
「そっか…それはそうだよね…」
「でも、琴音も戦に出さなきゃいけないくらいの事態なんだよねえ…」
「え?そうなの?」
「ああ…実は…この大陸で恐らくだが…ネクロマンサーらしき人物がゾンビやら魔物やら召喚してるみたいでな…」
「そんな三国志聞いたことないよ…」
「三国志の登場人物全員が女性になってる三国志…聞いたことあるか?」
「無いけど…でも性別の転換くらいなら分かるけど…ネクロマンサーは流石にファンタジー過ぎない?」
「それは俺もそう思う。」
「ねくろ…ふぁんたじー?」
「あー…えっと…死霊術師の存在が現実的では無いって話し。」
「あー。なるほど。」
「んー…でもなんで私が召喚されたんだろ…」
「んー…そうだな…」
2人で唸っていると…
「琴音が来たのってその死霊術師?の存在が確実的になってからじゃない?」
「あー…確かに…」
「え?そうなの?お兄ちゃんが来た時からネクロマンサーが居たワケじゃないの?」
「俺が来た頃は三国志で言う初期だったから…黄巾党とか…」
「ふむふむ…その時は普通だったんだね…」
「ああ。しかし…琴音と関連があるとして…相手の正体が不明なままだぞ?」
「あー…そっかー…」
「でもさ、そのお陰で私はお兄ちゃんに会えたワケだし、全部が全部悪いワケじゃないよ?」
「ふむ…確かに…」
「琴音はさ、玄助のどんな所が好きなの?あ、お兄ちゃんとしてね?」
「んー…私の言う事を始めから否定せずに間違ったことを言っても1回受け止めてくれる所かなー…。あとお兄ちゃんは良く私のこと褒めてくれる!怒ると怖いけど…それでも、私にとっては強くてカッコよくて、頼れる自慢のお兄ちゃんだよ!」
「へー?玄助、良かったねー。」
「なにニヤニヤしてんだよ。」
「いやー…微笑ましいなーと。」
「梨晏さんはお兄ちゃんのどんなところが好きなの?」
「うえ!?わ、私?えーっと…」
「いきなり梨晏に振るなよ…」
「だって梨晏さんも私の義理のお姉さんのなる人だよ?ちゃんと知っておかないと…」
「そっか…私が玄助と結婚したら…琴音は妹に…」
「おーい…梨晏ー?帰ってこーい。」
「うへへ…」
「あ、ダメだこりゃ…」
「お兄ちゃん。ご飯食べよー。お腹空いちゃった…」
「あー…そうだな…」
そうして妄想の世界に行ってしまった梨晏を放置し、食堂へ…
「いただきまーす。」
「いただきます。」
「うわぁ…コレ美味しいよ。」
「うん。いつも通りだな。」
「お兄ちゃん…面白くない…」
「食事に面白さを求めるなよ…」
「可愛い妹が目をキラキラさせて美味しいって言ってるんだよ?」
「ああ、そうだな。モグモグ…」
「肯定しながら私のおかず取らないでよ。」
「お前が美味いって言うからどんなモンかとな。」
「お兄ちゃんと同じヤツじゃんかー…」
「いや、何か違うのかなと…」
「そんなワケ…ってお兄ちゃんが食べたいだけでしょー!ダメー。コレは私のー!」
「はいはい…。んじゃ黙って食え。」
「お兄ちゃんって変なとこクールだよね…」
「そうか?」
「うん。たまに本気なのか冗談なのか分からなくなる。」
「うーん…。俺でも分からん。」
「そりゃ、お兄ちゃんは無意識かも知れないけど…こっちは堪ったモンじゃないよ?」
「そりゃすまんな。っとご馳走様。」
「お兄ちゃん…変わらず早食いだねえ…」
「待っててやるからゆっくり食え。」
「はーい。」
「しかし…この後どーするかな…」
「私、街に行きたい。」
「何か欲しいモンでもあるのか?」
「んー…特別欲しい物は無いけど…色々見たいなーって…」
「ウインドウショッピングね…了解。案内してやる。」
「やった。お兄ちゃんとデート♪っとご馳走様でした!」
「よし、んじゃ行くか。」
「うん!」
そうして琴音を連れて城下へ繰り出す。そしていろんな店を見て…兄妹水入らずを楽しむのであった。