御使い印の嗜好品
どの世界でも嗜好品は必要ですよね?
今日も城の1日は朝議から始まる。しかし、今日の朝議は少し違う、そう炎蓮さんにタバコの販売許可を貰うための話をするのだ。
「では、本日の朝議はこれで終わりたいと思います」
冥琳が朝議の終了を告げる
「ちょっといいですか。炎蓮さん含め、みなさんにお話しが…」
手を上げてみんなの顔を見る
「なんじゃ三船、話しとは。」
「えーと…知ってる人は居ると思うんだけど、コレ、タバコを売ろうと思うんです。しかし、民たちの好みも分からないし、売れるかどうかも分からない。それで皆さんにまずは試して貰おうと思って…」
「なるほどなぁ…オレたちで試そうってワケか…」
「しかし、タバコは薬じゃぞ?それを安易に売っても良いのか?」
「天では嗜好品だったしお酒と変わらない立ち位置だったよ?それに御使い印の嗜好品なら売れるかなと」
「ふむ…御使い印か…それは人気が出そうだな…」
「まぁ匂いとかの問題はあるけど…民の間で売れるようになれば俺も税として売り上げの何割かは納税するから孫呉の運営の為の資金の足しにはなるかと…」
「ふむ…なるほどのう…御使い印の嗜好品。そして売り上げを税として納める…か、税を上げなくても売り上げで税収は上がるか…どう致します?大殿」
「ふむ…玄助、タバコの他には何か売るのか?」
「えーっと…天の国のお茶と言うか飲み物も売ろうかなと…」
「それはどんな飲み物だ?」
「説明するより、飲んで貰った方が早いですね。すぐ用意します」
チャリン。とコーヒーをいくつか購入し、炎蓮さんたちに振る舞う
「コレはコーヒーと言います。真っ黒で苦味が強いのでこちらの茶とは違います。どうぞ」
「なんだ、コレは真っ黒だな…」
「ねぇ玄助…コレ美味しいの?」
「香りは悪くないが…」
「珍しいけど…香りは悪くないし、問題は味よねー」
うぅむ…コーヒーを認めて貰えばタバコとセットで売れるんだが…どうだろう…
「まぁ飲んでみて?コレは何も入れてないから苦いと思うけど、味の調整は出来るから」
「じゃあ1口…」
「かー!苦ぇ!まだ酒の方がマシだぞ、玄助!」
「うむ…香り高くて良いが、苦味が強い…コレは売れんぞ?」
ダメか…じゃあ次の手だ
「じゃあ次はそれに砂糖と牛乳を入れて甘みとまろやかさを加えましょう。コレならどうです?」
「おお、飲みやすくなったわい。ちょうどいい甘み、苦味、そして乳のまろやかさ全てが調和しておるの。」
「確かにさっきよりは飲みやすくなったわね。でも砂糖使ってるんでしょ?砂糖は高級品よ?それなりの値段はするでしょ?民たちが気軽に飲めるかしら?」
「確かにな、それに茶とも違う。風味も味も何もかもが違う。それを民たちが受け入れるか、だな」
「でも、天の国の飲み物と言えば民たちは納得するのでわ〜?私は案外、好きですよぉ〜?」
「うん…私ももう少し甘ければ飲むかもしれん。」
「おい、玄助、もう1回最初に出したこぉひぃをオレに寄越せ。」
「あ、はい。どうぞ」
「ん。コク…。この苦味…クセになりそうだな…しかも香りが鼻から抜けていく…このこぉひぃとタバコを売るのか?」
「ええ、酒はすぐに定着しそうですが、タバコやコーヒーはすぐには受け付けて貰えないと思ったので早めに出しておきたいなと思いまして。」
「しかし、なんでタバコとコレなんだ?天の国には茶が無いのか?」
「いえいえ、お茶はありますよ?ですが、タバコとコーヒーは相性が良いんです。喫煙者はコーヒーを好む人が多いですね。」
「ふむ…なるほどな…玄助。吸いやすいタバコはあるか?吸いやすくてこぉひぃに合うタバコを用意しろ」
「コーヒーに合う初心者向けのタバコですか…ではこのタバコが良いかと…」
「ほう?ソレがこぉひぃに合うタバコか?」
「天の国では1、2を争う人気のタバコです。喫煙者でなくとも名前は知っているかと…では開けますね…どうぞ、1本」
そう言ってタバコを開け1本、炎蓮さんに差し出す
「そのまま咥えて貰ってそうです。火を付けるので吸ってください」
炎蓮さんの咥えたタバコに火をつける
「すぅー…ふぅ…。これも少し苦味があるな。しかし旨味もある。」
「煙を肺腑に入れ、吐き出してからコーヒーを飲んでみてください。」
「おう。すぅ…ふぅ…。コク…コク…。なんだコリャ、美味ぇじゃねぇか!確かに相性があるな。」
「三船、儂にも試させてくれんか?」
「もちろんだよ。どうぞ」
次は祭さんがノッてきた。案外、酒の強い人たちはタバコ耐性があるのかも知れないな…
「すぅ…はぁ…。む?初めてお主から貰ったタバコとは少し違うのぅ。」
「ああ…アレは初心者向きじゃないからね。お酒と一緒で強さがあるんだよ」
「なるほどのぅ…それでこのタバコは弱めと言うことか。」
「そういうこと。」
「ふぅ…玄助。タバコとこぉひぃの相性は分かった。が、いくらで売る気だ?御使い印の嗜好品にするならそれなりの値段は取れるとオレは思うがな。」
「うーん…そこなんですよねぇ…民たちにも手軽に楽しんで貰いたいので…値段をいくらにするか悩んでるんです」
「ちなみに、天の国ではいくらするんじゃ?」
「えーと1箱20本入りで10銭くらいですかねぇ…」
「ふむ…10銭か…もう少し取っても良かろう。そうじゃな…20銭でも買うじゃろ。」
「ええ…高すぎだと思いますけど…」
「天の国のモノじゃぞ、しかも紙を使い上等な葉を使っておる。ならば20銭程度が適切じゃろ」
タバコ1箱1200円?倍じゃん…。でもそれでも売れると雷火さんは確信しているのか…
「うーん…では…タバコ1箱20銭で、コーヒーはどうしようか…」
「質や量にもよるし、なにより、砂糖を使うってことを考えれば…1杯10銭くらいかしら?」
コーヒーも600円か…確かに砂糖とミルクを使うなら…この世界では高級品だし…妥当か…
「んー…あの炎蓮さんはどう思います?」
「タバコはこれだけか?それともいくつか種類があるのか?」
「種類はたくさんありますね…大陸に出回っているお酒よりも種類はあると思います。」
「おおよそで良い、何種類だ?」
「100は軽く超えますね」
「おいおい、そんなにあるのかよ!タバコの値段は天の国では統一されてるのか?それとも種類によって様々か?」
「種類によって値段は変わってますが…10銭~8銭くらいですかね」
「なら、婆が言った通り、その倍の値段にしろ。まずは城内の兵や文武官を相手に商売をしてみろ。それで売り上げが好調なら市井に出しても良いだろう。」
「なるほど…まずは城内で試験運用してみて上手くいけば市井へ流すと言うことですか。」
「そうだ。試験運用の期間は税は納めなくて良い。その分売れよ?」
「ありがとうございます。では早速準備をします。ですが、城内だと…どこに売り場を設けましょう?」
「でしたら炎蓮様。練兵場の近くが良いかと思います。」
「そうだな。練兵場の近くなら兵たちにも広がるだろうし、ちょうどいいな。よし、玄助、練兵場の近くに出店を出せ。あと、オレに色々なタバコを献上しろ」
「献上は構いませんが…1種類ずつ1箱だけですよ?その後に気に入ったのがあれば炎蓮さんであろうと購入していもらいます。」
「かぁー!もう商人気取りかァ?」
「下の者が購入しているのに、炎蓮さんや重臣の皆さんにはタダと言うわけにはいきません。皆さんが俺から購入し、使用することによって下々の者たちは試そうかな?と思うワケですよ」
「ちっ、確かにソレは否めねェ…分かったよ、ならオレに合うタバコを見繕って献上しろ。合うタバコが見付かれば買ってやる。テメェらも良いな?」
「「御意」」
こうして、タバコとコーヒーの販売許可を貰い、いそいそと販売の準備を進めるのであった
やっぱり炎蓮さんの口調が難しいです…あの苛烈な口調…文字でどうやって表現したものか…と苦労しております…




