完璧なお姉さんはドコに…?
「えーっと…この書類は冥琳で…コッチは粋怜…」
俺は今、自室で書類の整理をしていた…
「あ、コレ…粋怜の確認が必要だな…粋怜ドコに居るんだろ…」
そうして書類を持って粋怜を探すこと数十分…
「ドコにも居ない…おかしいなあ…てか、今日粋怜仕事だっけ?」
ウンウンと唸っていると冥琳に声を掛けられる
「どうしたのだ三船」
「あ、冥琳。今、粋怜を探してて…」
「粋怜殿なら今日は休みのはずだが…」
「ホント?」
「ああ、昨日と言うより今日の朝方に帰って来ていたぞ。」
「分かった。じゃあ粋怜の部屋に行ってみるよ。」
「ああ。」
そうして粋怜の部屋へ向かうが…
「あれ?そう言えば…俺、粋怜の部屋知らない…」
こんなに長い間、この城に住んでるのに粋怜の部屋だけは知らない…ドコだ…?
「あ、玄助ー。」
「おお、シャオと亞莎。」
「どうされたんですか?」
「えっと…粋怜を探してて粋怜の部屋知らない?」
「粋怜様のお部屋でしたらあちらの角を曲がって二番目のお部屋です。」
「おお、ありがとう亞莎。」
そうして教えてもらった部屋へと向かう…玄助
「亞莎…私知らないよー?玄助に粋怜の部屋を教えるなんて…」
「何か問題でも…って、ああ!?」
「まあ、遅かれ早かれ玄助にはバレるだろうし…良かったのかなあ…」
「どうしましょう…」
「まあ、玄助のことだし大丈夫でしょ。」
そうして亞莎に教えてもらった粋怜の部屋に着くと…扉の外から声をかける
「粋怜ー?居るー?」
あれ?居ないのかな…
「でも粋怜…朝帰りしてたって冥琳が言ってたし…寝てるのかな…?」
ノックもして確認する
「粋怜ー?入るよー?」
居なければ部屋の鍵は閉まってるはずだし…そうして扉に手をかけると、扉は簡単に開く…がソコには…
「ぐぅ…すぴー…」
「なんじゃ!この惨状は…」
あちらこちらに物が散乱しており粋怜はなんとか人1人眠れるスペースで高いびきをかいていた…
「粋怜…ああ…俺の完璧なお姉さん像が崩れて行く…」
まさかここまで散らかってるなんて…
「粋怜。起きて。粋怜…」
「ん…んー…?あれぇ…玄助くん…なんで私の部屋に居るのー…?夜這い?」
「違うよ!全く…コレ、この書類を粋怜に持って来たの。」
「あー…ご苦労さまー…確かに受け取ったわー…あふ…」
アクビをしながら書類を受け取り荷物の山の中に放り込む粋怜…そして…
「ぐぅ…」
「また寝たし…あの完璧お姉さんはどこ行ったんだ…」
「すぴー…んん…ぐぅ…」
「粋怜…マジか…」
あられもない格好で寝ている粋怜を見ながら俺は現実を受け止められなかった…そしてゆっくり粋怜の部屋を出て…
「粋怜…はあ…」
何故だろう…イメージは崩れたけど…彼女も完璧な人間では無いのだと少し安心している自分が居る…
「仕事しよ…」
そうして自室に戻り仕事をする。
「三船。頼んでおいた書類はどうだ?」
「ああ、冥琳…もうすぐ終わるよ。」
「そうか…三船…粋怜殿の部屋を見たか?」
「あー…うん…」
「そのなんだ…失望したか?」
「いや、粋怜も完璧な人間じゃないんだと少し安心した。」
「そうか…」
冥琳はホッと息を吐く…
「さて、これで終わり。あとは出力するだけー…」
印刷ボタンを押し書類が印刷されるまで待つ
「今、出してるから冥琳はもう少し待ってて。何か飲む?」
「ああ、頂こう。」
「しかし…粋怜の部屋…綺麗にしなくて良いのかね…粋怜…床で寝てたよ?」
「まあ…そこは…本人次第だな…」
「うーん気になる…よし、粋怜の部屋掃除してくる。」
「いや…そこまでお前がせずとも…」
「粋怜を床で寝かせるワケにもいかないでしょ…大きなお世話なのは分かってるけどさ…」
「確かにそうだが…」
「粋怜が嫌がったらやらないよ。」
「ああ。」
「じゃあ、ほい。書類。んじゃ、俺は粋怜のとこ行ってくる」
「まあ…頑張れ…」
「おう。」
そうして夕方…また粋怜の部屋の前で
「粋怜ー。起きてる?」
返事は無い…
「入るよー?」
そうして粋怜の部屋に入ると…粋怜はまだ寝ていた…
「すぴー…ぐぅ…」
「はあ…粋怜。起きてー…」
「んん…。んー?玄助くん…?」
「粋怜…もう夕方だよ?こんな時間まで寝てたら夜眠れないよ?」
「もうそんな時間なのねー…。」
「朝帰りなんてするからだよ…」
「玄助くんー…お水ー…」
「水?」
「お姉さんノド乾いちゃったー…」
「はあ…全く…どこ?」
「それ。その瓢箪。」
「よいしょっと。はい。」
瓢箪を取って渡す。
「飲ませてー…」
「なんでさ…水くらい自分で飲めるでしょ?」
「二日酔いでフラフラするのよー…お願い…」
「仕方ないなあ…」
キュポンと栓を抜いて飲み口を粋怜の口に持って行く
「ンク…ンク…ぷは…生き返るー…」
「粋怜…この部屋…掃除しようよ…」
「あはは…私、掃除苦手なのよねえ…」
「はあ…俺も手伝うからさ。掃除しよ?寝台で眠れないと身体も痛いでしょ?」
「それはそうだけど…でも玄助くんが手伝ってくれるなら百人力ねー」
「じゃあ、掃除するよー」
「はーい。」
そうして掃除をすること1時間…
「ふう…こんなモンか…」
「すごーい、こんなに綺麗になって…」
「粋怜は片付けが苦手なんだな…俺は荷物の整理をしただけだし…」
「それだけでここまで綺麗になるのねー。」
「整理整頓はちゃんとしないと…」
「そう言えば…玄助くんの部屋も綺麗よねー…」
「まあ…定期的に掃除してるし…」
「偉いわねー玄助くん。」
「そりゃお城から借りてる身分だし…綺麗にはしとかないと…」
「玄助くんは几帳面なのねー。私の部屋も綺麗にしてもらったし…今日はご飯奢ってあげる。」
「ええ?大丈夫だよ?世話焼きな性格なだけだし…それにお礼が欲しくてやったワケでもないし…」
「ここまでしてもらったんだからお礼はさせて頂戴。」
「んー…粋怜がそこまで言うなら…」
「それじゃ、城下に行きましょ?美味しいお店知ってるのよー。」
「分かった。それじゃあ粋怜は支度があるだろうから俺は廊下で待ってるよ。」
「あら?見ても良いわよ?」
「少しは恥じらいを持とうよ…」
「お姉さんは恥ずかしい身体してないもの。」
「はいはい。それじゃ、俺は廊下に居るから…ついでに一服してるよ。」
「はーい。出来るだけ急ぐわね。」
「ゆっくりで大丈夫だよ…」
そうして廊下に出てタバコを咥える…粋怜が片付けの出来ない人だったとしても…こんなので冷める程、俺の愛は軽く無いんだよなー…と考えながら一服するのであった




