迷子 石ころ
石ころが迷子になった。
親を探してあっちこっち、うろうろしてみる。
けれど、親は見つからない。
石ころは心細くて泣きたくなった。
えんえんと、実際に泣いてみた。
でも、まわりの石ころは助けてくれない。
なぜなら、石ころは誰かを助けたりしないからだ。
石ころというものは、じっと、心を閉ざして、一人で生きる生き物だから。
ふつうの石ころは、他の石ころに声をかける事なんてしない。
誰にも手を差し伸べられないから、迷子の石ころは悲しくてたまらなくなった。
悲しくて悲しくて、だから何度も泣いて、親を探しまわった。
しかし、見つからないまま時間が過ぎる。
迷子の石ころは、気が付くと大人になっていた。
子供の石ころではなくなってしまった。
それでも、小さい頃に親と離れ離れになった記憶は、迷子の石ころの心を痛めてやまなかった。
やがて、その迷子だった石ころにも子供ができた。
子供は、小さくてかわいい石ころだった。
とてもとても大切で、愛らしい石ころだった。
けれど、かつて迷子だった石ころは、泣く泣く子供の前から姿を消した。
そうすることが子供のためだと、本能が訴えかけていたからだ。
やがて、その子供も迷子になり、泣いたり、親を探したりするようになった。
でも、親は手を差し伸べてはいけないのだ。
子供はそうやって成長する。
石ころの子供はそうやって育ち、心を固くして、閉ざす方法を身に着ける。
なぜならそれが石ころで、
そうする事で、石ころという生き物は成長していかなければならないのだから。