本採用試験合格!
「はあ…」
「どうしました?誠さん。」
「いえ…その…試験をどうしようかと…」
「あー…本採用試験ですよね?三船様はいつも突然思いつくから…でも契約取れば良いだけですよね?」
「はい…そうなのですが…他店からすればウチは競合相手…上手く契約を取れるかどうか…」
「動いてみないと分かりませんよ?私だって三船様に憧れて、動いて、そしてこのお店で働くことが出来てるんです。自分から動かないと…って私が言っても大きなお世話ですよね。」
たはは…と月詠さんは笑っている…そうだ、私だって月詠さんや主様に憧れて、このお店で雇っていただく為にここまで来たんだ…このまま無理でした…なんて、主様をガッカリさせてしまう…主様に失望されたら私は立ち直れない…やれない…とか、やれるとか…そんなのじゃない…やるんだ…
「私…頑張ります…主様や月詠さんの期待に応えるために…」
「はい!頑張ってください!」
「よし…やるぞ…」
そうしてやる気を出して、気合を入れて、玄関まで行く…とそこには…
「おう、誠。行くのか?」
「はい…」
「そうか。まあ頑張れよ?しかし、くれぐれも無茶はしないようにな?」
「はい…!」
そうして誠は出かけて行く…ソレを見送った俺は…
「誠のやつ気合入ってるなあ…」
「誠さん大丈夫でしょうか…?」
「月詠?ああ、誠なら大丈夫さ。きっとな」
「はい!でも…なんで三船様が?今日お休みですよね?」
「ああ、出来るだけ過ごしやすいように色々しようと思ってな。」
「色々?」
「ああ、まあ、簡単な改築かな?」
「改築?」
「おう。空調設備に小型の冷蔵庫を月詠と誠の部屋に設置しようと思ってな。」
「お店のようにするってことですか?」
「そういうこと。部屋はリラックス…じゃない…えーと…自分1人の空間で出来るだけのんびりしたいだろ?」
「それはそうですけど…」
「だからより過ごしやすくするのさ。それにそろそろ暑くなるからな。夜、暑くて眠れませんでした…とか、そんなことが無いようにな。」
「なるほど…でも窓を開ければ良いのでは?」
「毎回、風が入ってくるか?」
「あー…いえ…」
「だろ?空調はあれば便利だし、真夜中に窓を開けっ放しで寝なくてもいいから防犯にもなる。」
「なるほど…」
「もし、覗きとかあったら嫌だろ?」
「それは嫌ですね…」
「だから、空調設備。それに小型でも冷蔵庫があれば自分の部屋で飲み物とか冷やせるしな。」
「なるほど…三船様は色々お考えなのですね。」
「ホントはもっと早く導入するつもりだったけどな。まあコレも福利厚生だ。」
「福利厚生?」
「まあ、働きやすい環境を整えるってことかな…」
「なるほど…しかし、今の状況でも十分働きやすいですよ?」
「まだまださ、もっと働きやすいように俺も頑張らないと…月詠や誠の為にな?」
「三船様…そんなに私たちのことを…」
「大事な従業員だ。体調不良なんてならないに越したことはないからな。」
「そうですね…」
「さて、作業するか。月詠も手伝ってくれ」
「はい!」
そうして俺達は夕方まで作業をしていると、誠が帰ってきた。それも息を切らして
「おう、誠。どうだった?」
「主様…契約…取れました…」
「おお、良かったな。どれだけ取れた?まあ3件は取れなくても、1件くらいか?」
「いえ…あの…20件ほど…」
「は?」
「契約…20件取ってきました…!」
「なんだと!?に、20件!?」
「はい…」
「なんとまあ…」
「しかも皆様大喜びで…その…商業組合にも入って欲しいと…」
「こ、こりゃ…参ったなあ…」
なんという誤算…しかも組合にまで誘われるとは…
「皆様…天の商品の良さを知っているからこそだ…と仰ってました…」
「信用と信頼…ウチの店は競合相手からも認められたということか…」
「はい…恐らく…」
「こりゃ…下手な商売は出来んな…元からする予定は無いけど…」
「あ、誠さんおかえりなさい。」
「あ…月詠さん…ただいまです…」
「それで、どうでした?誠さん。」
「それが…」
「誠は合格だ。これから本採用とする。」
「本当ですか!やったー!」
「おいおい…本人より喜んでどうするんだよ…」
「本当に…私…本採用ですか…?」
「嘘言ってどうするんだ?しかも、試験も楽々合格。文句の付けようがない。」
「っ…!?私…私…」
ポロポロと涙を溢す誠…
「おいおい…泣くなよ…そんなに嬉しいのか?」
「はい…!はい…!ようやく私の夢が…」
「そんなにウチで働きたかったのか…ったくしょうがねえなあ…今日は飲むぞー。誠の本採用のお祝いだ!」
「え?本当ですか?」
「ああ、奢ってやる。」
「やりましたね!誠さん!」
「はい…!」
涙を拭きニコリと笑う誠…こういうのも良いな…
「よし!じゃあ飲むぞ!」
「どこで飲むんですか?」
「そうだな…誠、どこで飲みたい?お前のお祝いだ。お前が決めろ。」
「でしたら…ここで…ここで飲みたいです…」
「良いですね!ここで飲みましょう!」
「ここか…なら居間で飲むかー。」
そうして居間に移動し…酒をいくつか購入し…
「「乾杯!」」
「ンク…ぷはぁ!美味しー。」
「コクコク…ん…美味しいです…」
「ゴク…そりゃ、最高の酒にお祝いだしなあ…色々重なってめちゃくちゃ美味いだろうよ。よく頑張ったな誠。」
「はい…」
「これで誠さんは本格的に私達の仲間ですね!」
「そうだな…これからも誠の働きに期待するか。って月詠も頑張れよ?誠に抜けされないようにな?」
「大丈夫ですよ!私の壁は厚いので!」
月詠が胸を張ると、たゆんと胸が弾む…
「確かに…月詠さんには勝てないかも…」
誠さーん?今、月詠の胸見ながら言ったよね?誠も十分あるからなー?月詠が大きいだけだぞー?と心の中で言っておこう…
「しかし…誠がこんなに頑張ってくれたなら…改築して良かったかもな。」
「改築…?」
「はい!今日は三船様が各々の部屋に空調と冷蔵庫を設置してくださったんですよ?」
「え…よろしいのですか…?」
「もちろんだ。居心地の良い空間になってるだろうからたっぷり堪能してくれ。」
「はい…!」
そんな誠の笑顔を見ながら酒を飲む。今日はお祝いだし、出し惜しみは無しだ。じゃんじゃん飲まそう。そうして俺達は夜更けまで飲み会をし、翌日仲良く二日酔いになりました。